タイアップ広告とは、企業が他社・メディア・著名人などと提携し、相互に利益を生み出すことを目的とした共同プロモーション施策を指します。これは広告・広報・マーケティングに関わるすべてのビジネスパーソンにとって、成果を最大化するうえで必要な知識です。
しかし、多くの人が「タイアップ=コラボ」と混同するなど、明確なメリット・デメリットを理解しきれていないのではないでしょうか。
本記事では、目次としてタイアップ広告の意味や種類を紹介とともに、成功事例、そして実行前に知っておきたいポイントを体系的に解説します。
目次
タイアップとは? 意味と語源をわかりやすく解説
まずはタイアップの意味と語源を整理しましょう。
タイアップの基本的な意味と語源
英語 “tie up” は、「結びつける」「連携する」といった意味を持ちます。この語源からもわかるように、タイアップとは一方的なアプローチではありません。複数の企業や個人が対等な関係で結びつき、互いの強みを活かして、共通のゴールを達成するための戦略的な宣伝手法です。
▼タイアップ・共同プロモーション時のリスク回避として押さえておきたい「ステマ」についてはこちらの記事をご覧ください。
ステマ(ステルスマーケティング)とは?意味や規制、事例を簡単に
ビジネスにおける「タイアップ」の定義
現代のビジネスでは、広告や商品開発などさまざまな文脈でタイアップという言葉が使われます。その根底には、「協力によって単独では得られない成果を目指す」という基本思想があるのです。
重要なのは、その関係が対等であり、双方向的であること。一方が情報を提供し、もう一方が露出の場を与えるといった一方向の広告ではなく、双方が主体的に企画・制作・発信に関わる点が特徴です。
タイアップの種類と分類
ここからは、主要なタイアップの種類を解説します。
タイアップ広告(メディア連携型)
タイアップ広告とは、Webメディアやテレビ、雑誌といった媒体と企業が連携して行う広告です。
最近では、広告主がメディアに制作を依頼し、商品やサービスを通常の取材記事のような形式で紹介してもらう「記事型タイアップ広告」が注目を集めています。この形式が注目される理由は、広告色を抑えた違和感のない訴求が可能な点にあります。
通常記事と同じフォーマットで情報が提供されるため、バナー広告やLPと比べて心理的な抵抗が少なく、自然に読み進めてもらいやすいのが特徴です。
▼タイアップ広告のメリットや具体的な進め方については以下の記事で深掘り解説を行っています。
タイアップ広告のメリットと進め方
商品開発・販売におけるタイアップ
企業が他社や異業種と連携して新たな商品を生む事例は多く、消費者にも「コラボ商品」として広く認知されています。
たとえば、人気アニメと製菓メーカーによる限定パッケージのお菓子やスポーツチームとアパレルブランドの応援グッズなどが典型例です。
この形式の強みは、限定性と話題性にあります。「今しか買えない」「貴重なコラボ」といった訴求が購買動機となり、SNSでの拡散やメディア露出などの二次効果も見込めます。
イベント・キャンペーン型タイアップ
複数の企業が共同で展示会やセミナー、販促キャンペーンを実施し、それぞれのブランド資産や集客力を活かして相乗効果を狙う取り組みです。
メリットは、共催によるコスト効率と参加者との直接的な接点です。単独開催では高コスト・高負荷となるイベントも、複数社で分担すれば運営の負担が軽減され、顧客リストの共有による相互集客も期待できます。
来場者にとっても、1回の参加で複数企業のサービスに触れられるメリットがあり、参加意欲を高める要因となります。
▼複数の企業・団体がイベントやプロジェクトなどの趣旨に賛同したうえで資金や物品を提供する「協賛」についてはこちらの記事で解説しています。
協賛とは?類義語との違いやイベントでのメリットなどわかりやすく
SNSや動画配信プラットフォームでのタイアップ
Instagram、TikTok、YouTubeなどでインフルエンサーが商品・サービスを紹介する形式は、BtoC(企業が一般の消費者を対象にサービスや商品を提供するビジネス)領域を中心に定着し、多くの成功事例を生んでいます。
フォロワーとの関係性を築いているインフルエンサーによる紹介は、広告ではなく体験として受け入れられやすく、視聴者の関心を自然に引き出します。
SNS型タイアップは即時性と話題性に優れる反面、設計精度と信頼性が求められる分野です。
▼インフルエンサーマーケティングについてはこちらの記事で解説しています。
インフルエンサーとは? 定義・SNS別特徴・マーケ施策を徹底解説【2025完全ガイド】
タイアップとコラボレーションの違いとは?
