ナーチャリングとは「養育」や「育成」を意味する英語であり、ビジネスの場面では「顧客育成」の意味でよく用いられる単語です。今回は、ナーチャリングに取り組むメリットや、ナーチャリングを実行する方法、具体的な手法などを紹介します。
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目次
ナーチャリングとは?
ナーチャリング(Nurturing)とは、「養育」や「育成」を意味する英語です。ビジネスの文脈では、主に「顧客育成」を指す言葉として広く使用されています。顧客との長期的な関係構築を目指すナーチャリングは、現代のマーケティング戦略において非常に重要な概念となっています。
ナーチャリングの本質は、顧客や見込み顧客との継続的なコミュニケーションを通じて、彼らのニーズや興味に合わせた情報や価値を提供し、信頼関係を築いていくことです。これにより、単なる一回限りの取引ではなく、長期的かつ持続可能な顧客関係を構築することが可能となります。
ナーチャリングは、顧客の状態や段階によって異なるアプローチが必要となります。主なナーチャリングのパターンとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 新規顧客のナーチャリング: 初めて製品やサービスを購入した顧客を、リピーターへと育成するプロセス
- 既存顧客のナーチャリング: すでに取引のある顧客との関係を深め、より優良な顧客へと育成するプロセス
- 優良顧客のナーチャリング: 頻繁に購入や契約を行う顧客との関係をさらに強化し、長期的なロイヤリティを築くプロセス
これらのナーチャリングプロセスを効果的に実施するためには、顧客データの分析、パーソナライズされたコンテンツの作成、適切なタイミングでのコミュニケーションなど、様々な要素が重要となります。
また、ナーチャリングは、リードジェネレーションやリードクオリフィケーションといった他のマーケティング概念と密接に関連しています。これらの概念を適切に組み合わせることで、より効果的な顧客育成戦略を構築することができます。
効果的なナーチャリングを実施することで、企業は以下のようなメリットを得ることができます。
- 顧客満足度の向上
- 顧客生涯価値(LTV)の増加
- ブランドロイヤリティの強化
- クロスセルやアップセルの機会の創出
- 口コミによる新規顧客の獲得
このように、ナーチャリングは現代のビジネス環境において、顧客との強固な関係を構築し、持続可能な成長を実現するための重要な戦略といえます。
新規・既存顧客のナーチャリング
ナーチャリングの対象は、新規顧客と既存顧客の2つに大別されます。新規顧客のナーチャリングとは、新たに獲得した顧客を、何度も購入するリピーターに育成することです。ナーチャリングの手法を活用することで、顧客との関係性を深め、ロイヤリティを高めることができます。
マーケティングにおいては、新規顧客を獲得することも重要ですが、顧客を確保(キープ)しておくことも同様に重要です。新規顧客を獲得するよりも、すでに一度購入した顧客をキープしてリピーターに育成するほうが労力は少ないと考えられています。これは、ナーチャリングの効果的な側面の一つです。
一方、既存顧客のナーチャリングとは、すでに取引のある顧客を優良顧客にするための育成活動です。既存顧客のなかには、購入頻度が低かったり、購入後に商品やサービスをあまり活用していなかったりなど、企業との結びつきを築かないまま時間が経過している人もいます。
ナーチャリングを通じて、獲得後の顧客と適度に関わりを続ければ、自社との結びつきを強化できます。そうすれば優良顧客に成長する可能性が高まるでしょう。ナーチャリングの過程で、顧客のニーズやフィードバックを収集し、それらを製品やサービスの改善に活かすことで、顧客満足度を向上させることもできます。
効果的なナーチャリングを実施するためには、顧客の行動や好みを深く理解し、パーソナライズされたコミュニケーションを行うことが重要です。これにより、顧客との信頼関係を築き、長期的な関係性を構築することができます。ナーチャリングは、顧客生涯価値(LTV)を最大化し、持続可能な事業成長を実現するための重要な戦略といえるでしょう。
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優良顧客のナーチャリング
優良顧客とは、自社の商品やサービスを繰り返し購入したり、契約期間を更新したり、売上に貢献してくれる顧客のことです。LTV(ライフタイムバリュー)が高いと優良顧客といえるでしょう。ナーチャリングの観点からは、これらの優良顧客との関係性をさらに深めることが重要です。
優良顧客に対するナーチャリングを実施することで、長期にわたる良好な関係を築くことができます。ナーチャリングの効果として、優良顧客が他の関係者に対して自発的な宣伝活動を行ってくれる可能性が高まります。例えば、知人や友人に「長く使っているけど、これはいいよ」と商品やサービスを勧めたり、優良顧客の周囲の人から「それいいね」と尋ねられたりする機会が増えるでしょう。
また、優良顧客へのナーチャリングは、他社への乗り換えを防ぐ効果もあります。優良顧客の中には、商品やサービスに対してマンネリ感を覚え、「他の製品を使うほうがよいのでは」と感じている人もいるかもしれません。そのような顧客の流出を防ぐためにも、ナーチャリングは欠かせません。
ナーチャリングの具体的な施策としては、以下のようなものが考えられます。
- 定期的な新製品の紹介
- 商品やサービスの新しい効果や使い方の案内
- ワークショップや説明会の開催
- 優良顧客向けの特別なイベントの実施
- パーソナライズされたメールマガジンの配信
これらのナーチャリング施策を通じて、優良顧客の満足度を高め、ロイヤリティを強化することができます。結果として、優良顧客の継続的な購入や利用を促進し、企業の安定的な成長につながるのです。
リードナーチャリングとリードジェネレーションの違い
リードとは見込み顧客のことを指します。見込み顧客を獲得することを「リードジェネレーション」と呼び、リードジェネレーションによって獲得した見込み顧客を育成することを「リードナーチャリング」と呼びます。
