ロジックツリーは複雑な課題を整理して解決するのに最適なフレームワークです。ロジックツリーを活用することで、想定外の事態に対しても効果的な解決策を講じることが可能となります。
今回は、先行きが見えない現代ビジネスパーソンに必須といえるロジックツリーの作り方や事例を解説していきます。また、ロジックツリーにおすすめのツールについてもご紹介していきますので、参考にしてください。
目次
ロジックツリーとは
ロジックツリーとは、ロジカルシンキングに使えるフレームワークのことです。まずは、ロジックツリーの基本についてみていきましょう。
ロジカルシンキングの手法
ロジックツリーは、問題や課題を分解し、論理的に整理するフレームワークです。一見複雑な課題も、分解することでそれぞれの因果関係が把握しやすくなります。課題に対し、直接的な原因を明確にできるため、思いつくまま手を打つよりも効率的な課題解決が可能です。
課題を細分化していく過程で、それぞれの因果関係がツリー(木)のように枝分かれしていくことから、ロジックツリーと呼ばれています。課題を分析して解決策を立案するほか、思考の整理にも役立つフレームワークです。
フレームワークのひとつ
ロジックツリーは、数多く存在するフレームワークのひとつです。
ほかにも、以下のようなフレームワークが存在します。
● ピラミッドストラクチャー:結論の根拠を整理していく
● SWOT分析:自社の現状をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの観点から分析して戦略立案に役立てる
● MECE(ミーシー):「モレなくダブりなく」アイデアを出していく
● マインドマップ:思考を書き出して整理やアイデア出しに活用される
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ピラミッドストラクチャーとの違い
ロジックツリーと似たフレームワークにピラミッドストラクチャーがあります。いずれも書き出した際に枝分かれした形になるため、混同されがちなフレームワークですが、それぞれ目的が異なります。
ピラミッドストラクチャーの目的は、主張や結論を相手に納得させることです。そのため、伝えたいことを頂点にして、その根拠となる事象が階層的に下に続いていきます。その見た目がピラミッドのようになることから、ピラミッドストラクチャーと呼ばれます。
一方で、ロジックツリーは問題解決や解決策の立案のためのフレームワークであり、左端に課題を書き、左から右に向かって作っていきます。
関連記事:ピラミッドストラクチャーとは?ロジックツリーとの違い、具体例を紹介
ロジックツリーでできること
ロジックツリーの基本を理解したところで、次にロジックツリーで何ができるのかを解説していきます。
論理的思考の促進
ロジックツリーは、論理的な思考を自然に促す手法です。ロジックツリーでは、課題を構成する要素を抽出していくため、左の階層と右の階層の要素はそれぞれ因果関係で結ばれます。
大きな要素から小さな要素へ分解していくため、理論の飛躍を避けながら論理的思考を進めることが可能です。そもそも、論理的思考とは物事をある法則に従って整理する思考を指します。
ロジックツリーを用いることで、課題を体系的に整理することができ、結果的に論理的思考を促すことにつながります。
全体像の把握
ロジックツリーによって事象を構成している要因や問題などの要素として細分化していくことで、全体像を把握しやすくなります。また、不足した要素を見つける手助けとしても効果的です。
頭で考えるだけでは思いつかない要素も、全体を俯瞰することで補うことができるでしょう。また、それぞれの関係が明確になることで、最も関連性の高い原因に特化した解決策を導くことが可能です。
一見複雑な問題も、細分化してみると、その1つひとつは小さな問題ということはよくあります。ロジックツリーを活用することで、なぜその課題が発生しているのか理解しやすくなるのがメリットです。
原因の特定
問題は、さまざまな原因が複雑に絡み合って発生します。すでに表面化している原因もあれば、そうでないものもあるでしょう。ロジックツリーを活用して問題を細分化することで、問題を構成している原因を整理することが可能です。
万が一、ほかの要因によって問題が発生していると判明したときには、行動計画を修正することもできます。闇雲に行動すると、さまざまな原因に手を付けてしまい、結果的に何をしているのか分かりにくくなりますが、整理してから課題に取り組むことで、より効率的に行動することができるでしょう。
