ブログやECサイトなどのWebサイトを運営する上で、訪問したユーザーのニーズを把握することは、重要な戦略につながります。顧客目線に立ち、必要とされている情報をWebサイト上で提供することでより多くのユーザーが訪れたり、購入者が増えたりと、企業の売り上げに大きく影響をもたらします。現在、インターネット技術の発達によりWebサイトを運営する企業は、実際にサイトを訪れたユーザーがサイト内のどの部分に注目して読んでいるのか、日頃から利用している他社のサイトはどこなのかなど、利用履歴を追跡することができるようになりました。この追跡のことをトラッキングといいます。ここでは、トラッキングについて詳しく説明していきます。
目次
トラッキングとは
トラッキングと聞くと、何をイメージされますか?トラッキングについてマーケティング用語集で検索をすると、以下のように出てきます。
トラッキングとは、特定のユーザーが、サイト内でどこを閲覧しているのかを追跡、分析することである。どこから来た人が(インターネット広告や検索エンジン)、どのようなページを見て(製品紹介・事例)、コンバージョン(資料請求・商品購入)に結びつくのかを追跡する。またコンバーションしなかった場合も、サイト内のどこに問題があったのか分析する事ができる。どの広告から来た人がコンバージョンに結びつきやすく、コンバージョンに至らない人はどのページで離脱しているのかを調べる事は、新聞広告やチラシ・テレビCMなどの従来の広告では、知る事の出来なかった消費者行動データであるため重要である。施策ごとのデータを分析する事で、施策ごとの費用対効果を明らかにし、施策の最適化を進める事ができる。
つまりトラッキングとは、ある特定のサイトを訪問したユーザーの行動を収集・分析することを指します。ブログやECサイトなどWebサイトを運営する上で、訪問したユーザーのニーズを把握することは、とても大切なことです。どんなWebサイトに訪問しているのかなどユーザーの趣味趣向を分析することで、マーケティングに活用でき、より多くのユーザーに訪問をしてもらえるよう戦略を練ることができます。
トラッキングの目的
トラッキングの目的は、打ち出している広告が効果的かどうかを測るためになります。トラッキングを行うことで、実際にWebサイトに訪れたユーザーが商品やサービスを購入したかなど、Webサイトを運営する上で目標としていたユーザーの行動がどれくらい行われたかを知ることができます。どの広告でどのくらいの費用をかけて達成したかなど、費用対効果を確認することができ、より効果的な広告運用が可能となります。
トラッキングのやり方
トラッキングを実施するツールは様々あります。個人情報保護の観点から規制の動きはありますが、特に多く利用されているのは「Cookie」です。
Cookieは、特定のウェブサイトを訪問した履歴やログインの情報などの入力内容を記録するシステムで、このシステムを使うことで、同一サイトを複数回訪問した際に同じユーザーであると識別も可能となっています。
Cookieの技術により情報が保持されていることで、ユーザーはスムーズにインターネットを利用することができます。例えばユーザーは、ログインが必要なWebサイトを利用する際に、一度IDとパスワードを入力すると、Cookieの技術によりログイン情報が保持されるので、時間をあけてそのウェブサイトにアクセスをしても、ログイン情報を再度入力することなく利用することができます。またECサイトでも、一度買い物かごに入れた商品がCookieを利用することにより保存されます。買い物の途中でそのサイトから離脱したとしても、再度そのサイトに戻った際に、一度買い物かごに入れた商品がそのまま残っていることも、Cookieのシステムのおかげで情報が保持されているからです。ユーザーにとっても、Webサイトを運営する企業側にとってもCookieは利便性の高いシステムになります。
ご説明した「Cookie」には2つの種類があります。
1st party Cookie(ファーストパーティCookie)
Webサイトを運営する企業側が取得できる情報として、そのウェブサイトに訪問した人が、今まで訪問したことはあるのか、訪問履歴があるとすればどのページの箇所に滞在していたかなどの確認・管理ができます。
3rd party Cookie(サードパーティCookie)
Webサイトを運営する企業側が取得できる情報として、ページに訪問したユーザーが1回の訪問で何ページ閲覧したのか、過去に何回訪れているかや、複数のウェブサイトを通じて、特定のユーザーに広告を表示させた回数、表示させる広告の順番を指定できるなど、広告の出稿管理とコントロールも可能となっています。
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スマートフォンにおけるトラッキングのやり方
スマートフォンでは、アプリをインストールした際に端末上に情報へのアクセス権限が付与される形など、アプリやブラウザでもトラッキングが行われています。スマートフォン上で行われている代表的なトラッキングの仕組みは「広告識別子」と「Sensor ID」の2つがあります。
広告識別子
広告識別子とは、広告配信のためにスマートフォン端末を識別するためのIDになり、広告IDとも呼ばれています。このIDにはiPhoneなどで利用されている「IDFA」と、Android端末で利用されている「AAID(またはADID)」の2種類があります。Cookieとの違いはトラッキングを行う単位にあり、Cookieはブラウザ単位ですが広告識別子は端末単位になります。端末単位でトラッキングできることにより、より細かいセグメントを施した広告分析・配信などが可能になっています。しかし、Cookie規制と同様に「IDFA」と「AAID」の利用についても制限が厳しくなっています。
Sensor ID