リードナーチャリングの目標は、見込み顧客をより確度の高い見込み顧客に育てることです。しかし、確度の高い見込み顧客に育成すればリードナーチャリングは終わりではありません。顧客に育てること、さらに優良顧客にすること、など、次なる目標があり、継続的なナーチャリングを実施する必要があるのです。
マーケティング活動において、リードジェネレーションと継続的なリードナーチャリングは欠かせません。適切な見込み顧客を発掘し、育成することは、商品やサービスだけでなく、企業の成長や将来をも左右します。
ナーチャリングの過程では、見込み顧客の興味や関心に合わせたコンテンツを提供し、信頼関係を築いていくことが重要です。例えば、ナーチャリングの一環として、製品情報や業界動向に関するメールマガジンの配信、webセミナーの開催、ホワイトペーパーの提供などが挙げられます。
また、ナーチャリングを効果的に行うためには、顧客の行動や反応を細かく分析し、それに基づいて適切なアプローチを行うことが求められます。このプロセスを通じて、見込み顧客の購買意欲を高め、最終的には成約へと導くことが可能となります。
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リードナーチャリングとリードクオリフィケーションの違い
リードクオリフィケーションとは、見込み顧客から購入可能性が高い(=確度が高い)見込み顧客を選別し、絞り込んでいくプロセスです。ナーチャリングを効果的に実施するためには、見込み顧客ごとのポテンシャルに合わせたアプローチが重要です。
企業側の見込み顧客へのアプローチは、通常以下の順序で行われます:
- リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)
- リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
- リードクオリフィケーション(見込み顧客の選別)
これらの段階は、将来の顧客開拓において重要な要素です。特に、リードクオリフィケーションは見込み顧客の購入までの距離感を的確に見極めるため、リードナーチャリングの成功に大きく影響します。そのため、丁寧かつ慎重に実施することが求められます。
リードクオリフィケーションでは、見込み顧客のアクションに注目して購入の可能性を判断します。以下のようなポイントに着目することで、より正確なリードクオリフィケーションが可能になります:
- セミナーへの参加履歴
- モニターやキャンペーンへの応募・参加状況
- サンプル請求や資料請求の有無
- メールマガジンの登録状況
- SNSでのフォロワー登録の有無
これらの情報を分析することで、ナーチャリングの効果を最大化し、見込み顧客を効率的に顧客へと育成することができます。また、MAツール(マーケティングオートメーションツール)を活用することで、リードナーチャリングとリードクオリフィケーションのプロセスをより効率的に管理することが可能です。
ナーチャリングとクオリフィケーションを適切に組み合わせることで、企業は見込み顧客との関係を深め、より効果的な営業活動を展開できます。これにより、顧客獲得率の向上や顧客生涯価値(LTV)の最大化につながり、ビジネスの成長を加速させることができるのです。
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ナーチャリングが求められる3つの理由
マーケティングにおいて、ナーチャリングは非常に重要な要素となっています。顧客育成の観点から見ると、ナーチャリングが求められる理由として、以下の3点が挙げられます。
- 顧客の価値観と選択肢の多様化
- 中長期的なマーケティング施策の必要性
- 顧客自らが情報収集する時代の変化
これらの理由は、現代のビジネス環境において、ナーチャリングが不可欠であることを示しています。ナーチャリングを通じて、企業は顧客との関係性を深め、長期的な成功を実現することができます。
顧客育成の視点から見ると、ナーチャリングは単なる販売促進ではなく、顧客との信頼関係を構築するプロセスです。このプロセスを通じて、企業は顧客のニーズをより深く理解し、適切なタイミングで適切な提案を行うことができるようになります。
また、ナーチャリングは顧客のライフサイクル全体をカバーする包括的なアプローチです。新規顧客の獲得から、既存顧客の維持、そして優良顧客への育成まで、ナーチャリングは各段階で重要な役割を果たします。
さらに、デジタル時代においては、ナーチャリングの重要性がより一層高まっています。オンラインでの顧客とのコミュニケーションやデータ分析を活用することで、より効果的なナーチャリング戦略を立案・実行することが可能となっています。
以上の理由から、ナーチャリングは現代のマーケティング戦略において欠かせない要素となっているのです。
関連記事:デジタルマーケティングにおけるRACEモデルの重要性
1.顧客の価値観と選択肢の多様化
顧客の価値観や選択肢が多様化する現代社会では、個々の顧客に応じたアプローチが求められています。ナーチャリングでは、顧客の購入履歴や購入頻度、企業側へのアクション、企業側からのアクションなどを反映した育成活動を実施するため、より個々の顧客に適したアプローチが可能になります。
ナーチャリングを通じて、顧客一人ひとりの嗜好や行動パターンを把握し、それに合わせたコミュニケーションを行うことで、顧客満足度の向上や顧客育成の効率化が期待できます。例えば、顧客のウェブサイト閲覧履歴や問い合わせ内容を分析し、興味関心に合わせた情報提供を行うことで、顧客との関係性を深めることができます。
また、顧客が「自分に合うアプローチだ」と認識することで顧客との信頼関係を構築しやすくなる点も、ナーチャリングが必要な理由のひとつです。顧客一人ひとりに寄り添った顧客育成を行うことで、ロイヤルカスタマーの育成にもつながり、長期的な顧客関係の構築が可能となります。
