「エンティティSEOという言葉を聞いたことはあるけれど、具体的に何を指すのかよくわからない」
そう感じている方も多いのではないでしょうか。検索アルゴリズムの進化により、従来のキーワード中心の対策では、なかなか成果につながらなくなってきたと感じているマーケティング担当者も少なくありません。
実は、Googleは検索キーワードの文字列だけでなく、その背後にある意味や文脈を理解しようとしています。その鍵となるのが「エンティティ(entity)」という考え方です。エンティティとは、検索エンジンが情報を意味ベースで認識・評価するための単位のようなものであり、SEO対策においてますます重要度を増しています。
本記事では、SEOにおけるエンティティの意味から、キーワードとの違い、Googleに認識させる方法、そしてSEOの重要な指標である「E-E-A-T」との関係性や実践ポイントまで、体系的にわかりやすく解説します。
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目次
SEOにおけるエンティティとは
SEOにおけるエンティティとは、検索エンジンが「これは何のことか」をはっきり理解できる、意味を持ったモノやコトのことです。わかりやすく言えば、言葉の中身をきちんと認識できる対象を示します。
「富士山」「東京スカイツリー」「サッカー」などは、それぞれが固有の意味や背景を持っており、検索エンジンはそれを独立した実体として理解できます。これがエンティティです。
つまり、単なる文字の並びではなく、何を意味するかを含んだ情報単位のことだと考えてください。
検索エンジンは、ナレッジグラフ(知識データベース)という巨大な知識データベースを持っており、エンティティ同士の関係性や属性をそこに登録しています。たとえば「孫正義(そん まさよし)」という名前を見たときに、Googleはそれが「人物」であり、「ソフトバンクの創業者」で「日本を代表する実業家」といった情報を同時に理解できるのです。
エンティティは検索エンジンにとっての意味のかたまりであり、SEOにおいては、ページの内容をより正確に理解してもらうためのポイントとなります。検索キーワードにただ合わせるのではなく、「このページが誰の、何についての、どんな情報なのか」を明確に示すことが、エンティティSEOの本質なのです。
エンティティとキーワードの違い
キーワードとは、「採用管理システム 比較」や「MAツール とは」のように、ユーザーが検索欄に入力する文字列そのものを指します。
対してエンティティは、検索エンジンがその言葉から読み取る意味のある実体や概念のことです。「採用管理システム」というキーワードは、HRテック領域のソフトウェア、人事部門が利用する業務効率化ツール、といったエンティティに結びつきます。
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キーワードは「表記ゆれ」や言い回しの違いに敏感であるため、「採用管理システム」と「人材採用ツール」は別キーワードとして扱われます。しかし、検索エンジンがその背後にあるエンティティが同じであると判断すれば、同等の意味を持つ情報として処理されるのです。
この違いを考慮すると、キーワードを単に詰め込むだけでは、検索エンジンが求める意味の整合性や文脈性に欠け、評価されにくくなるとわかります。
一方で、エンティティを意識して「このページは何についての情報を伝えているのか」を明確に示すことで、検索エンジンの理解度が高まり、コンテンツ全体の評価につながります。
項目 | キーワード | エンティティ |
定義 | ユーザーが検索欄に入力する文字列そのもの | 検索エンジンがキーワードから理解する意味のある実体や概念 |
例 | 「採用管理システム 比較」「MAツール とは」 | 「HRテック領域のソフトウェア」「人事部門が利用する業務効率化ツール」 |
SEOでの役割 | 検索クエリと一致させるための基本要素 | 検索エンジンにページ内容の文脈や意味を伝える情報単位 |
コンテンツへの影響 | キーワードを詰め込みすぎると意味の整合性が失われやすい | エンティティを意識して主題を明確にすると検索エンジンの理解度が高まり、評価が向上する |
エンティティにはさまざまな種類がある!システム管理とゲームにおけるエンティティとは
エンティティという言葉は、SEOだけでなく、システム管理やゲーム開発の分野でもよく使われます。ただし、それぞれの文脈で指している対象や役割には違いがあるため、混同しないよう理解しておくことが大切です。
ここでは、2つの分野におけるエンティティの意味と役割について見ていきましょう。
分野 | エンティティの意味 | 例 |
SEO | 検索エンジンが意味や文脈を理解するための情報の単位 | 富士山、東京スカイツリー、サッカー |
