営業やマーケティング活動で失注した顧客を、そのまま放置してはいないでしょうか。実は、人事が送る不採用通知、いわゆる「お祈りメール」には、将来のリスク管理と再獲得を見据えた高度な戦略が隠されています。
この記事では、丁寧な失注対応がなぜ重要なのかを紐解き、失注リストを「将来の資産」に変えるタレントプール思考と、CPA高騰時代に不可欠な「次のご縁」を生む再アプローチ手法について解説していきます。
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目次
戦略的な人事が送る「お祈りメール」はなぜ丁寧なのか? 2つの理由
就職活動や転職活動において、不採用通知の代名詞として使われる「お祈りメール」。
多くの求職者が落胆する瞬間ですが、私たちマーケターはこのメールに隠された企業の戦略的意図を見逃してはいけません。定型文のように見えるあの一通には、実は企業のブランドを守り、未来の利益を創出するための高度な計算が働いています。
この章では、なぜ人事が採用しない相手に対してこれほどまでに丁寧なコミュニケーションを徹底するのか、その背景にある2つの重要な理由を解説していきます。
ブランドリスク管理: 不誠実な対応は、SNS時代の致命傷になる
一つ目の理由は、企業のリスクマネジメントです。かつて採用活動は閉鎖された環境で行われていましたが、SNSが普及した現代において、候補者への対応は瞬く間に第三者へ共有されるようになりました。
もし企業が不採用者に対してぞんざいな態度を取ったり、連絡すらしなかったりすれば、その事実はSNSや求人系の口コミサイトなどですぐに拡散されてしまいます。
「面接官の態度が悪かった」「連絡がこなくて不誠実だった」といったネガティブな評判は、採用ブランディングを傷つけるだけでなく、企業のサービスや商品そのもののブランドイメージを毀損するリスクをはらんでいます。
とくにBtoBビジネスにおいては、信頼性が取引の前提となるため、こうした悪評は致命傷になりかねません。人事が送る丁寧なお祈りメールは、候補者の心情に配慮することで、こうしたレピュテーションリスク(評判リスク)を最小限に抑えるための防衛策として機能しているのです。
将来の資産化: 今日の不採用者は、明日の顧客or数年後の候補
二つ目の理由は、中長期的な視点での「資産化」です。優秀な人事担当者は、不採用者を単なる「縁がなかった人」として切り捨てることはしません。なぜなら、今日の不採用者が、明日は自社サービスの顧客になる可能性があるからです。
BtoC企業ではとくにこの傾向が顕著ですが、BtoB企業であっても、その候補者が他社で決裁権を持つポジションに就いた際、過去の面接での対応が良ければ商談の機会が生まれるかもしれません。
また、現時点ではスキルマッチしなかったとしても、数年後にスキルを身につけて再応募してくる可能性もあります。
このように、不採用者を「将来の潜在顧客」や「未来の候補者」として捉え、良好な関係を維持しておくことは、将来的な採用コストや獲得コストを下げるための投資といえます。
丁寧なお祈りメールは、関係を完全に断ち切るものではなく、いつか訪れるかもしれない「次のご縁」をつなぐための架け橋なのです。
あなたは失注した顧客に「感謝のメール」を送っていますか?
さて、ここで視点をマーケティングの現場に戻してみましょう。人事担当者がこれほどまでに「選ばなかった相手」に対して丁寧なフォローを行っている一方で、私たちマーケターや営業担当者はどうでしょうか。商談で失注したリードや、条件が合わなかった見込み顧客に対して、感謝の気持ちを伝える丁寧なメールを送れているでしょうか。
多くの場合、失注した瞬間に「追うべき対象」から外し、連絡を絶ってしまうケースが少なくありません。しかし、人事の事例から学べるのは、「今すぐ成果にならない相手」への対応こそが、企業の品格を決定づけ、長期的なLTV(顧客生涯価値)を左右するという事実です。失注リードを単なる「失敗」として処理するのではなく、将来の資産として管理していく発想こそが、これからのBtoBマーケティングに求められています。
失注リストを捨てず「タレントプール」を作ろう
営業活動において、失注した案件や商談に至らなかったリード情報は、そのままCRM(顧客関係管理)ツールの奥底に眠らせてしまいがちです。
この章では、人事採用の知恵をマーケティングに応用し、失注リストを「タレントプール」として再定義する方法について解説していきます。
人事が実践する「タレントプール(優秀な候補者のストック)」の仕組み
近年、採用難易度が高まる中で、人事領域では「タレントプール」という考え方が定着しつつあります。これは、一度は採用に至らなかった候補者や、今は転職のタイミングではない優秀な人材と継続的に接点を持ち続け、自社のデータベースにプール(蓄積)しておく仕組みのことです。
通常、不採用通知(いわゆるお祈りメール)を送れば、企業と候補者の関係はそこで終了します。しかし、タレントプール思考を持つ企業は違います。「今回はご縁がなかった」としても、数年後にスキルアップして戻ってくる可能性や、他社で経験を積んだ後に即戦力として採用できる可能性を見据えているのです。
これをBtoBマーケティングに置き換えてみましょう。一度失注した顧客は、二度と戻ってこない存在ではありません。人事における「将来の有力候補」と同様に、マーケティングにおいても「将来の優良顧客」になり得る存在です。
失注リードを単なる「不要なデータ」として扱うのではなく、将来の「資産」としてプールしておくことが、リード獲得競争が激化する現代において極めて重要な戦略となります。
マーケティングにおける「失注理由別」のプール設計