さらに、ナーチャリングを通じて得られた顧客情報は、新製品開発やサービス改善にも活用できます。顧客の声や行動パターンを分析することで、市場ニーズに合った商品開発や、より効果的なマーケティング戦略の立案が可能となり、企業の競争力向上にも寄与します。
2.中長期的なマーケティング施策の必要性
顧客が商品・サービスの購入・導入の意思を決定するまでには、ある程度の期間がかかります。時間をかけて商品・サービスを吟味し、サンプルやトライアルキャンペーンなどを活用して慎重に購入に進む顧客も少なくありません。
そのため、テレビコマーシャルや新聞広告などの大規模な宣伝だけでは、顧客にインパクトは与えられても、購入の決め手とはならない可能性があります。このような状況下では、ナーチャリングを含む中長期的なマーケティング施策が重要となります。
ナーチャリングは、時間をかけて顧客を育成する、中長期的なマーケティング施策です。顧客の意思決定までのプロセスに寄り添い、顧客を優良顧客へと育てる必要があるのです。ナーチャリングを通じて、顧客との信頼関係を構築し、長期的な関係性を築くことができます。
また、ナーチャリングは顧客の購買サイクルに合わせたアプローチを可能にします。例えば、定期的な情報提供や、顧客のニーズに応じたカスタマイズされたコンテンツの配信など、顧客との継続的なコミュニケーションを通じて、ブランドロイヤリティを高めることができます。
さらに、ナーチャリングを通じて得られる顧客インサイトは、製品開発やサービス改善にも活用できます。これにより、顧客満足度の向上や、競合他社との差別化を図ることが可能となります。
中長期的なマーケティング施策としてのナーチャリングは、一時的な売上増加だけでなく、持続可能な事業成長を実現するための重要な戦略といえるでしょう。
3.顧客自らが情報収集する時代の変化
インターネットの普及と通信速度の向上により、顧客は従来よりも商品やサービスの情報を容易に入手できるようになりました。このデジタル時代において、ナーチャリングはますます重要性を増しています。顧客は、インターネットを駆使して情報を収集し、比較検討を行い、自分に最適な商品やサービスを選択するようになりました。
この変化により、購入までのプロセスはより長期化しています。そのため、企業には顧客により有用で価値のある情報を提供することが求められるようになりました。ナーチャリングを効果的に実施することで、顧客は自発的かつ主体的に商品やサービスを選択できるようになります。
さらに、ナーチャリングを通じて、企業は顧客のニーズや行動パターンをより深く理解することができます。これにより、顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズされたコンテンツや情報を提供することが可能となり、顧客との信頼関係を構築しやすくなります。
ナーチャリングの重要性は、単に情報提供にとどまりません。顧客との継続的なコミュニケーションを通じて、ブランドロイヤリティを高め、長期的な顧客関係を築くことができます。この時代の変化に適応し、効果的なナーチャリング戦略を実施することが、企業の競争力を維持し、成長を促進する鍵となるのです。
ナーチャリングの3つのメリット
ナーチャリング(顧客育成)には、次の3つの主要なメリットがあります。これらのメリットは、効果的なナーチャリング戦略を実施することで得られる重要な利点です。
- 営業活動が効率化される
- フォローアップのノウハウをシステム化できる
- 埋もれていた顧客情報を有効活用できる
これらのメリットは、ナーチャリングを通じて顧客との関係性を深め、長期的な価値を創出することにつながります。ナーチャリングを実施することで、顧客のライフサイクル全体を通じて、より効果的なマーケティングと営業活動が可能になります。
さらに、ナーチャリングは顧客満足度の向上にも寄与します。顧客のニーズに合わせたコミュニケーションや情報提供を行うことで、顧客との信頼関係を構築し、ロイヤリティを高めることができます。これにより、顧客の離脱を防ぎ、顧客生涯価値(LTV)を最大化することが可能になります。
また、ナーチャリングは新規顧客の獲得コストを削減する効果もあります。既存顧客との関係性を強化することで、口コミやレビューなどの自然な宣伝効果が期待でき、新規顧客の獲得にかかるコストを抑えることができます。
以上のように、ナーチャリングは企業の成長戦略において重要な役割を果たし、多面的なメリットをもたらします。次のセクションでは、これらのメリットについて詳しく見ていきましょう。
1.営業活動が効率化される
ナーチャリングでは、顧客を特定の基準(購入回数、頻度、年齢など)で分類し、MAツールなどを活用した適切なアプローチ方法を一斉に実施します。これにより、顧客ごとに最適化された効率の良い営業活動が実現できます。
リードナーチャリングを実施するときも、マーケティング部門などが見込み顧客の購入までの距離感に応じて適切なアプローチを実施し、確度が十分に高くなってから営業担当者に引き継ぐのが一般的です。
営業担当者は見込み顧客として十分に育成されたリードだけに営業を行うことになるため、成功率の高い営業活動が実現できます。
ナーチャリングを活用することで、以下のような効果も期待できます。
- 顧客との関係性強化: ナーチャリングを通じて、顧客との継続的なコミュニケーションが可能となり、信頼関係を築きやすくなります。
- 商談の質の向上: ナーチャリングによって育成された見込み顧客は、商品やサービスに対する理解が深まっているため、より質の高い商談が可能になります。
- 営業リソースの最適化: ナーチャリングによって見込み顧客の購買意欲を高めることで、営業担当者は確度の高い案件に集中できるようになり、営業リソースを効率的に活用できます。
- クロスセルやアップセルの機会創出: ナーチャリングを通じて顧客のニーズを把握することで、適切なタイミングでクロスセルやアップセルの提案が可能になり、顧客単価の向上につながります。
このように、ナーチャリングは営業活動の効率化に大きく貢献し、企業の売上向上や顧客満足度の改善に寄与する重要な戦略といえます。
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2.フォローアップのノウハウをシステム化できる