ここでは、タイアップとコラボレーションの違いを掘り下げます。
コラボレーションとのニュアンスの違い
コラボレーションは「共同で何かを生み出す」こと、タイアップは「組んで販促効果を高める」ことが主眼です。この違いは役割分担にも表れます。コラボでは両者が対等に開発や制作に関与し、プロダクトに共同の意志が反映されます。一方、タイアップでは一方が主導し、もう一方が訴求を支援するケースが多く見られます。
たとえば、デザイナーと商品を共同開発するのはコラボ、Webメディアと連携して販促を行うのはタイアップです。
使用される文脈・業界ごとの違い
BtoC領域では、消費者向けの共同商品や限定グッズを展開する場面が多く、共創のイメージを伝えるために、「コラボ商品」「コラボ企画」といった言葉が使われます。
一方、BtoBや広告・広報の領域では「タイアップ」の方が一般的に適切とされます。その理由は、「協力して伝える」「販促を目的とする」という性質が強調されるためです。
どちらを使うべきか? 判断ポイント
判断の基準となるのが、主目的です。共同開発や企画制作など、成果物の共創が目的であればコラボレーションが適切です。双方が対等に関与し、ゼロから価値を創り出すプロセスが重視されます。
一方、既存商品やサービスの認知拡大・販促を目的とする場合はタイアップが適しています。
タイアップ広告のメリット・デメリット
ここでは、タイアップ広告のメリットとデメリットを見ていきます。
タイアップ広告のメリット
タイアップ広告の最大の特長は、広告色の薄さにあります。ユーザーの広告に対する警戒感が強まるなか、自然な文脈で第三者の視点から紹介できることは大きな強みです。情報に客観性と信頼性が加わり、コンテンツとして受け入れられやすくなります。
加えて、以下のようなメリットもあります。
● ユーザーの態度変容を促しやすい
● SEO効果と中長期的な集客
● コンテンツの二次活用ができる
● 信頼性の向上
このように、タイアップ広告は売り込まないことで伝わる施策として、今後ますます重要性を増していくと考えられます。
▼「嫌われる広告」に関連する記事
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・広告ブロックの方法を解説!PCやスマホのおすすめアプリもご紹介
注意すべきデメリットとその対処法
タイアップにはコストがかかるというデメリットがあります。コンテンツ制作に工数がかかるため、通常のデジタル広告よりも費用が高額になる傾向です。たとえば記事1本でも数十万から数百万円、動画制作やインフルエンサーの起用となるとさらに費用は増加します。
そのため、タイアップで制作したコンテンツは、営業資料やランディングページ(LP)などに再活用できる資産として設計することが重要です。
次に、効果測定が難しいという点もデメリットとして挙げられます。クリック数やCV(コンバージョン)数だけでは効果を正確に把握できないため、「記事の読了率」「SNSでのシェア数」「ブランドに対する好意度」など、多面的な重要業績評価指数(KPI)を設定する必要があります。
さらに、タイアップの連携パートナーとの間に認識のずれが生じる可能性にも注意が必要です。目的や訴求内容に対する理解が不十分な場合、単にコンテンツが納品されるだけで終わってしまうことがあります。
KPI、ターゲットとする顧客層、表現方法、行動喚起(CTA)の設計に至るまで、事前に丁寧に打ち合わせを行い、パートナーの過去の実績や制作体制も確認するようにしましょう。
BtoC・BtoBのタイアップ成功事例
ここでは、BtoCとBtoBの両方の視点から、それぞれの領域で高い効果を上げた事例を紹介します。
BtoCにおける代表的な成功パターン
BtoC領域において、タイアップ広告は話題性や拡散力を活かした認知拡大施策として高い効果を発揮します。
たとえば、ある製菓メーカーが人気アニメとタイアップして展開した期間限定パッケージ商品では、キャラクターファンの支持を集め、SNSで大きな反響を呼び、発売初日から品切れが相次ぐほどの人気となりました。
注目すべきは、「好きなもの同士がつながる」という感情体験が、ブランドに情緒的価値を加えた点です。
このような成功事例に共通しているのは、「共感」「共創」「拡散」の3要素がバランスよく設計されていることです。
