企業や組織の持続的な発展に欠かせない要素である「マネジメント」。
人材育成や設定した目標を達成するために、マネジメントに必要な能力やスキルを身に付けることが多くの組織で求められています。
本記事では、マネジメントの基本的な意味や役割、そしてマーケティングの観点からのマネジメント手法であるKPIマネジメントについて詳しく解説していきます。マネジメントの本質を理解し、効果的に実践するためのヒントを提供します。
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目次
マネジメントとは
マネジメントとは「管理」「経営」という意味を持ち、ビジネスの文脈では組織の管理や運営を指します。企業や組織が持続的に発展していくために欠かせない要素であり、人材育成や目標達成に向けて、マネジメント能力やスキルを磨くことが多くの組織で求められています。
マネジメントの定義は様々ありますが、最も広く知られ一般的に認識されているのは、現代経営学の父と呼ばれるアメリカの経営学者P.F.ドラッカーが1973年に著した「マネジメント」という書籍から生まれたものです。ドラッカーの著作は、2009年に刊行された『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの"マネジメント"を読んだら』でも話題となり、多くの人々に知られるきっかけとなりました。
マネジメントの本質は、組織が設定した目標を達成するために、人材・物資・資金・情報といった組織の資源を効果的に活用することにあります。これにより、組織全体の生産性向上や競争力強化が図られ、持続可能な成長が実現されるのです。
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ドラッカーによるマネジメントの定義
ドラッカーは著書の中で、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しています。
具体的にいうと、組織が設定した目標を達成するために、ヒト・モノ・カネ・情報などの組織の資源を効果的に活用することがマネジメントであるということです。
また、ドラッカーはマネージャーのことを「組織の成果に責任を持つ者」と定義しています。この定義は、マネジメントの本質を端的に表現しており、多くの経営者や管理職の指針となっています。
ドラッカーの考えによれば、マネジメントは単なる管理や統制ではなく、組織全体の成果を最大化するための戦略的な取り組みであり、組織の目標達成に向けて人材や資源を最適に配置し、活用する重要な役割を担っています。
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マネジメントが必要とされる理由
近年、働き方の多様化により同じ組織の中で異なる年代・キャリア・価値観の人材が、共通の目標に向かって働いています。このような多様性のある環境下では、効果的なマネジメントが不可欠です。
メンバーそれぞれが、自分の経験や価値観のみに基づいて仕事を進めると、組織としてのまとまりが失われ、期待される成果を生み出すことが困難になります。そのため、マネジメントを通じて、個々のメンバーの強みを活かしつつ、組織全体の方向性を統一することが重要です。
適切なマネジメントにより、メンバーひとりひとりのキャリアや個性に適した業務を割り当てたり、効率的な仕事の進め方を指導したりすることで、目標達成や組織発展の成果を最大化できます。さらに、チーム全体の生産性向上や、イノベーションの促進にもつながります。
また、マネジメントは組織の未来を担う人材を育成する上でも欠かせません。計画的な育成プログラムの実施や、適切なフィードバックの提供を通じて、メンバーの成長を支援し、組織の持続的な発展を実現することができます。
このように、マネジメントは組織の効率性、生産性、そして長期的な成功を確保するために必要不可欠な要素といえるでしょう。
マネジメントとリーダーシップの違い
マネジメントと類似した意味を持ち、しばしば混同される概念として「リーダーシップ」があります。両者は密接に関連していますが、その本質的な役割や焦点は異なります。この違いを理解することは、組織運営において非常に重要です。
マネジメントは、設定した目標を達成するために組織を効率的に運営していくことを指します。これには、計画立案、資源配分、進捗管理などが含まれます。一方、リーダーシップは、目標達成のための具体的な方向性を示し、メンバーを鼓舞し導くことを意味します。
具体的には、マネジメントは以下のような要素に焦点を当てます。
- 組織構造の整備
- 業務プロセスの最適化
- 効率的な資源配分
- 数値目標の設定と管理
対して、リーダーシップは次のような側面を重視します。
- ビジョンの提示