顧客に対する長期的なフォローアップのノウハウを蓄積すると、業務のシステム化が可能になります。ナーチャリングを通じて得られた顧客育成の知見を、体系的に整理し、システムに落とし込むことで、効率的な顧客対応が実現できます。
システムとして業務を構築すれば、マーケティングや営業の経験が乏しい新人でも、データに裏付けされた効率的な顧客対応が可能になるのです。例えば、ナーチャリングの各段階で使用するコンテンツや、顧客とのコミュニケーションのタイミングなどを、システム化されたプロセスとして管理できるようになります。
さらに、ナーチャリングのシステム化により、顧客の反応や行動パターンを分析し、より効果的なアプローチ方法を見出すことも可能になります。これにより、顧客との関係性を深め、ロイヤリティを高めることができるでしょう。
システム化がうまくいけば、社内の人材育成の時間も短縮でき、より効率的な企業活動も実現できます。新入社員や異動してきた社員も、ナーチャリングのシステムを活用することで、短期間で顧客対応のスキルを向上させることができるでしょう。
このように、ナーチャリングのノウハウをシステム化することで、組織全体の顧客対応力が向上し、より効果的な顧客育成が可能になるのです。
3.埋もれていた顧客情報を有効活用できる
ナーチャリングでは、顧客や見込み顧客の情報をCRMツール(顧客情報の管理ツール)などで一元管理して活用します。これにより、ナーチャリングの効果を最大化し、顧客との関係性を深めることができます。
CRMツールを使うと、営業担当者の個人的な記憶や記録に頼らないため、多くの顧客情報をまとめて管理できます。ナーチャリングの過程で得られた顧客の嗜好や行動パターンなどの情報も、CRMツールに蓄積することで、より効果的なアプローチが可能になります。
さらに、一度商談が無効になった失注案件や休眠案件に対しても、適度なタイミングでナーチャリングを実施することで、商談が成立する可能性が高まります。ナーチャリングを通じて、これらの顧客との関係性を維持し、適切なタイミングで再アプローチすることが重要です。
失注顧客や休眠顧客は、すでにある程度の情報を得ているという点に注目すれば、新規開拓よりも効率的な営業対象だといえます。ナーチャリングを活用することで、これらの顧客との関係を再構築し、潜在的な商機を掘り起こすことが可能となります。
このように、ナーチャリングを通じて顧客情報を有効活用することで、営業活動の効率化や成約率の向上につながり、企業の成長に大きく貢献することができるのです。
ナーチャリングを実行する際の4ステップ
ナーチャリングを効果的に実行するためには、適切なステップを踏むことが重要です。ここでは、ナーチャリングを実施する際の4つの主要なステップについて解説します。これらのステップを着実に実行することで、顧客との関係性を強化し、ビジネスの成長につながるナーチャリングを実現できます。
- 見込み顧客を獲得する
- 顧客情報を整理する
- コンテンツを作成する
- 施策を実行する
これら4つのステップは、ナーチャリングの基本的なプロセスを構成しています。各ステップを丁寧に実施することで、効果的なナーチャリング戦略を展開できます。ナーチャリングの成功には、顧客のニーズを理解し、適切なタイミングで価値ある情報を提供することが不可欠です。次に、それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
1.見込み顧客を獲得する
まずは見込み顧客の獲得です。リードジェネレーションを実施し、質の高い見込み顧客を獲得します。ナーチャリングの第一歩として、効果的なリードジェネレーション戦略を立てることが重要です。
すでにある見込み顧客の情報も一元管理しておきましょう。たとえば受け取った名刺や資料請求をされた見込み顧客の情報なども、まとめて整理します。この際、リストの重複がないように電話番号やメールアドレス、氏名、住所などをチェックすることが大切です。
ナーチャリングの効果を最大化するために、見込み顧客の情報を正確に把握し、適切に分類することが求められます。例えば、業種、企業規模、役職などの属性情報や、過去の商談履歴、興味を示した製品やサービスなどの行動データを収集し、体系的に整理します。
どれだけ適切なアプローチでも、同じアプローチが二重、三重に繰り返されると、機械的にアプローチしている印象を見込み顧客に与えてしまい、友好な関係を築きにくくなるからです。そのため、ナーチャリングプロセスの初期段階から、重複を避け、個別化されたアプローチを心がけることが成功への鍵となります。
また、ナーチャリングの効果を測定するためにも、獲得した見込み顧客の情報を適切に記録し、追跡可能な形で管理することが重要です。これにより、後続のナーチャリング施策の効果を正確に評価し、継続的な改善につなげることができます。
2.顧客情報を整理する
見込み顧客だけでなく、すでに取引がある顧客情報も整理しておくことが、効果的なナーチャリングを行う上で重要です。部署ごと、あるいは担当者ごとに一元管理をし、リストに抜け漏れや重複がないか確認できるようにしておきましょう。これにより、ナーチャリングの対象となる顧客を正確に把握することができます。
一元管理した後で、顧客との間で築いてきた関係や取得した情報をベースとして、顧客を分類していきます。この分類は、ナーチャリングの戦略を立てる上で非常に重要です。例えば、購入頻度や購入金額、商品カテゴリーなどによって顧客をセグメント化することで、それぞれのグループに適したナーチャリングアプローチを設計することができます。
また、見込み顧客に関しては、購入までの距離感なども分析しておくことが大切です。これにより、各見込み顧客がセールスファネルのどの段階にいるかを把握し、適切なナーチャリング施策を実施することが可能になります。
さらに、顧客情報の整理においては、CRMツールなどのシステムを活用することも効果的です。これにより、ナーチャリングの進捗状況や顧客とのコミュニケーション履歴などを一括管理し、タイムリーで適切なフォローアップを行うことができます。