課題解決や意思決定の支援
ロジックツリーを用いて課題の全体像を俯瞰することで、課題の本質が把握できます。課題の本質が見つかれば、課題解決は一気にしやすくなるでしょう。また、課題が原因や要素に分解されるため、それぞれの関係性を明らかにすることも可能です。
一つひとつの要素に取り組んだ際に、ほかの要素へどのような影響を与えているかも理解できるため、具体的な行動の意思決定にも大変役立ちます。具体的な行動は評価もしやすく、決断が誤っていた際にもスムーズに代替案の実行が可能となるでしょう。
優先順位の選定
ロジックツリーで問題の原因を洗い出すことで、最も影響の大きい原因にアプローチできます。また、影響度の大きい順に優先順位をつけて行動することで、評価もしやすくなるでしょう。
課題が解決できたのち、またほかの原因が見えてくる可能性もあります。ロジックツリーをその都度更新していくことで、課題をより解決に近づけることが可能です。なお、優先順位をつける際は、影響度に限らず、緊急度も同時に検討することをおすすめします。
認識の共有
チームで動くことも多いビジネスシーンでは、誰が見ても理解しやすい特徴を持つロジックツリーは大変有効です。
チームで課題に取り組む場合、それぞれが異なる視点で話し合いを進めると、まとまらない恐れがあります。ロジックツリーをもとに話し合いを進めることで、チーム間の認識を統一させ、チームの力を最大限発揮することが可能です。
また、ロジックツリーを活用することで、どのような思考を経て解決策を導いたのかが明確になり、行動計画を立てやすくなります。
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ロジックツリーの種類
ロジックツリーには、目的に応じて4つの種類があります。
● 要素分解ツリー(What)
● 原因追求ツリー(Why)
● 問題解決ツリー(How)
● KPIツリー
ここからは、それぞれのロジックツリーについて詳しく解説していきます。
要素分解ツリー(What)
1つ目の要素分解ツリー(What)は、問題を構成する要素は何かを探るためのロジックツリーです。「何が?(What)」と問いかけていくことで問題を細分化することから、Whatツリーとも呼ばれます。
要素分解ツリーは、家系図をイメージすると理解しやすいかもしれません。「家族」を構成するのは、まず性別で分け、祖父母や父母、兄弟姉妹のように細かく分解することが可能です。このように、ある1つの概念や物事が、どんな要素から構成されているのかを把握するのに役立ちます。
原因追求ツリー(Why)
2つ目は、原因追求ツリーです。問題を「なぜ?」という視点によって分解するためWhyツリーとも呼びます。問題の原因を列挙していき、根本的な原因を突き止めるのに使います。
例えば、体重が減らない原因を特定していく場合などです。具体的には、「偏った食事」「運動不足」「食事の時間」のように、体重が減らないのは「なぜか?」を特定していくことです。
要素分解ツリー(What)と似ていますが、原因追求ツリー(Why)では結果と原因に関係する内容をピックアップしていきます。
問題解決ツリー(How)
3つ目は、課題解決ツリー(How)です。解題解決ツリーは課題の解決策を列挙していくロジックツリーを指します。
原因追求ツリー(Why)で突き止めた原因をどのように解決していくかを考える際に役立つ手法です。問題解決ツリーでは、今後のアクションをどれだけ具体的に落とし込めるかがポイントとなります。
例えば、売上が上がらない原因として、「広告がターゲットに届かない」ことが原因であると特定したとします。その場合、広告をターゲットに届けるためには「媒体を変える」「広告の構成を見直す」などが具体的なアクションとして挙げられます。
KPIツリー
4つ目に解説するロジックツリーはKPIツリーです。KPIとはKey Performance Indicator略で、日本語で重要業績評価指標を意味します。似た言葉として、経営目標達成指標であるKGI(Key Global Indicator)があります。
両者の関係を一言で表すと、KGIを達成するための中間目標がKPIといえます。KPIツリーは、前述した問題解決ツリーで挙げた具体的なアクションを数値化し、進捗管理しやすくするものです。
さきほどの広告の例でいえば「広告を週に2回打つ」や「広告からの流入数を10%改善する」などが考えられます。
関連記事:KPIツリーの具体的なつくり方をKGIの設定含めて解説!