- メンバーのモチベーション向上
- 変革の推進
- 組織文化の形成
理想的には、両者のスキルをバランスよく備えることが望ましいでしょう。効果的なマネジメントとリーダーシップの両立により、組織は安定性と革新性を兼ね備え、持続的な成長を実現することができます。
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マネジメントの仕事内容
マネジメントの意味や役割を理解したら、次はマネジメントの具体的な仕事内容について解説します。マネジメントには主に5つの重要な業務があり、これらを適切に遂行することで組織の効果的な運営が可能となります。
1つ目は目標設定です。組織やチームの方向性を明確にし、具体的な目標を設定して共有します。
2つ目は業務管理です。目標達成のために必要な業務分担、人員配置、スケジュール管理を行います。
3つ目はモチベーションの維持です。メンバー一人ひとりのモチベーションを高め、維持することで生産性の向上を図ります。
4つ目は人材育成です。中長期的な視点で組織の人材を育成し、組織全体の底上げを行います。
5つ目は評価です。定期的な評価を通じて、メンバーの成長を促進し、適切なフィードバックを提供します。
これらの仕事内容を適切に実施することで、組織の目標達成と持続的な発展が可能となります。マネジメントを担当する者は、これらの業務の重要性を理解し、バランスよく遂行することが求められます。
目標設定
マネジメントするうえで最も重要といえるのが目標設定です。
組織やチームがどのような目標に向かっていくのかを具体的に決め、メンバーに共有し理解、浸透させていきます。
自分たちが今からどこに向かうのか、そのためには何をすればいいのかを理解している組織とそうでない組織では成果に大きな差が生じます。
さらに、組織・チームとしてだけではなく、メンバーひとりひとりにも「目標」「ゴール」を設定しておくことで、メンバーに対する評価も適切に行うことができます。
目標設定の際には、SMART原則を意識することが効果的です。SMARTとは以下の5つの要素を指します。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Relevant(関連性がある)
- Time-bound(期限がある)
これらの要素を満たす目標を設定することで、より明確で実現可能な方向性を示すことができます。
業務管理
目標を設定したら、業務分担や人員配置、スケジュール管理をして業務管理をしていきます。
ひとりひとりの能力や性格を考慮しながら役割分担を行うと、個人が持つ強みや能力を最大限に発揮することができます。これには、メンバーの適性や経験、スキルセットを正確に把握することが重要です。
そのためにも日頃からメンバーには色々な業務を挑戦させて、得手不得手を把握しておくことが必要です。定期的なスキル評価やフィードバックセッションを設けることで、より効果的に個々の能力を把握し、適材適所の配置を実現できます。
業務管理が適切に行えていないと、担当者がいない業務があったり、不要な業務に時間を割いたりと設定した期日までに目標を達成できなくなります。このような事態を防ぐために、タスク管理ツールやプロジェクト管理ソフトウェアを活用し、業務の進捗状況を可視化することも効果的です。
さらに、定期的なミーティングやレポーティングを通じて、チーム全体の業務状況を把握し、必要に応じて柔軟に業務の再分配や優先順位の調整を行うことが、効率的な業務管理につながります。
モチベーションの維持
組織やチームが1つの目標に一丸となって進んでいくためには、ひとりひとりのモチベーションの維持が必要不可欠です。
マネジメントをする側(マネージャー)とマネジメントされる側(社員・メンバー)の双方がコミュニケーションを取りながら、抱えている不安を取り除いたり、現状で成果を出していることに対して評価をしたりして、モチベーションの維持を図っていきます。
チーム全体のモチベーションが向上すると生産性が高まります。また、個々のメンバーが高いモチベーションを保つことで、創造性や問題解決能力も向上し、組織全体のパフォーマンスが大幅に改善される可能性があります。
そのため、マネージャーは定期的に1on1ミーティングを実施したり、チーム内で成功事例を共有したりするなど、様々な手法を用いてメンバーのモチベーション維持に努めることが重要です。
関連記事:モチベーションとは?意味やアップさせる方法を分かりやすく解説
人材育成
組織を構成する人材を育成することも、マネジメントの重要な仕事の1つです。
人材育成は短期集中では完了しないので、中長期的な計画を立てて適正に合った仕事を与えながら、新たな知識を覚えたり、技術を習得したりできるようにサポートしていきます。