システム管理 | データベースで扱う情報の最小単位 | 社員、部署、勤怠記録 |
ゲーム開発 | ゲーム内に存在するすべてのオブジェクト | キャラクター、アイテム、障害物、背景 |
システム管理におけるエンティティ
システム管理や情報システムの世界でエンティティとは、データをまとめるための最小のまとまりを指します。身近でたとえるなら、会社の名簿を作るときに「社員」「部署」「勤怠記録」といった情報の箱を用意するイメージです。
エンティティには必ずアトリビュート(属性)と呼ばれる情報が紐付きます。社員というエンティティのアトリビュートは、名前、社員番号、所属部署などです。そして、エンティティ同士はリレーション(関係)で結びつきます。
たとえば、社員エンティティと部署エンティティは、誰がどの部署に所属しているかという関係性でつながります。こうして全体のデータ構造ができあがり、システムが情報を整理したり検索したりできるようになる仕組みです。
適切に定義されたエンティティがあれば、将来システムを拡張するときやデータを活用するときもスムーズに進められます。
マイクラなどのゲームにおけるエンティティ
Minecraft(マインクラフト・マイクラ)などを例とした、ゲームの世界におけるエンティティとは、ゲームの中に存在する「すべてのモノ」を指します。
プレイヤーが操作するキャラクター、敵キャラ、宝箱や武器などのアイテム、壁や木などの障害物、さらには背景の建物や風景まで、ゲーム画面に登場するものはすべてエンティティと呼ばれます。
ゲームエンジン(ゲームを動かす仕組み)では、このエンティティに「どんな見た目か」「どのように動くか」「ぶつかったらどうなるか」といった情報を持たせます。具体的には、RPGで火の魔法を撃ったとき、敵に当たるとダメージが出るのも、魔法というエンティティと敵というエンティティのやり取りが設定されているためです。
つまり、ゲーム内のイベントはエンティティ同士の関係で成り立っているのです。
E-E-A-Tとエンティティの関係性
「SEOにおけるエンティティ」に話を戻します。
現在のSEO対策においては、Googleが提唱するE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が重要なランキング要素です。
参考リンク:有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 | Google 検索セントラル | Documentation | Google for Developers
E-E-A-Tとは、簡単に言えば「コンテンツの質と信頼性を測る4つの指標」です。「リリースしているのは誰・どの団体か」「リリース元の個人や企業・組織がどれだけ信用できるのか」に加え「語られているテーマに関する深い経験を持っているか(経験)」「業界内での専門的な知見があるか(専門性)」などを総合的に評価します。特に金融や健康に関するYMYL(Your Money or Your Life)の領域や、BtoBのような専門性が重視される分野では、E-E-A-Tに基づかないWebページは上位表示がされにくくなっています。
そういった場面ではエンティティが役に立ちます。エンティティを使えば、検索エンジンに「このページは誰・どの組織が、何について、どのような情報を発信しているのか」を明確に示せるためです。
たとえば、執筆者が「●●株式会社の代表」といった人物や組織のエンティティと結びついていれば、その企業の実績や専門性、受賞歴などがGoogleの知識データベースと紐付き、専門性(Expertise)や権威性(Authoritativeness)がGoogleに正しく評価されます。
また、「製品名」や「サービス名」といったエンティティを詳細に記述し、それに対する顧客のレビューや導入事例を示すことは、実体験(Experience)を客観的に証明することにつながります。
さらに、大学や官公庁といった信頼性の高い組織エンティティを出典として明確に示すことで、そのページ自体の信頼性(Trustworthiness)を客観的に裏付けられます。
企業情報が不足していたり、出典があいまいだったりすると、Googleはそのページの信頼性を正しく判断できません。だからこそ、E-E-A-Tを意識したコンテンツ作りでは、エンティティを適切に組み込み、「信用できる情報が、信用できる組織によって公開されている」ことを検索エンジンに示すことが欠かせないのです。
▼以下の記事では、E-E-A-Tの前身となる、E-A-T(「Experience / 経験」が追加される以前の基準)について解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
E-A-Tとは?Googleがseo対策で評価する基準を解説!