このように、顧客情報を丁寧に整理し、分析することで、より効果的なナーチャリングを実現し、顧客との長期的な関係構築につなげることができるのです。
3.コンテンツを作成する
たとえば名刺を交換しただけ、ホームページを閲覧しただけ、といった関係性では、購入までの距離は近いとはいえません。
ナーチャリングを効果的に行うためには、無料セミナーに招待する、オウンドメディアでより詳しい情報を記したコンテンツを提供する、などのナーチャリングのためのコンテンツが必要になるでしょう。
顧客との関係性や顧客の属性、購入までの距離感などで分類した顧客・見込み顧客のグループごとに、適切なコンテンツを作成していきます。このプロセスは、ナーチャリングの成功に不可欠です。
コンテンツを作成するときは、以下の点を考慮することが重要です。
- 顧客・見込み顧客が求めている情報であるか
- そのコンテンツを閲覧することにより購入・利用の意欲が刺激されるか
- 企業への信頼感が強まるか
ナーチャリングに効果的なコンテンツの例としては、以下のようなものがあります。
- 業界トレンドレポート
- 製品・サービスの使用事例
- ハウツーガイド
- 専門家によるウェビナー
- カスタマーサクセスストーリー
これらのコンテンツを通じて、顧客との関係性を深め、ナーチャリングの効果を最大化することができます。また、コンテンツの形式や配信チャネルを顧客のニーズや好みに合わせて最適化することで、ナーチャリングの効果をさらに高めることができます。
関連記事:コンテンツマーケティングとは?基本的な概念から実践までを解説します
4.施策を実行する
作成したコンテンツを、顧客・見込み顧客のグループごとに提供します。記事コンテンツやメールマガジン、DMなどのコンテンツを、グループごとに適切なアプローチ法を選んで提供しましょう。ナーチャリングの実行において、コンテンツの適切な配信は非常に重要です。
アプローチは1回のみではありません。コンテンツを継続的に作成し、顧客や見込み顧客との接点を増やしていきます。アプローチによって閲覧、開封、返信などの反応があった場合は、その情報を記録し、次のナーチャリング施策に活用します。
ナーチャリングの効果を最大化するためには、顧客の行動や反応を細かく分析し、それに基づいて次のアプローチを計画することが重要です。例えば、特定のコンテンツに高い関心を示した顧客には、関連する詳細な情報を提供するなど、きめ細かな対応を心がけましょう。
また、ナーチャリングの過程で得られた顧客インサイトを活用し、商品やサービスの改善にも役立てることができます。このように、ナーチャリングは単なる顧客育成だけでなく、ビジネス全体の成長にも寄与する重要な施策といえるでしょう。
マーケティングの進め方については、詳細な手順を記載した手引書を無料でダウンロードいただけます。下記をぜひ参考にしてください。
BtoBでゼロから始めるWebマーケティング手引書【企業が取り組むべき4ステップ】
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ナーチャリングを成功させるための4つのポイント
ナーチャリングを成功させるためには、次のポイントに注目してください。
1. ナーチャリングの目標を設定する
2. 部門間での連携を図る
3. 顧客ごとにフォローアップする
4. 事例や口コミをコンテンツに盛り込む
それぞれのポイントを説明します。
1.ナーチャリングの目標を設定する
ナーチャリングには、主に顧客とのつながりの強化を目標としたものと、購買意欲の醸成を目標としたものの2種類があります。この目標によってアプローチ方法は異なるため、明確にしておくことが必要です。
顧客とのつながり強化を目標としたナーチャリングでは、顧客とのコミュニケーションに重きを置き、顧客からの信頼を獲得するためのアプローチを実施します。信頼の獲得は一朝一夕ではできないため、継続的なアプローチが必要です。
一方、顧客の購買意欲の醸成を目的としたナーチャリングでは、商品・サービスのメリット、独自性、競合他社の商品・サービスとの違いなどをアピールします。
なお、広く大きくアピールできたとしても、提供する情報の信頼性が低いと、育成の効果は期待できません。
信頼できる情報と情報発信者であることがわかるように、提供する情報には根拠を含め、顧客の声なども継続的に発信しましょう。
2.部門間での連携を図る
ナーチャリングはマーケティング部門だけでなく、営業部門や他部門との連携を図って組織的に進めていく必要があります。部門間で連携を図ることで、育成した見込み顧客や顧客に対して、適切なタイミングで適切なアプローチができるからです。
部門間で連携を図るためにも、ナーチャリングのコンテンツについては、関連する部門全体で理解しておき、見込み顧客・顧客の情報も、誰でも適切にアクセスできるようにしておくことが重要です。
関連記事:スマーケティングとは?マーケティングとセールスの連携ポイント
3.顧客ごとにフォローアップする
ナーチャリングは、顧客情報を一元管理し、見込み顧客・顧客を適切にグルーピングしてアプローチを実施する手法です。
まとめてアプローチを実施することで、マーケティングの効率が高まるだけでなく、次のアプローチにも進みやすくなります。
ただし、一斉にアプローチする方法では、顧客との距離感を縮められない可能性があります。顧客ごとに検討したフォローアップを適切に実施して、良好な関係性を構築していきましょう。
4.事例や口コミをコンテンツに盛り込む
商品やサービスを実際に購入・利用した顧客の声(いわゆる「お客様の声」)や体験談、導入事例などをコンテンツに盛り込むと、読者は購入や導入のイメージがわきやすくなります。
たとえば商品・サービスのメリットを説明するだけのコンテンツだけですと、見込み顧客や顧客は「自社の商品・サービスだから褒めるのは当たり前だろう」と思うでしょう。そこで、実際に商品・サービスを使った顧客の事例や口コミをコンテンツにプラスするのです。するとコンテンツには客観性が生まれるため、見込み顧客や顧客の信頼を獲得しやすくなるでしょう。
関連記事:お客様の声を活かす方法とは!サービス向上にやるべきこと!
