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マーケティングミックス(4P)とは?マーケティング実行戦略の基本を学ぶ

2023.7.6
読了まで約 7

マーケティングミックスとは、マーケティング戦略全体のなかで「実行戦略」と位置づけられます。構成要素である製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)およびプロモーション(Promotion)の頭文字をとって「4P」とも呼ばれます

今回は、マーケティングミックスとは何か、マーケティングミックスの構成要素、マーケティングミックスを活用するポイントについてご紹介します。

関連記事:4Pとは?マーケティングミックスとも呼ばれる戦略を解説

マーケティングミックス戦略の4つのステップ

マーケティング戦略の流れは以下のようになります。

1. 環境分析
2. 基本戦略(STP分析)
3. 実行戦略(マーケティングミックス)
4. 施策の実行と評価

1.環境分析

マーケティングの対象となる環境を、市場・競合・自社の観点から分析することにより、自社のマーケティング機会を発見します。

2.基本戦略(STP分析)

環境分析の結果を受け、さらに詳細に市場を分析することにより、自社ブランドが向かうべき方向を決め、基本戦略を策定します。基本戦略の策定は、次のプロセスを経て行われます。

● セグメンテーション(市場細分化)
●  ターゲティング(標的市場の決定)
●  ポジショニング

セグメンテーション(市場細分化)

市場の細分化(セグメンテーション)を行い、同じニーズを有する単位(セグメント)に顧客を分ける。

ターゲティング(標的市場の決定)

さまざまなセグメントのなかから、自社が事業を展開するにあたって標的とすべきセグメントを選択する。

ポジショニング

標的とすべきセグメントにおいて競合する製品やサービスに対し、自社の製品やサービスをどう差別化するのかを決定する。

マーケティング基本戦略は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)およびポジショニング(Positioning)の頭文字をとって「STP戦略」とも呼ばれます。

3.実行戦略(マーケティングミックス)

策定された基本戦略を受け、標的とするセグメントにどのようにアプローチしていくかを具体的に決定する実行戦略を策定します。

実行戦略は、複数の構成要素の最良な組み合わせ(ミックス)を考えていくことから「マーケティングミックス」と呼ばれます。

4.施策の実行と評価

マーケティングミックスにより策定された施策を実行し、その結果を評価します。思ったとおりに結果が出なかった場合には、うまくいっていない原因を分析し、マーケティング戦略の見直しを行う必要があります。

関連記事
第一回 マーケティングって何だろう?~レベルの異なるマーケティングの区分と解釈~
第2回 経営戦略とマーケティング戦略って何が違うの?〜良い戦略の要諦とは〜 花王・廣澤連載

構成要素の頭文字をとって「4P」とも呼ばれる

マーケティングミックスの構成要素は、
● 製品(Product)
● 価格(Price)
● 流通(Place)
● プロモーション(Promotion)

の4つとされるのが一般的です。このことから、マーケティングミックスは「4P」と呼ばれることもあります。

関連記事:
マーケティングはなぜ必要?企業の存在目的とマーケティングの重要性、意義、役割とは
マーケティングとは?基礎から重要ポイントまで初心者にも分かりやすく解説

マーケティングミックスの構成要素1:製品(Product)

マーケティングミックスの構成要素の第1は「製品」です。

ターゲットとするセグメントにどのような価値を提供するかを考えることにより「製品コンセプト」を策定し、それを実現するための技術や生産方法、パッケージ、サポートなどのサービスを練り上げていくことにより実際の「製品」として仕上げていきます。

製品戦略は、マーケティングミックスのなかでもっとも重要な構成要素です。

マーケティングミックスの構成要素2:価格(Price)

製品に対して顧客が支払う対価である「価格」は売上に直結します。価格戦略は、以下の観点から策定します。

● コスト
● 顧客の価値相場観
● ライバルとの比較
● ブランディング

コスト

商品の損益分岐点を、変動費と固定費の両方から把握することが必要。

顧客の価値相場観

提供する製品に対し、どの程度の価格を「相場」と顧客が思うかを把握する。価格相場観はアンケート調査により把握することもできる。

ライバルとの比較

標的とするセグメントに存在するライバルに対し、価格面でどう戦っていくかを考える。製品を市場に浸透させることを目的に思い切った低価格にすること、および開発費や設備投資費の回収を目的に比較的高めの価格をつけることの2つが選択肢。

ブランディング

ブランド戦略によっては、価格が高いことが「価値が高い」と感じさせる効果がある。

マーケティングミックスの構成要素3:流通(Place)

製品と顧客とを結ぶ経路(チャネル)を決める流通戦略は、以下の選択肢があります。

1. 広範囲にわたってチャネルを限定せずに流通させる
2. チャネルを限定して流通させる
3. 特定のチャネルに独占販売権を与える
4. 状況に応じて複数のチャネルを使い分ける

この中から適切なチャネルを決定してマーケティング施策を実行します。

マーケティングミックスの構成要素4:プロモーション(Promotion)