効果的な人材育成を行うためには、個々の社員の強みや弱み、キャリアプランを把握し、それに応じた育成プログラムを設計することが重要です。また、定期的な面談やフィードバックを通じて、成長の進捗を確認し、必要に応じて育成方針を調整することも大切です。
さらに、OJT(On-the-Job Training)やOff-JT(Off-the-Job Training)を適切に組み合わせることで、より効果的な人材育成を実現できます。例えば、実務経験を通じて学ぶOJTと、座学や研修などのOff-JTを併用することで、理論と実践のバランスの取れた成長を促すことができます。
人材育成が成功すると組織全体の底上げになり、組織の価値が向上するでしょう。長期的な視点で人材育成に取り組むことで、持続可能な組織の発展につながります。
関連記事:OJTとOFF-JTの違いは?人材育成におけるやり方やメリット
評価
人材育成を効果的に進めるには、定期的な評価(フィードバック)を行うことが重要です。
評価の内容によって、メンバーの業務に対するモチベーションは大きく変化します。適切な評価を行うことで、メンバーひとりひとりが自身の強みや課題を認識し、組織の中での役割や立ち位置をより明確に理解することができます。
評価は単なる点数付けではなく、メンバーの成長を促すための重要なコミュニケーションの機会でもあります。具体的な事例を挙げながら、良かった点や改善点を丁寧に説明することで、メンバーの自己理解を深め、今後の成長につながる気づきを与えることができます。
また、評価を通じて組織の目標や期待値を伝えることで、メンバーの行動指針を明確にし、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
定期的な評価と適切なフィードバックを行うことで、メンバーの成長を支援し、組織の目標達成に向けて効果的なマネジメントを実現することができるのです。
関連記事:フィードバックを効果的に行うには?オンラインやリモート、テレワーク時代の重要なポイント
マネジメントの種類
マネジメントは組織における役割によって、マネジメントの取り方が分類されます。組織の階層構造や責任範囲に応じて、主に3つの種類に分けられます。それぞれのマネジメント層は、組織全体の目標達成に向けて、異なる役割と責任を担っています。各層が効果的に機能し、相互に連携することで、組織全体のパフォーマンスが向上します。マネジメントの種類を理解することは、組織内での自身の立ち位置や期待される役割を把握する上で重要です。
トップマネジメント
トップマネジメントとは、組織の経営者層により行われるマネジメントのことで、会長や社長などの取締役会のメンバーや執行役員が該当します。
主に、自社の経営方針や事業戦略を検討し、組織の全体的な方向性を決定していくことが求められるマネジメントです。中長期的な視点から企業のビジョンを描き、それを実現するための戦略を立案します。
経営に関する総合的な意思決定と、成果に対する最終的な責任を負う役割も持っています。また、企業の対外的な代表として、ステークホルダーとの関係構築や維持も重要な任務となります。
トップマネジメントは、組織全体を俯瞰し、市場環境や競合他社の動向を分析しながら、自社の強みを最大限に活かせる経営判断を行うことが求められます。
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ミドルマネジメント
部長や課長、支店長などいわゆる「中間管理職」と呼ばれる層に求められる能力がミドルマネジメントです。
組織の方向性を決めるトップマネジメントのサポートをしながら、次に解説するローアーマネジメント層を直接指揮して、現場の意見を吸い上げる役割を持っています。
経営層と実際に業務を遂行するメンバーをつなぐパイプ役であり、重要なポジションとみなされます。ミドルマネジメントは、組織の中核として戦略の実行と日々の業務の管理を両立させる必要があります。彼らは上層部の方針を理解し、それを具体的な行動計画に落とし込む能力が求められます。同時に、現場の課題や改善点を適切に把握し、上層部に伝える責任も担っています。
ローアーマネジメント
ローアーマネジメントは係長や主任、チームリーダーなどが実際に業務を行うメンバーを指揮・統制し、上層部が描くビジョンの実現を目指していきます。現場に最も近い立場にあるため、日々の業務遂行や進捗管理、さらには個々のメンバーの能力開発にも大きな責任を負っています。
メンバーの意見を聞き、ミドル層やトップ層へ伝えることもローアーマネジメントの重要な役割の1つです。現場の声を適切に上層部へ伝えることで、組織全体の意思決定や方針策定に貢献することができます。また、メンバーのモチベーション維持や、チーム内の円滑なコミュニケーション促進も、ローアーマネジメントの重要な任務といえるでしょう。