見込み顧客や顧客の購買・利用・導入意欲を引き出し、行動を促すためには、ナーチャリングのスキルを高めることが重要です。領域ごとのナーチャリングスキルについては、以下の動画で学べますので、ぜひご覧ください。
【動画付き/ウェビナー資料】事例から学ぶ、顧客を『動かす』ナーチャリング術とは?領域別に解説!
※本資料は過去に開催したウェビナーの投影資料になります。 資料内にウェビナーのURLを記載しておりますので併せてご視聴ください。 『獲得したリードを、どうやってナーチャリングして…
ナーチャリングに有効な5つの施策
ナーチャリングで有効とされる施策には、次の5つのものがあります。
1. SNS発信
2. メールマガジン・ステップメール・ダイレクトメール
3. Web行動のトラッキング
4. ホワイトペーパー
5. セミナー・ウェビナー
それぞれの特徴やメリット、注意すべきポイントもあわせて紹介します。
1.SNS発信
InstagramやTwitterなどのSNSを使って情報を提供し、ナーチャリングをする方法もあります。
SNS投稿を閲覧する側は、投稿に対して「いいね」を押したり、コメントをつけたり、気軽にリアクションができるため、発信者側との心理的な距離が近くなります。
また、SNSの投稿は簡単にシェアでき、他人の「いいね」も可視化されやすいため、既存顧客だけでなく新規顧客の目に情報が届きやすいのもポイントです。
SNSでは短い文章や写真、動画などで顧客の心をつかむ投稿を心がけ、定期的に発信しましょう。
関連記事
・SNSマーケティングとは?成功事例や始め方のポイントを解説
・SNSとは?種類や使い方、仕組みについて分かりやすく解説
2.メールマガジン・ステップメール・ダイレクトメール
メールマガジン(メルマガ)を定期的に配信し、新しい商品やサービスの情報や、既存商品・サービスの使い方などについて、詳しい情報を見込み顧客や顧客に届けるのもナーチャリングといえます。自社で提供している商品・サービスの情報だけでなく、トレンド情報や関連するジャンルの情報なども提供すれば、さらに顧客の興味を惹きつけられるでしょう。
メールマガジンは定期的に送信することが一般的ですが、配信の頻度が高いと登録解除されるリスクをはらみます。顧客の動向をこまめにチェックして、適切な頻度で送るようにしましょう。
なお、あえて不定期に発信するのもひとつの方法として選択できます。新商品・新サービスが発売される前などの大規模なプロモーションとリンクして配信すれば、顧客の期待感を高められることもあります。
アクションを起こした顧客に向けて、シナリオで設定したメールを配信することを「ステップメール」と呼びます。ステップメールを選択することで、より見込み顧客や顧客にあわせた情報を発信できるようになり、つながりの強化を実現しやすくなるでしょう。
また、電子メールだけでなく、はがきや封書などの紙によるダイレクトメールも、ナーチャリングに有効な方法です。とくに一般の消費者をターゲットとしたBtoCマーケティングでは、ハガキやカタログ、チラシなどの紙媒体によるナーチャリング手法も依然としてニーズが高いと考えられています。
ターゲットにもよりますが、インターネットで情報収集をすることが少ないと思われる層にアピールするときは、ナーチャリングの手法として紙のダイレクトメールなども検討しておきましょう。
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3.Web行動のトラッキング
Web行動のトラッキングとは、インターネット上の顧客の行動を追跡し、顧客のニーズを把握することです。
自社のホームページやオウンドメディア、ECサイトなどにアクセスしたユーザーの行動について、流入経路やランディングページ、流出したページ、コンバージョンしたページ、閲覧時間などを分析し、見込み顧客・顧客へのアプローチや商品開発に活かします。
たとえば商品・サービスを紹介するページにアクセスが多いものの、流出するユーザーも多い場合であれば、商品・サービスの紹介から販売につなげる導線がない、あるいはわかりにくい、といったことが想定されます。
そこでページ構成やデザインを変えることで、顧客との結びつきを強化し、見込み顧客を顧客に育成できるかもしれません。
定期的にWeb行動のトラッキングをおこない、ユーザーの行動を分析することが重要です。トラッキングの分析結果から適切な施策を導き出し、より効果のあるナーチャリングを実施できるようにしましょう。
関連記事:トラッキングってなに?インターネット利便性の向上に寄与している手法とは
4.ホワイトペーパー
ホワイトペーパーとは、見込み顧客や顧客に有益な情報を提供する資料のことで、通常は資料請求のメールを送ってもらうか、メールフォームなどを作成してダウンロードできるようにしておきます。
ホワイトペーパーでは顧客に有益な情報を提供するだけでなく、商材のプロモーションも兼ねることが一般的です。顧客はホワイトペーパーから専門性の高い有意義な情報を得つつ、商材についての知識を得ることで、購入の意思を自然に固める可能性があります。
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5.セミナー・ウェビナー