Sensor IDは、スマートフォンには「加速度センサー」や「ジャイロセンサー」などのセンサーが搭載されており、このセンサーのデータを細かく分析することによって行うトラッキングのことを指します。Sensor IDはいくつかあるトラッキングの仕組みの中でも最新のもので、ケンブリッジ大学により発表されました。この技術の活用によって消費者行動データのより細かな分析を可能にし、インターネットの利便性の向上に寄与しています。
トラッキングの計測方法
トラッキングの計測方法は「ダイレクト計測」と「リダイレクト計測」の2種類があります。それぞれ説明していきます。
ダイレクト計測
ダイレクト計測は、ページ内に計測タグを設置し、これが読み込まれたら、カウントする方法です。もし、トラッキング用のサーバーに不具合が起きたとしても、問題なくカウントを続けられることがメリットとなります。また、トラッキング用サーバーの契約費用もかかりません。しかし、計測タグが読み込まれてからカウントするまでに、一定のタイムラグが発生することや、カウントしたいすべてのページに計測タグを設置するため、手間もかかります。費用を抑えたい時には、ダイレクト計測がオススメです。
リダイレクト計測
リダイレクト計測は、トラッキング用のサーバーを経由しカウントする方法です。計測タグが読み込まれてから計測するまでのラグが少ないことがメリットで、ダイレクト計測より正確にカウントが可能となります。ページ内に計測タグを設置する必要がないため、管理も楽になります。しかし、トラッキング用のサーバーに不具合が生じた場合は計測も困難になることと、トラッキングサーバーで管理するため、各サービスの利用料金が必要となります。リダイレクト計測は、計測の精度を高めたいときに利用することがオススメです。
トラッキングの許可・拒否について
アプリやWebサイトのトラッキングを許可すると、以前閲覧したサイトや検索ワードに関する広告が出てくるようになります。また位置情報などからも、よりユーザーが求めている可能性が高い広告が表示されることが多くなります。
トラッキングを拒否すると、過去に閲覧したサイトの利用履歴の情報がアプリやWebサイト側に渡らなくなります。個人情報漏えいのリスクを低下させることはできますが、ユーザーにとって全く興味のない広告が表示されることがあります。また、ログインする際にIDとパスワードの記録が記憶されないので、ログインの度にIDとパスワードの入力が必要となり手間が生じます。
トラッキングの拒否は容易に行うことができ、検索ツールの設定画面などからトラッキングの拒否が行えます。
トラッキングのセキュリティリスク
トラッキングを行うことで、Webサイトを運営する企業は、実際にサイトを訪れたユーザーがサイト内でどの部分に注目して読んでいるのか、日頃から利用している他社のサイトなど、利用履歴を追跡することができ、より効果的なマーケティング施策を打ち出せるようになりました。一方で、トラッキングにおけるセキュリティリスクも問題視されています。
ここでは、よく議論にでる「セッションハイジャック」について詳しく説明していきます。
セッションハイジャック
まずセッションとは、Webサーバーとブラウザ間におけるアクセス開始から終了までの、一連の通信処理を指します。セッションハイジャックとは、この通信でやりとりされている情報を盗み出し、本人に成り代わって不正アクセスすることを言います。Webサーバーが、ユーザーのセッションを認識するための識別子であるセッションIDを盗むことでセッションハイジャックが可能となります。セッションIDを盗むためにCookieなどのトラッキングシステムにある情報に不正アクセスをすることで行われるので、トラッキング中である限りはセッションハイジャックの被害を受ける危険性があります。
現在インターネットやスマートフォンの普及により、身近にWebサイトなどの閲覧ができるようになりました。トラッキングはインターネットの利便性の向上に寄与し、Webサイトを運営する企業にとっても、インターネットを利用しているユーザーにとってもプラスになるよう行われています。しかし、ユーザーの気づかないところで位置情報、よく閲覧しているWebサイト、広告識別子などが取得され、データとして送信されていることも事実です。ユーザーは利用を考えているアプリや、Webサイトからのトラッキングをなんでも許可するのではなく、そのアプリやWebサイトに対して情報を開示することが本当に必要であるかを検討することが大切です。
まとめ
インターネット技術の発達によりWebサイトを運営する企業は、実際にサイトを訪れたユーザーがサイト内でどの部分に注目して読んでいるのか、日頃から利用している他社のサイトなどの利用履歴をトラッキング機能で情報を得られるようになりました。ブログやECサイトなどWebサイトを運営する上で、訪問したユーザーのニーズを把握することは、とても大切なことです。どんなWebサイトに訪問しているのかなどユーザーの趣味趣向を分析することで、マーケティングに活用でき、より多くのユーザーに訪問をしてもらえるよう戦略を練ることができます。
またユーザーにとっても、ログインが必要なWebサイトを利用する際に、一度IDとパスワードを入力すると、Cookieのシステムによりログイン情報が保持されるので、時間をあけてそのウェブサイトにアクセスをしても、ログイン情報を再度入力することなく利用することができたり、ECサイトにおいても買い物かごに入れた商品もCookieを利用することにより保存されるので買い物の途中でそのサイトから離脱したとしても、再度そのページに戻った際には買い物かごに入れた商品がそのままになっていたりなど、スムーズにインターネットを利用することが可能になっています。
一方で、トラッキングのセキュリティリスクもあります。情報漏えいなど万が一のことも考慮し、ユーザーはトラッキングをなんでも許可するのではなく、そのアプリやWebサイトに対して情報を開示することが本当に必要であるかを検討した上で利用することが大切です。このような認識のもと、トラッキングを利用する上で、インターネットをより快適に、また安全に使用できるよう、今回の記事が少しでも参考になればうれしく思います。