ロジックツリーの活用シーン
ここからは、実際にロジックツリーを活用できるシーンについてご紹介していきます。
課題分析
ビジネスには想定外の問題がつきものです。いくつもの問題が表面化するなか、それぞれを一から分析していくのはなかなか骨の折れる作業といえます。
そんなときにロジックツリーを活用することで、効率的な課題分析が可能となります。課題の因果関係を筋道立てて理解する能力は、ビジネスでは必須のスキルあり、課題解決への最短距離を見つける方法ともいえるでしょう。
戦略立案
ロジックツリーを活用すれば、一見難しい戦略立案も作成可能になります。戦略立案に必要なのは目的・目標の設定と現状の把握、目標達成の具体的なアクションの取り決めです。
ロジックツリーを使えば、これらの戦略立案に必要な要素を決定していくことができます。また、さまざまな要素を明らかにすることで、複数のシナリオを描くことができ、リスクにあらかじめ備えられるでしょう。
関連記事:第2回 経営戦略とマーケティング戦略って何が違うの?〜良い戦略の要諦とは〜 花王・廣澤連載
業務改善
ロジックツリーは、業務のムダを特定する際にも役立ちます。改善したい業務を分解していくことで全体像が把握しやすくなります。
とくに、複数人で1つの業務をこなす場合、担当していない仕事については知らないことも出てくるでしょう。業務の全体像を把握できていないと、業務のムダを省いた際にほかの仕事に出てくる影響が理解できません。
「自分はムダと思っていた業務が、本当は必要なものだった」といった事態を避けるためにも、ロジックツリーは使い勝手がいいツールであり、業務改善に役立ちます。
関連記事:プロセスとは?ビジネスシーン、IT分野などでの意味を簡単に
プロジェクト管理
プロジェクト管理では、プロジェクト完了までに必要な工程をすべて洗い出し、確実に実行していくことが求められます。ロジックツリーを用いることで、すべての工程を把握することが可能です。
また、重要度や緊急性の高い工程、またそうでないものなどがあり、工程同士の関連性にも気を配りながらプロジェクトを進める必要があります。
それぞれの工程に優先順位をつけ、行動計画に落とし込みやすくするためにも、ロジックツリーは役立ちます。
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ロジックツリーマーケ事例
ここからは、ロジックツリーを実際のマーケティングにおいて活用した事例について詳しく解説していきます。
新規顧客獲得数の伸び悩み(原因追及ツリー)
まずは、新規顧客獲得数の伸び悩みについて、ロジックツリーを用いてその原因を追求してみましょう。原因を追求する際には、原因追求ツリー(Whyツリー)を利用します。
新規顧客数の伸び悩みについてロジックツリーを展開すると、以下のようになります。
「なぜ?」と問うことで、自然と原因が見えてきます。原因を把握したら、最もインパクトの大きな原因について取り組んでいきましょう。
また、似たフレームワークである「なぜなぜ分析」は、ひとつの原因に対して、ひとつの本質的な要因を特定することです。そのため、ロジックツリーのように分岐して全体像を把握するものとは異なります。「なぜなぜ分析」については、以下の記事でご紹介しています。
売上拡大(問題解決ツリー)
次に、売上を拡大させたい場合のロジックツリーについて考えていきましょう。
この場合には、売上が増えないという問題を解決するために、問題解決ツリー(Howツリー)を活用しますが、その前に、売上とは何で構成されているのかを把握する必要があります。それには、要素分解ツリー(Whatツリー)を利用するのが最適です。
売上を要素に分解していくと以下のようになります。
売上の構成要素が明確になったところで、実際に解決したい課題である「売上の拡大」について考えていきましょう。
「売上の拡大」でロジックツリーを作ると以下のようになります。
事前に売上とは何か?を決めておくことで、突拍子もなく効果も期待できないアイデアを除外し、的を射た施策の立案につながるでしょう。
ロジックツリー作成のポイント
ロジックツリーは思いつくまま作るものではありません。ここからは、質の良いロジックツリーを作るためのポイントについて解説していきます。
テーマを決め、どの種類で作成するかを見極める
ロジックツリーを作成して課題を解決するためには、課題解決のテーマを決め、テーマにあった種類のロジックツリーを選ぶことがポイントです。