マーケティングにおけるマネジメント
多くの企業が取り入れているマネジメントの1つにKPI(Key Performance Indicator)を利用したマネジメントである「KPIマネジメント」があります。KPIマネジメントは、特にマーケティング分野で重要な役割を果たしています。
マーケティングにおけるKPIマネジメントでは、顧客獲得や売上向上などの具体的な目標に対して、測定可能な指標を設定し、その達成度を管理します。これにより、マーケティング活動の効果を可視化し、迅速な改善や意思決定が可能となります。
例えば、ウェブサイトのコンバージョン率、顧客満足度、リピート率など、様々な指標を用いてマーケティング施策の成果を測定し、継続的な改善を図ることができます。
KPIマネジメントを効果的に活用することで、マーケティング戦略の最適化や投資対効果(ROI)の向上につながり、企業の競争力強化に寄与します。
KPIとは
KPIとはKey Performance Indicatorの略であり、日本語にすると「重要業績評価指標」という意味です。
簡単にいうと、目標の達成度合いの計測と評価をするための重要な指標です。
例えば、webマーケティングにおいてよく使われるKPIには下記のような項目があります。
· ページビュー数
· セッション数
· コンバージョン率
· 顧客単価
· リピート率
webサイトの目的によってKPIは異なりますが、各KPIを数値化・可視化して達成率を管理することをKPIマネジメントといいます。
関連記事
・KPIの意味とは?初心者にもわかる徹底解説と設定事例
・KPIとは?ビジネス成長に必須のKPIやKFSを正しく理解し「勝ち筋」を極める方法
KPIマネジメントを実践する前に覚えておきたい用語
KPIマネジメントを行ううえで関連する用語の意味を理解しておくとKPIマネジメントの理解が早く深まるので、頭に入れておきましょう。
KGI
KPIと似ているので混同しやすい用語のKGIはKey Goal Indicatorの略で、「重要目標達成指標」のことを示します。
売上高や利益率、成長率などのように組織が最終的に目指すゴールの数値のことで、KPIマネジメントを進める際にはまずKGIの設定をしてから、KPIを設定するという順になります。
関連記事:KPI・KGIの違い~目標達成に欠かせない2大項目の活用を考える
KSF
KSF(Key Success Factorの略)は「重要成功要因」という意味で、設定したKGIの実現に最も重要なプロセスのことです。
何をすれば、何があればKGIを達成できるのかということを具体的に考える必要があるので、KSFの設定では市場や顧客、自社のリソースなど外的・内的の両面から細かく分析することが求められます。
関連記事:KBF(重要購買決定要因)とは!KSFとの関係もあわせて解説!
KPIマネジメントの手順
KPIとは何かが理解できたら、KPIマネジメントの手順を見ていきます。
KGIを設定する
先程も述べたように、KGIは組織が目指す最終的なゴールなので曖昧な目標ではなく、具体的にいつまでにこれだけでの成果を出すという明確な目標を設定します。
この時、達成可能な目標を設定するということがポイントで、全メンバーが理解したうえで目標に向かって業務に取り組めるようにします。
無理難題な目標を設定してしまうと、マネジメント失敗の恐れもありますので注意してください。
KGIと現実のギャップを確認する
現状の水準での予測数値と設定したKGIには多くの場合ギャップがあるため、どの程度のギャップがあるのかを把握します。
ギャップがないということは、新しい施策などせず従来通りの業務を行っていれば、目標が達成できるということになります。
ギャップを埋める施策を考える
どの程度ギャップがあるのかを把握したら、「そのギャップは埋められるのか」「どのようにギャップを埋めるのか」を考えます。
KSFを設定する
KGIを達成するための数あるプロセスの中から最も重要なものを絞り込みます。
KPIを設定する
絞り込んだKSFをもとに、最終目標を達成するための指標となるKPIを設定します。
この時のポイントは、KPIを多く設定しないことです。
複数のKPIを設定していると、どの指標を重視すれば良いのか分からなくなり、組織の方向性のまとまりが欠けてしまいます。
まとめ
マネジメントの役割や種類について解説しました。
働き方改革や、メンバーひとりひとりの価値観の多様化、ビジネス市場の複雑化の中で、企業・組織が大きく発展していくためには、マネジメント力を高めていくことが必要です。
マネジメントのポイントは、明確な目標設定・スケジュール管理・適切な評価です。
目標の達成、部下の育成などマネジメントは組織の中の様々な場面で求められる能力なので、正しいマネジメントの実践方法を身に付け、組織の成長に貢献していきましょう。