タレントプールをマーケティングに応用する際、すべての失注リードをひとまとめにしてはいけません。再アプローチの効果を最大化するためには、人事採用で候補者のスキルや状況ごとにタグ付けを行うように、失注理由に応じたセグメント設計が必要です。
具体的には、以下のような分類でプールを設計し、それぞれの温度感に合わせたアプローチを準備することをおすすめします。
1. 「時期尚早・予算不足」による失注層
サービス自体には魅力を感じていたものの、導入時期や予算の折り合いがつかなかった層です。この層は、最も復活の可能性が高い「ホットな予備軍」と言えます。ここでは、企業の決算期や次年度の予算策定のタイミングに合わせて、改めて状況伺いの連絡を入れる仕組みを整えておきましょう。
関連資料:マーケと営業の対立にサヨナラ!商談化率を劇的に上げる「ホットリード」の共通定義と引き継ぎガイドブック
2. 「機能不足」による失注層
「〇〇の機能がないから」という理由で失注した層は、プロダクトの進化とともに顧客化できる可能性があります。新機能のリリースやアップデート情報は、全配信のメルマガに埋もれさせるのではなく、このセグメントに対して個別に「ご要望いただいていた機能が実装されました」と伝えることが効果的です。
3. 「競合他社」に決まった層
競合他社を選んだ顧客も、永久にそのサービスを使い続けるとは限りません。契約更新のタイミングや、競合サービスの運用に課題が出てくる時期を見計らってアプローチします。ここでは、「他社サービスと比較してどうだったか」というヒアリングを名目に接点を持ち、リプレイスの機会を虎視眈々と狙う長期的な視点が求められます。
再アプローチの極意は「アルムナイ」にあり
人事領域で近年注目を集めている「アルムナイ(alumni)」という言葉をご存じでしょうか。もともとは「卒業生・同窓生」を意味する言葉ですが、ビジネスシーンでは「企業の退職者」を指す用語として定着しつつあります。

かつて、退職者は「裏切り者」と見なされがちでしたが、現在では「社外で経験を積んだ貴重な人材」として、再び雇用する「アルムナイ採用」が活発化しています。この「一度離れた相手を、再び重要なパートナーとして迎え入れる」という思考法こそ、マーケターが失注リードと向き合う際に最も参考にすべき姿勢です。
「出戻り」を歓迎する人事トレンド
人材獲得競争が激化する中、多くの企業が退職者の再雇用(カムバック採用)に力を入れ始めています。マイナビの調査によると、過去に退職した会社に戻りたいと思ったことがある人は約3人に1人に上り、企業側も即戦力としての期待を寄せています。
参考資料:マイナビ、「中途採用・転職活動の定点調査(2024年4月-6月)」(PR TIMES)
このトレンドは、BtoBマーケティングにおける「失注リード」の価値再評価と完全にリンクします。一度商談まで進んだ失注客は、自社のサービス内容や強みをすでに理解しており、ゼロから説明が必要な新規リードよりも、実は「最も受注に近い存在」である可能性が高いのです。
「他社に決まったから」「予算が合わなかったから」とリストの奥底に眠らせておくのではなく、アルムナイ採用のように「いつでも戻ってこられる関係性」を維持し続けることが、効率的な案件創出の鍵となります。
失注客への再アプローチは、「売り込み」ではなく「近況伺い」
では、具体的にどのように再アプローチすればよいのでしょうか。ここで重要なのが、人事担当者がアルムナイに対して行うコミュニケーションの温度感です。彼らは決して「うちに戻ってこい」と強引に説得したりはしません。「最近どうしていますか?」「新しい環境はどうですか?」といった、相手を気遣う対話から始めます。
マーケターも同様に、失注後の連絡でいきなり「キャンペーンのご案内」や「機能追加のお知らせ」を送りつけるのは避けるべきです。これらは相手にとって「売り込み」と受け取られ、警戒心を抱かせる原因になります。
再アプローチの目的は、直近の受注ではなく、相手の状況変化(BANT条件の更新)をキャッチすることにあります。「その後、導入されたシステムの使い心地はいかがですか?」「新年度の体制変更で、新たな課題は出ていませんか?」といった、相手のビジネスに寄り添う「近況伺い」のスタンスを徹底しましょう。
カスタマーサクセス的な視点での連絡が、信頼を回復
失注客との関係を再構築する最強の武器は、「Giver(与える人)」の精神です。自社の利益(受注)を優先するのではなく、相手の成功を願う「カスタマーサクセス」のような視点で情報提供を行いましょう。
例えば、競合他社の製品を導入した顧客に対して、「他社製品の活用に役立つ業界トレンドレポート」や「業務効率化の一般的なノウハウ」を提供できればどうでしょうか。相手は「失注したのに、なんて親切な会社なんだ」と驚き、貴社に対して強い信頼を抱くはずです。
この信頼の積み重ねが、将来的に相手が乗り換えを検討する際、真っ先に相談される「第一想起」のポジションを確立させます。目先の数字を追うハンターではなく、長期的な関係を育むファーマーとしての振る舞いが、結果としてLTVの最大化につながるのです。
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まとめ:失注リードの「資産化」はCPA高騰時代の生存戦略
Web広告のCPA(顧客獲得単価)が高騰し続ける昨今、新規リードの獲得だけに頼る手法は限界を迎えつつあります。一度失注した顧客との関係を断ち切らず、長期的な資産として関係性を維持し続けることこそが、これからの時代を生き抜くための確実な生存戦略となるでしょう。
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