顧客や流通業者に対し、製品の存在や機能・価値などを効果的に伝えることでニーズを作り出していくプロモーション戦略は、以下の選択肢があります。

1. 戦略PRによりニーズ自体を新たに作る
2. オウンドメディアなどにより顧客の情報ニーズを満たす
3. マス広告によりブランドの知名度を高める
4. 工夫された広告により顧客の購入衝動を作り出す
5. セールスにより非計画購入の背中を押す

関連記事
プライシングとは?価格戦略の具体例と価格設定の決め方について
ダイナミックプライシングとは?基本的な仕組みと事例を解説

マーケティングミックス活用のポイント

マーケティングミックスを効果的に活用するためには、4Pのそれぞれの戦略を練り上げていくとともに、4Pの間での整合性を考えることも必要です。考慮すべき点は、次のようになるでしょう。

● 4Pのそれぞれの間で矛盾が生じていないか。
● 4Pのバランスは適当か。
● 4Pは相乗効果を生み出せるようになっているか。

関連記事:3C分析をマーケティングに活かすための方法と事例を徹底解説!

【成功事例】スターバックスの4P戦略

4Pを理解するためには、具体的な成功事例を見ていくことをおすすめします。そこで今回取り上げるのはアメリカのシアトル発のグローバル企業でありコーヒーチェーンとして世界的にも有名な「スターバックス」です。

スタバの4Pの肝となっているのが立地戦略「Main&Main」です。これは出店そのものがプロモーション戦略となっており、流行発信地や所得水準の高い人が集まるエリアに店舗が集中しています。以下ではスタバの4P戦略について解説します。

● スタバの製品(Product)
● スタバの価格(Price)
● スタバの流通・立地(Place)
● スタバのプロモーション(Promotion)

関連記事:スターバックスは4P分析で成功/マーケティングミックス、4P、4Cを事例で解説

スタバの製品(Product)

スタバを成功に導いた商品戦略について解説します。

● こだわり抜いたコーヒー
● サードプレイスという空間
● 従業員の接客

こだわり抜いたコーヒー

スタバのメイン商品であるコーヒーは、厳選されたアラビカ種のコーヒー豆のみを使用したこだわりの一杯です。

また、豆だけにとどまらず、コーヒーをいれるバリスタの高い技術自体も商品戦略の一つとなっています。スタバのサイトには、自社が誇る自慢のバリスタによるカスタマイズを特集したコンテンツも存在します。

スターバックスでは従業員を非常に大切にしており、こういった企業方針も含めて商品戦略に繋がっています。

参考リンク:[Make it yours #3] 最高のコーヒー体験を創るバリスタたち|スターバックス コーヒー ジャパン

サードプレイスという空間

スタバの商品戦略にはコーヒーのみならず、充実したサードプレイス、いわゆる「空間」を提供するというコンセプトもあります。

洗練された心地よい極上の空間の中で、顧客に満足いくまでコーヒーを楽しんでもらいたいという思いから、店舗デザインや内装、椅子、流れる音楽にまでこだわっています。

スターバックスでのみ味わえる体験は「スタバ体験」などと呼ばれ、心地の良い空間を提供することも、ひとつの商品戦略として成功しています。

関連記事:スターバックスやリッツ・カールトンが盛況な理由/CXでリピーター獲得のビジネス戦略

従業員の接客

先述した「スタバ体験」の中には、従業員による手厚い接客も含まれています。接客も商品だと捉えるスタバでは、各顧客に対して従業員が直接サービスを行う方針をとっています。

新任スタッフには70時間もの基礎研修を実施し、自発的に良いサービスを提供することの大切さを従業員に教えます。

スタバにはチェーン店に通常あるはずの「接客マニュアル」が存在せず、接客は付加価値業務として捉えているのです。こういったホスピタリティ精神もスターバックスの商品戦略のひとつと言えます。

関連記事:マーケティングに重要な「ユーザビリティ」とは? 定義やポイントを徹底解説

スタバの価格(Price)

スタバのコーヒーは、ほかのコーヒーチェーン店の商品価格に比べて高めに設定されています。これはいわゆる高価格戦略と呼ばれるもので、メインの商品であるコーヒーの価格を高めに設定する代わりに、その価格に見合う質の高いサービスを提供するというマーケティング手法です。

スタバは先述した通り、コーヒーの品質はもとより、そのコーヒーを楽しむための極上の空間の提供や、従業員の上質な接客を付加価値としており、付随するサービスの提供によって価格を高めに設定しています。

このスタバならではの体験を楽しむために、顧客は多少高くてもスタバに訪れるようになるのです。

スタバの流通・立地(Place)

スタバでは出店する立地についても、綿密な戦略を立案した上で出店を行っています。いわゆる立地戦略と言われるもので、出店計画の際には、地理的な特性やアクセス面、地域の人口構成や往来する人の傾向などを入念に調査します。

● スタバは一等地に狙いを定めている
● 地方に出店する場合も基本的には同じ立地戦略
● 客席回転率を重視

スタバの出店は一等地に狙いを定めている

スタバが日本に初めて上陸して最初に出店したのは東京の銀座です。この思い切った出店計画を実行したことにより、スタバは高級なイメージを持つことに成功しました。

現在においても「高品質なコーヒーを極上の空間で味わえる高級カフェ」というブランディングはマーケティング戦略の要となっています。

関連記事:ブランディングの本当の意味を知る!正確に把握して始めよう!