ナーチャリングの施策として、セミナーやウェビナーの実施も有効です。商品・サービスに関連のあるトピックで開催し、顧客に有益かつ専門性の高い情報を提供しつつ、自社製品・サービスのプロモーションを行うことができます。
たとえば、投資用のマンションを販売する不動産会社であれば、「不動産投資の将来性」「投資用物件の選び方」などの顧客の興味を引きそうなトピックを選び、専門家を講師として招いてセミナーやウェビナーを開催できるでしょう。無料で開催をすれば、顧客も参加しやすくなり、ナーチャリングも進めやすくなります。
ただし、セミナーを開催するには、会場の確保が必要です。また、会場の近くにいる見込み顧客や顧客のみがターゲットとなるため、ニッチなトピックでは効率性が悪い施策となってしまいます。
より多くの見込み顧客や顧客をターゲットとするときは、オンラインによるウェビナーが検討できます。配信するコストはかかりますが、会場を確保したり、セミナー用のスタッフを配置したりするコストを削減できるため、トータルで見れば負担が少ない方法です。
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ナーチャリングに必要な顧客分析の手法3つ
効果のあるナーチャリングを実施するためには、見込み顧客や顧客を的確にグルーピングすることが必要です。顧客のグルーピングに用いられる主な分析手法としては、次のものが挙げられます。
1. RFM分析
2. デシル分析
3. CTB分析
それぞれの分析方法の特徴や強みを紹介します。
1.RFM分析
RFM分析とは、次の3つの項目に注目して顧客をグループ分けする手法です。
● Recency(直近の購入日)
● Frequency(購入頻度)
● Monetary(購入額)
RFM分析では購入した履歴がグルーピングの根拠となるため、既存顧客に有効な手法といえます。直近の購入日と購入頻度、購入額を総合的に判断し、売上に対しての貢献度の高さでグループに分けます。
たとえば、貢献度の高いグループに対しては特典を提供するなどのアプローチをすることで、顧客満足度を高められるかもしれません。また、貢献度の高いグループに提供する特典についての情報を公開することにより、貢献度が中程度~低めのグループに属する顧客に刺激を与え、購買意欲を引き出せることもあります。
RFM分析では、グルーピングだけが目標ではありません。購入という要素に注目することで、適切なアプローチを考案するための分析でもあります。顧客の購買意欲を刺激するポイントを割り出し、精度の高いアプローチを見つけていきましょう。
関連記事:デシル分析とRFM分析の違いとは?活用方法と事例をご紹介
2.デシル分析
デシル分析も、RFM分析と同じく売上貢献度に注目して、顧客をグルーピングする手法です。デシル分析では顧客をランクづけし、10のグループに割り振っていきます。
グループ分けをしてから、売上に大きく貢献しているグループが上位いくつまでなのかを分析します。たとえば上位3つのグループだけが売上を押し上げているのであれば、3つのグループだけに注目したアプローチを実施します。そうすることで、より効率的な営業活動が実施できるでしょう。
デシル分析も、すでに購入していることが条件となるため、既存顧客をターゲットとした分析手法です。まだ購入にいたっていない見込み顧客に対しては、次のCTB分析を利用してグルーピングを実施しましょう。
3.CTB分析
CTB分析とは、次の3つの指標をもとに見込み顧客や顧客をグルーピングする手法です。
● Category(カテゴリ)
● Taste(テイスト)
● Brand(ブランド)
見込み顧客や顧客が、自社の商品・サービスのどこに魅力を感じているのか調べます。たとえば、カジュアルウェアの通信販売を手がけている企業を見本に考えてみましょう。見込み顧客・顧客ごとに、「カジュアルウェア」や「通信販売」というカテゴリに魅力を感じているのか、「カジュアル」なテイスト、ブランド名に魅力を感じているのかを分析します。
分析後、カテゴリに魅力を感じているグループ、テイストに魅力を感じているグループ、ブランドに魅力を感じているグループに分けます。このケースであれば、カテゴリが2つ(カジュアルウェア、通信販売)考えられるため、それぞれ別のグループに分けるほうが自然です。
興味の対象がわかると、マーケティングのアプローチ方法も決めやすくなります。カジュアルなテイストに惹かれている顧客のいるグループであれば、普段着の着こなしやカジュアルなレストラン・カフェの情報などを提供することもできるでしょう。また、カジュアルウェアとマッチする靴やかばんなどの小物を提案できるかもしれません。
ナーチャリングの効率性を高める2つのツール
ナーチャリングは、マーケティングや営業の効率性を高める行為です。しかし、見込み顧客や顧客の特性、興味、売上貢献度など、さまざまな要素にあわせたナーチャリングを提供すると、グループが増えて、ナーチャリングにかかる時間や手間も増えてしまいます。
そこで、見込み顧客や顧客に的確なアプローチをするためにも、ナーチャリングを効率よく実施できるツールを導入しましょう。ナーチャリングに活用できるツールには、次のものがあります。
1. CRMツール
2. MAツール