テーマが抽象的だと、数少ない効果的な解決策が、どうでもいい多くのアイデアに押しつぶされる恐れがあります。
例えば、売上拡大という課題を、商圏における認知獲得やリピーターの創出と定義づけることで、関係のない行動を除外することが可能です。
また、課題を整理したいのか、具体的なアクションに落とし込みたいのかなど、目的に応じたロジックツリーを活用することで、期待した効果を得られるでしょう。
要素をMECEの原則に基づいて分解する
ロジックツリーを作成するときには、要素を「モレなくダブりなく」列挙することが大切です。このことをMECE(ミーシー)と呼び、お互いに重複せず、漏れがない状態のロジックツリーが理想となります。
例えば、「ターゲット顧客」を分類する場合、社会人、男性、女性などに分けた場合には、社会人にも男性や女性が含まれるため、重複と考えられます。
また、MECE(ミーシー)を用いて、同じ階層は同じ粒度の要素や具体性でまとめることで、比較しやすくなり、思考も整理されます。
関連記事:MECE(ミーシー)とは?ビジネスで使えるロジカルシンキングの基本を解説
分解できるまで続ける
ロジックツリーでは、最終的に分解できなくなるまで細かく要素ごとに分けていきましょう。ロジックツリーでは、分解する粒度や具体性の度合いに正解はありませんが、最終的には具体的な行動に到達します。
売上の拡大であれば、「ブランドの認知拡大」では終わらせず、そこからさらに、「広告を打つ」「チラシを配る」「キャンペーンを開催する」などに分類可能です。最後まで分解してはじめて、具体的な行動計画の立案が可能となります。
ロジックツリーが作成できるツール例
ここからは、ロジックツリーを作成できるツールについて解説していきます。
SmartArt
まず1つ目は、エクセルやパワーポイントの機能を利用した作成方法です。エクセルやパワーポイントといったマイクロソフトのサービスは多くの企業がすでに導入しており、別途ダウンロードが必要なく誰でも使えるため、最もおすすめといえます。
エクセルとパワーポイントには、「SmartArt」という機能があり、ボタンひとつでロジックツリーを作成できますが、アイデア出しの段階では、どのくらいの規模になるか分からないため、範囲の制限なく使えるエクセルがおすすめです。パワーポイントは、発表用の資料として使うといいでしょう。
Lucidchart
Lucidchartはパソコンだけでなくスマホからでもアクセスできるフレームワークのためのアプリです。ロジックツリーをはじめ、組織図、経営分析、SWOT分析などの多種多様なテンプレートを無料で使うことができます。
エクセルやパワーポイント、Googleなどと連携することもできるため、アプリを持っていない他部署や社外との共有もしやすい点もポイントといえるでしょう。また直感的に使えるため、フレームワークに慣れていない方も使いやすいツールです。
Boardmix
Boardmixとは、オンライン上のホワイトボードをチームで使える無料ではじめられるサービスです。オンライン会議で使えて共同編集ができるため、全員が同じ場所に集まる必要がありません。
また、ロジックツリーのほかにも、マインドマップやSWOT分析など、マーケティングに必要なさまざまなテンプレートが用意されています。操作性も高く、直感的に使えるのも魅力といえるでしょう。
XMind
XMindは、マインドマップをはじめ、フロー図や魚骨図、ロジックツリーを作成できるツールのひとつです。ウェブリンクや添付ファイル、音声録音などの充実した機能が魅力です。
また、生成AIによって、入力した情報をもとに自動でプレゼンテーションの作成も可能。チームで共同編集もできるため、使い勝手の良さも抜群です。
まとめ
今回は、ロジックツリーについて解説してきました。不確実性の高い現代のビジネスでは、いかに課題を特定して適切に対処できるかという、論理的思考が求められます。
ロジックツリーを活用することで、より効率的な課題解決が可能となるでしょう。そのためには、今回ご紹介した4種類のロジックツリーの特徴を理解して、使い分けるのがポイントです。
また、ロジックツリーの作成は同僚や先輩、上司のアイデアを借りながら作ることで、「モレなくダブりなく」要素を分類しやすくなります。
さらに、ロジックツリーを作ることで考える癖が身につき、論理的思考が養われることも期待できます。ぜひ、ロジックツリーを自身のビジネスに役立ててください。