地方に出店する場合も同様の立地戦略を実施

東京だけでなく地方に出店する場合も、基本的に戦略は同様です。駅チカをはじめ、人の往来が多い中心街や市街地など、アクセスがよい好立地な場所を選んで出店しています。

このような立地戦略をスタバでは「Main&Main」といい、高級路線のイメージを保持しています。庶民的なエリアには出店せず、顧客の質と数のみを重視しているのです。

客席回転率を重視

スタバが好立地を選択する理由のひとつに「客席回転率」があります。洗練された心地のいい空間を提供することをモットーとしていながらも、同時に客席回転率をも戦略に取り入れているのです。

あまりに長居をされては困るが、顧客には満足して帰ってもらいたいという微妙な線引きから、人口量に戦略の重きを置いているのもスタバ戦略の特徴と言えます。同時にテイクアウトも大きな収益源となっており、こういった事情からも、都市部をはじめとした中心街や市街地に出店する理由となっています。

スタバのプロモーション(Promotion)

スタバのプロモーション戦略の中では、テレビCMなどに広告を出稿しないこともよく知られています。

テレビCMだけでなく、マスメディアにおける広告活動や、クーポンの発行のような王道的な広告戦略もまったく行っていません。

スタバのプロモーション戦略には以下のようなものがあります。

● 店舗そのものが広告
● 店内における「スタバ体験」が広告
● SNSを活用した広告戦略

関連記事:プロモーションの定義とは?戦略を練る時に重要な7つの手段を解説

店舗そのものが広告

スタバは1996年に東京の銀座で1号店を出店して以来、2023年時点で国内に1700店以上を出店しています。中でも店舗数がもっとも多いのは東京で、391店舗とダントツです。このような偏りから「Main&Main」によって高級路線を保持している側面が見て取れます。

つまり、国内の一等地に出店している店舗そのものが広告の役割を担っているということです。

本場アメリカのスターバックスでマーケティングを担当していたジョン・ムーア氏も「出店が最大の広告である」語っており、スタバが依然強いブランド力を保持できている要因のひとつともなっています。

店内における「スタバ体験」が広告

スタバは設立当時、広告費を多く捻出できませんでした。そのような事情が広告費にコストをかけない独創性を生み出し、「店内におけるエクスペリエンス(体験)に還元する」という発想につながったとスターバックスコーヒーインターナショナルの元CEOハワード・ビーハー氏は語っています。

つまり「スタバ体験」そのものが広告だということです。

SNSを活用した広告戦略

スタバはマスメディアにおける広告出稿をほとんど行わない代わりに、SNS広告には注力をしています。TwitterやFacebook、Instagram、LINEなどをフルに活用し、従業員と顧客の架け橋として利用しています。

スタバ公式のTwitterのフォロワーは700万超え、Instagramのフォロワーは350万人超えなど(2023年6月時点)非常に多くのタッチポイントを有しています。

こういったSNSをフル活用したプロモーション戦略も功を奏しているといえるでしょう。

関連記事:SNSマーケティングとは?成功事例や始め方のポイントを解説

混同しやすい4C・4P分析との違い

4P分析は、製品、価格、流通、販促の頭文字を取った略称です。

一方の4C分析とは、以下の項目の頭文字を取ったものです。

● 顧客価値(Customer Value)
● 経費(Cost)
● 顧客利便性(Convenience)
● コミュニケーション(Communication)

4P分析と4C分析の大きな違いは「企業目線からの分析」か「顧客目線からの分析か」です。

企業目線からマーケティング戦略を考えるときに、もっとも優先するのは自社の利益です。しかし顧客目線からマーケティングを考えた場合、企業と顧客では利益が相反してしまいます。

こういった企業目線と顧客目線の双方から分析を行い、調和をとることでより良い製品やサービスを提供できるでしょう。

4P分析と4C分析の違いについては、下記で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事: 4P分析と4C分析の違いとは?それぞれの手法と具体例を解説

マーケティングミックス(4P)とは?マーケティング実行戦略の基本を学ぶ まとめ

マーケティングミックスとは、マーケティングにおける実行戦略のことで、構成要素である製品、価格、流通、プロモーションの頭文字を取って「4P」とも呼ばれます。マーケティングミックスでは、4Pの間の整合性を考えることが重要です。

また、顧客目線で分析を行う4C分析も合わせて行うと、より良い製品やサービス提供を実現することができるでしょう。

4P戦略の成功事例として、今回の記事ではスターバックスを取り上げましたので、ぜひ参考にして、自社の4P戦略に役立ててください。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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