BtoB領域での効果的なタイアップ事例
信頼性が購買要因となるBtoB領域においては、自社との関連性が高く、業界内で権威を持つメディアとタイアップし、リード獲得や商談創出を目指す企業が多いです。
よく見られるのは、業界専門メディアと連携してインタビュー形式で導入事例を紹介するタイアップです。
顧客の課題から成功までの過程をストーリー仕立てで描くことで、読者にとっては自分ごととして捉えやすく、企業側としては強みを効果的に訴求できます。
タイアップ企画資料:人事担当者に対するブランディング/リード獲得におすすめ!「タイアップ企画・コンテンツ制作」
タイアップを成功に導く4つのポイント
ここでは、タイアップを成功に導く4つのポイントを解説します。
タイアップの目的とKPIを明確にする
タイアップ成功のために、まずは目的を明確にしましょう。よくある失敗は「話題をつくりたい」「認知度を上げたい」といった漠然とした理由だけで開始し、具体的な成果が見えないまま進行してしまうケースです。
タイアップの主な目的は次の4つに分類できます。
● 認知拡大
● 顧客獲得
● イメージ向上
● 信頼の獲得
これらの目的に対して、それぞれKPIを設定します。
たとえば、認知拡大なら「記事閲覧数」「SNSシェア数」、リード獲得なら「問い合わせ数」「資料DL数」などが該当します。
パートナー選定で見るべき視点
タイアップ施策でよくある誤解が、「有名な相手と組めば成功する」という発想です。重要なのは、文脈の一致とターゲットとの接点です。
たとえば、BtoB向けの人事システムであれば、芸能人よりも企業人事のCHROや人事領域の研究者など、人事業界の著名人や専門家との連携の方が成果につながりやすくなります。
重要なのは、ターゲットの情報収集チャネルを起点に設計することです。
関連ページ:人事領域のマーケティングに関するソリューション
コンテンツとクリエイティブの一貫性
タイアップ広告の本質は、信頼ある第三者の文脈に自然に自社情報をなじませることです。そのため、メディアや起用者のトーン&マナー(トンマナ)に合った表現設計が欠かせません。
特に重要なのが、コンテンツとクリエイティブの一貫性です。
【意識すべき3つのポイント】
● コピーのトーンを媒体に合わせる
● ビジュアル表現の統一感を保つ
● 導線設計とCTAに自然な流れをつくる
また、自社メディア向けではなく、相手メディアの文脈に乗る前提でトーンを調整することが大切です。
効果測定と振り返り方法
タイアップ広告は「出稿して終わり」ではなく、掲載から一定の時間がたったあとの分析が欠かせません。
【定量データ例】
● PV、読了率、CTAクリック数、CV数
● 資料DL数、問い合わせ件数
● SNSでのシェアやコメント数
【定性データの例】
● 記事内アンケートで共感度を把握
● SNS投稿やコメント欄から反応傾向を確認
● 営業現場での顧客の声をヒアリング
これらの結果を次回の施策に活かせば、タイトルやCTAの改善、パートナー選定の精度向上につながり、再現性のある成果が見込めます。
成果につながるタイアップ先の選定ポイント
ここでは、タイアップ先の選定ポイントをご紹介します。
ブランドや価値観の親和性を重視する
タイアップ先を選ぶ際に最も重要なのは、世界観と価値観の一致です。判断基準は、「そのパートナーと組んだとき、自社がどう見えるか?」を考慮します。価値観の一致は、ユーザー層の重なり以上に重要です。
ターゲットの重なりをデータで確認する
タイアップの成否を分けるのは、パートナーの知名度よりターゲットとの一致度です。自社のターゲット像とパートナーのユーザー属性をデータで照合しましょう。
媒体資料やヒアリングで実態を把握し、読者の声やSNSの文脈から価値観の相性も読み取ることが重要です。
過去のタイアップ事例と実績をチェックする
タイアップ先を選ぶ際は、過去に成果を出した実績があるかどうかも確認しましょう。
以下がチェックポイントです。
● 自社に近い業界での実績
● 成果データの開示有無(PV・CVなど)
● 導線設計や改善提案の有無
● 施策後の振り返り・レポート体制
コンテンツ設計や拡張性の柔軟さ
現代のマーケティングでは、コンテンツを複数チャネルに展開し、継続的な成果を生む設計力が重要です。