それぞれのツールでできることやメリットなどを紹介します。
1.CRMツール
CRM(Customer Relationship Management)ツールとは、顧客管理システムとも呼ばれるツールです。顧客情報を管理するためのツールで、顧客の過去のアクションや購入商品、購入までの距離感などを記録する際に用います。
CRMツールを使って顧客情報を管理すると、客観的な情報のみを登録するため、特定の担当者の思い込みによるアプローチを回避できます。たとえば、購入までの距離感が遠いのに、顧客の雰囲気や職業などから確度の高い顧客だと思い込むなど、誤った判断が防げます。
また、部署を超えて見込み顧客や顧客の情報を共有しやすくなる点もメリットです。適切に顧客情報を共有できると、マーケティングから営業、販売まで、シームレスなアプローチを提供できるようになります。
関連記事:CRMとは何か?知っておきたいSFAとの違いやCRMツール導入の注意点まで徹底解説
2.MAツール
MA(Marketing Automation)ツールとは、マーケティングを自動化・効率化するツールです。顧客の属性や売上貢献度などをスコアリングして見える化し、顧客ごとに適したメールマガジンを自動配信できます。
MAツールとCRMツールを連携すると、顧客管理からマーケティングまでをワンストップで行えるようになります。MAツールによってはWebサイトのアクセス分析機能もあり、多様なナーチャリングが可能です。
使いやすいMAツールをお探しの方は、ぜひ『Switch Plus』の導入をご検討ください。トライアルアカウントを発行することで、無料で機能をお試しいただけます。
関連サービス:かんたん!はじめやすい!つづけやすい!CMS・MAの一体型『Switch Plus』
関連記事:MA(マーケティングオートメーション)とは?MAツールの導入ステップや選び方を解説
ナーチャリングの実践例
マーケティング活動においてナーチャリングを実施すると、顧客は優良顧客に、優良顧客は宣伝力のある顧客に成長し、マーケティングをより効率的に進めていくことが可能です。確度の高い営業や販売を実現するためにも、ぜひ計画的なナーチャリングを実践していきましょう。以下はナーチャリングの実践的な活用による事例になるので参考にしてください。
実践例1:大手saas企業
ウェルカムメール: 新規リードがトライアルアカウントに登録すると、対象者にウェルカムメールを送信します。このメールには、トライアルアカウントの活用方法や他社の成功事例が含まれています。
活用促進コンテンツ: 対象者が特定の行動・活動(例えば、ブログ記事の閲覧やウェビナーの視聴)を起こした場合、関連する活用促進のコンテンツを含むメールを送信します。
フォローアップメール: 対象者の行動履歴に基づき、セグメントとごとに最適化されたフォローメールを送信し、潜在的なニーズに対応します。
実践による成果: このナーチャリング施策により、対象者のエンゲージメントが向上し、トライアルアカウントから有料への転換が増加しました。
実践例2:大手プラットフォーマー
対象者にパーソナライズしたメール: 過去の購買履歴や閲覧履歴に基づき、関連する最適な製品のレコメンデーションをメールやウェブサイト上で行います。
リマインドメール: カートに商品を追加したまま購入しない対象者(顧客)に対して、リマインドのメールを送信します。
レビュー依頼: 商品購買後に対象者(顧客)にレビューを書いてもらうためのメールを送信し、レビュー投稿をすることでロイヤルカスタマーへ近づけます。
実践による成果: このナーチャリング施策により、対象者(顧客)のリピート購入率が高まり、対象者(顧客)のライフタイムバリューが向上しました。
BtoBでゼロから始めるWebマーケティング手引書【企業が取り組むべき4ステップ】
ビジネス環境がオンラインへ移行しつつある中、見込み顧客の購買行動は多様化・複雑化しています。 ユーザーは問い合わせや購買に至るまでに、これまで以上にオンラインで情報収集を活発に行う…
よくあるご質問
ナーチャリングの重要性は?
見込み顧客を顧客に、顧客を優良顧客に育成するためにも、ナーチャリングが必要です。さらに優良顧客にナーチャリングを実施することで、顧客自身が宣伝活動をしてくれたり、企業との結びつきが強化されたりすることがあります。従来と比べ、顧客が時間をかけて商品・サービスを選ぶ現代においては、ナーチャリングによる継続的なアプローチが欠かせません。
ナーチャリングの目的は?
ナーチャリングは、顧客とのつながりを強化することと、購買意欲を醸成することの2つの目的があります。目的によって適切なアプローチが異なるため、目的を決めてからナーチャリングのコンテンツを作成することが必要です。いずれの目的でナーチャリングを実施する場合も、時間をかけて顧客と接していくことが求められます。
ナーチャリングのコツは?
ナーチャリングを成功させるコツとしては、目標を明確にすることと、部門間の連携を図ること、顧客にあわせたフォローアップを提供することなどが挙げられます。また、メールマガジンやオウンドメディアなどでナーチャリング目的のコンテンツを提供するときは、事例や口コミ、お客様の声など、客観的な情報を加えると、ナーチャリングの成果が上がりやすくなります。