エンティティが認識されているかの確認方法
ここでは、自社のエンティティが正しく登録・認識されているかを確認するシンプルな方法を紹介します。それはGoogleで自社名やブランド名を「指名検索」してみることです。
検索結果の右側にプロフィールのような枠(ナレッジパネル)が表示される場合、それはGoogleがあなたの会社やブランドを「情報のまとまり=エンティティ」として認識している証拠です。
所在地、代表者名、公式サイトへのリンクなどが表示されていれば、正しく理解されていると判断できます。
ただし、ナレッジパネルが表示されないからといって、必ずしも認識されていないとは限りません。Web上の情報量が不足し、情報が整理されていない場合、パネルは出にくくなります。
加えて、構造化データ(Schema.org)を活用し、各ページに「これは会社の情報」「これは製品の情報」と明示的にマークアップ(HTMLコーディングで意味付けをする作業)することで、サーチコンソールなどを通じてGoogleによる理解度を確認できます。
構造化データを適切に設定すれば、ナレッジパネルやリッチリザルト(検索結果で目立つ形で表示される情報)への反映も期待できます。
エンティティSEOのポイント
エンティティSEOのポイントは、検索エンジンに正確に意味を伝えることです。そのためには、コンテンツの文脈設計・表現方法・構造の整備が欠かせません。以下では、エンティティSEOを実践する上で押さえておきたいポイントを解説します。
曖昧な表現を避ける
エンティティSEOでは、検索エンジンに伝えたい内容を明確に表現することが重要です。
「それ」「これ」「あれ」といった指示語や、「多くの企業」「ある調査によると」といった曖昧な言い回しは避けましょう。
たとえば、「このサービスは〜」と書くのではなく、「クラウド型の人事管理システムであるAは〜」のように、具体的な固有の名称や属性を明示することで、エンティティとして認識されやすくなります。
また、抽象的な名詞を使う際は、定義や具体例を添えて補足することが望まれます。とくに専門用語が多くなりがちなBtoB分野では、用語の定義づけがそのままエンティティの認識精度に影響します。
検索エンジンに意味が正確に伝わる表現を意識することが、結果として検索評価にもつながるのです。
文脈をはっきりさせる
検索エンジンは、文脈全体を通してコンテンツのテーマや関連性を判断しています。そのため、エンティティがどのような関係性を持ち、何を伝えたいのかを文章の中で明確にしなければいけません。
たとえば、「セールスフォース(Salesforce)」というエンティティが登場した際、企業名だけでなく「世界的なCRMプラットフォームを提供」「SaaS市場において圧倒的なブランド力を持つ」などといった説明を併記することで、検索エンジンはその文脈を正確に把握できます。
文脈をはっきりと示すことで、検索意図とのマッチ率も高まり、評価される可能性が高まるでしょう。
構造化データを活用する
文章だけでなく、Webページを構成するHTML上でもエンティティ情報を明示することが、検索エンジンの理解を促進します。そのための手法が構造化データの活用です。
構造化データを使えば、検索エンジンに対して「このページは企業についての紹介」「この情報は製品スペック」「この人物は執筆者」など、情報の意味を正確に伝えられます。
Organization(企業・組織)やProduct(製品)、Person(人物)といった、情報の種類を定義したルール(スキーマ)を活用し、自社名やサービス名、著者情報をマークアップ(HTMLコーディングで意味付けをする作業)することで、ナレッジパネルやリッチリザルト(検索結果で目立つ形で表示される情報)として検索結果に表示される可能性も高まるでしょう。
権威性のある情報源と結びつける
エンティティの認識を強化するには、「どこから引用されている情報か」「どんな外部リンクとつながっているか」も大切な要素です。Googleは、信頼性のあるドメイン(例:政府機関のgo.jp、大学・教育機関のac.jp、その他業界団体、有名メディアなど)と関連づいた情報を、より価値の高いコンテンツとして評価する傾向があります。
一例を挙げると、「総務省によれば〜」といった形で権威ある情報を引用し、適切なリンクを添えることで、文中のエンティティも信頼性が高いと判断されやすくなります。また、自社が他の信頼性の高いサイトからリンクされている場合も、ナレッジグラフに登録される可能性が高まります。
このように、エンティティ単体の記述だけでなく、それが「どのような文脈に置かれているか」「どのような外部と結びついているか」を整えることで、検索エンジンからの評価が向上します。
▼外部サイトから自社サイトがリンクされる状況、つまり「被リンク」については以下の関連記事で解説しています。
「被リンク」とは?SEO初心者でもわかる本質と今日から始める獲得テクニック
エンティティに関するよくある質問
エンティティの意味は文脈によって少しずつ異なります。そこで一問一答の形で、シンプルに整理しました。
SEOにおけるエンティティとは何ですか?
検索エンジンが「これは何を指しているか」を理解するための情報のまとまりです。文字列のキーワードではなく、意味や文脈を持った実体として扱われます。
情報システムとゲームにおけるエンティティとは何ですか?
情報システムでは、社員や部署といった「データベース上の情報の単位」を指します。ゲームでは、キャラクターやアイテムなど「ゲーム内に存在するすべてのオブジェクト」を意味します。
SEOでエンティティを強化するポイントは?
曖昧な表現を避けて具体的に書くこと、文脈を明確にすること、構造化データを活用すること、信頼できる情報源と結びつけることが重要です。
エンティティへの理解を深めて、一歩上のSEO対策をしよう
昨今の検索エンジンは、キーワード単体ではなく、その背後にある概念や信頼性、関係性をもとにWebページの価値を評価するようになっています。「エンティティ」という視点を取り入れることで「どんなテーマか」「誰・どの企業の発信か」「信頼性はあるのか」といったコンテンツの背景を検索エンジンに正しく伝えられます。
これまで「SEO=キーワード対策」と考えていた方も、この機会にエンティティの視点を加え、情報の正確性と網羅性を高めてみてください。正確に意図が伝わるコンテンツは、自然と評価され、結果としてSEOの成果にもつながります。
SEOで評価を高めることは、コンテンツを「検索エンジンに見つけてもらう」ための取り組みです。しかし、最終的な成果を得るためには、「見つけてもらった後、誰に届けるか」というマーケティング戦略が同様に重要となります。
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