たとえば、以下のような活用をしてみましょう。
● タイアップ記事をPDF化し営業資料に活用
● MA施策やLPへの再利用でリード獲得に活用
コンテンツの再利用には、以下のような柔軟なパートナー選びが欠かせません。
● 著作権・素材提供・二次利用に理解があるか
● コンテンツを点で終わらせず、他施策へ展開できる設計力があるか
点ではなく「線」や「面」で成果を設計することが、タイアップの価値を最大化するカギです。
▼ProFutureのHRプロは日本最大級の人事ポータル。人事や経営のキーパーソンに訴求するタイアップの制作が可能です。
https://www.profuture.co.jp/mk/solution/248
タイアップが活用できる業界・シーン
ここでは、タイアップが特に有効な業界とシーンを見ていきます。
タイアップが盛んな代表的業界
タイアップは感性訴求・共感性・ビジュアル映えが求められるBtoC領域で特に効果的です。SNS拡散やPR効果との相乗効果も期待でき、直感的な訴求に適しています。
【とくに活用が定着している業界】
● 食品・飲料:アニメや地域とのタイアップ・監修、パッケージ連動、コンビニ販促が主流
● 化粧品・コスメ:インフルエンサーによる体験共有型プロモーション
● アパレル:著名人やIP(知的財産を活用した収益ビジネス)との限定コラボで話題性とブランド強化
● エンタメ・出版・ゲーム:IPやアーティストと世界観を共有しファン拡大
これらの分野では、タイアップはブランディングと販促を両立する戦略的施策として一般化しており、「やらない理由がない」ほど常識化しています。
BtoBでも有効なシーンと展開例
BtoBにおけるタイアップは、専門性と信頼性を活かした設計により、リード獲得・商談創出・ブランディングに有効です。
【代表的な活用例】
● SaaS企業×業界メディア:導入事例記事を共同制作し、見込み層に訴求。営業資料としても活用
● HRメディアとの連携:採用・働き方改革などをテーマに経営層にアプローチ
● イベント・セミナー協業:共催により信頼構築、参加者データを後続施策に活用
BtoBは広告色に敏感な領域のため、中立性と共感性のあるコンテンツ設計が鍵となります。
さらに、検討期間が長いため、「記事 → ホワイトペーパー → セミナー → 営業資料」と、多段階で活用できる設計がROI最大化につながります。
▼タイアップが活用できる分野のひとつであり、自社が求める人材へリーチする「採用広報」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
採用広報とは?取り組む目的、ポイントを解説
SDGs・CSR文脈でのタイアップ事例
近年、社会的意義や持続可能性など、SDGs・CSR文脈のタイアップ施策が注目を集めています。
【主な活用例】
● 自治体との地域活性タイアップ:地場産業・観光資源を活用し、地域貢献を発信
● NPOとの協業:教育・ジェンダー・環境など社会課題を軸にしたセミナーや情報発信
● ESG広報タイアップ:専門メディアでサステナ対応を紹介し、投資家・求職者の信頼を醸成
これらの施策では、拡散力よりも「専門性」や「理念の共鳴」がパートナー選定の重要ポイントになります。
自社に最適なタイアップ先を見つけて効果を高めよう
タイアップ広告は、単なる話題づくりではなく、信頼・共感・行動を生む戦略的マーケティング手法です。
重要なのは、「誰と」「何の目的で」「どう設計するか」に尽きます。自社発信だけでなく、信頼ある第三者の文脈で自然に届けることが、顧客の心を動かす鍵となるのです。
日本最大級の人事ポータルである「HRプロ」では、企業の採用広報や人事関連のマーケティングを支援するタイアップ施策を展開しています。
経営層や人事キーパーソンへのリーチを狙いたい企業にとっては、ぜひご検討ください。
タイアップ企画資料:人事担当者に対するブランディング/リード獲得におすすめ!「タイアップ企画・コンテンツ制作」
▼ProFutureの人事向けポータルサイト「HRプロ」はこちらから詳細を確認いただけます。
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