本記事では、現代マーケティング戦略の基盤となる7Pと9Pのフレームワークについて、基本の4Pからの進化の歴史を掘り下げていきます。次に7P・9Pそれぞれの構成要素を一つずつ丁寧に解説し、両者の決定的な違いと企業の状況に応じた最適な使い分け方を具体的にガイドします。自社に合ったフレームワークを選び、正しく活用することで、マーケティング成果を飛躍させるための実践的な知見が得られます。
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目次
マーケティングミックスとは
この章では、現代マーケティング戦略の根幹を成す「マーケティングミックス」という概念が、時代やビジネス環境の変化に合わせ、どのように進化を遂げてきたのかを解説します。マーケティングミックスとは、狙う市場・顧客(STP)で成果を出すために、製品・価格・チャネル・プロモーションなどの要素をどう組み合わせるかを設計するフレームワークです。
企業のマーケティング担当者が実行可能な施策を検討する上で、これらのフレームワークの変遷を理解することは、より効果的な戦略立案の第一歩となるでしょう。
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全ての土台となる「4P」とは
マーケティングミックスの代表的な枠組みが4Pで、サービスや体験まで含めて拡張したものが7P、さらに細かく分解したものが9Pなどのバリエーションとなります。4Pは最も古典的で基本的なフレームワークです。これは1960年代にアメリカのマーケティング学者エドモンド・ジェローム・マッカーシーによって提唱されました。 主に自動車や家電といった有形の「モノ」を製造・販売する企業を想定しており、企業(売り手)がコントロール可能な要素を整理するための考え方として、広く普及しました。
| 要素 | 概要 |
|---|---|
| Product(製品) | 顧客に提供する製品やサービスの品質、デザイン、ブランドなど。 |
| Price(価格) | 製品やサービスの価格、割引、支払い条件など。 |
| Place(流通) | 製品を顧客に届けるための流通経路、販売場所、在庫管理など。 |
| Promotion(販促) | 広告宣伝、販売促進活動、広報活動など。 |
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サービス業の台頭で生まれた「7P」
1980年代に入ると、経済の中心が製造業からサービス業へとシフトし、従来の4Pだけでは捉えきれない要素が重要視されるようになりました。形のない「サービス」の品質を伝え、顧客満足度を高めるためには、新たな視点が必要となったのです。そこで、4Pに3つの要素を加え、拡張したフレームワークが「7P」です。 これにより、顧客体験全体を設計するためのより包括的な分析が可能になりました。
| 追加要素 | 概要 |
|---|---|
| People(人) | サービスを提供する従業員や、その場にいる他の顧客など、人的要素全般。 |
| Process(プロセス) | サービスが顧客に提供されるまでの一連の流れや仕組み。 |
| Physical Evidence(物的証拠) | 店舗の内装、ウェブサイトのデザイン、スタッフの制服など、サービスの品質を想起させる物理的な要素。 |
現代の複雑な市場に対応する「9P」
7Pからさらに時代が進み、企業の社会的責任(CSR)や公共との関係性がビジネスの成否を大きく左右するようになりました。単に良い製品やサービスを提供するだけでなく、企業を取り巻くより広範な環境への配慮が求められるようになったのです。そこで、フィリップ・コトラーらが提唱したのが、7Pにさらに2つの要素を加えた「9P」です。 このフレームワークは、企業経営の視点から外部環境や社会との関係性までを考慮に入れることで、大企業やグローバルに事業を展開する企業にとって、より戦略的な意思決定を助けるものとなります。
| 追加要素 | 概要 |
|---|---|
| Public Relations(広報) | 世論やメディアとの良好な関係を構築し、企業の評判を高める活動。 |
| Political Power(政治力) | 業界団体への参加やロビー活動などを通じて、自社に有利な事業環境を形成する働きかけ。 |
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マーケティングミックスの進化 4Pから7Pそして9Pへ
この章では、従来の4Pに3つの要素を加えた「7Pマーケティング」の各要素を、BtoBのSaaSビジネスを想定した具体例と共に掘り下げていきます。7Pは有形商材を前提とした4Pとは異なり、形のない「サービス」のマーケティング戦略で特に重要となるフレームワークです。 各要素を正しく理解し、自社の戦略に落とし込むことで、商談化率やLTV(顧客生涯価値)の向上に繋がるでしょう。
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7Pマーケティングの各要素を深掘り解説
7Pは、従来の4P(Product, Price, Place, Promotion)に、People(人)、Process(プロセス)、Physical Evidence(物的証拠)の3つを加えたフレームワークです。 特に、顧客との長期的な関係構築が求められるBtoBビジネスにおいて、これらの追加要素が決定的な違いを生み出します。
Product 製品
製品(Product)は、顧客に提供する価値の中核をなす要素です。BtoBのSaaSビジネスにおいては、単に多機能であることよりも、ターゲット顧客の特定の課題をいかに深く、的確に解決できるかという「ソリューション」としての側面が極めて重要になります。優れたUI/UXデザインによる直感的な操作性や、堅牢なセキュリティ、他システムとの連携APIの提供なども、製品価値を構成する大切な要素です。
Price 価格
価格(Price)は、企業の収益と顧客の導入ハードルを左右する重要な要素です。SaaSビジネスでは、月額や年額で支払うサブスクリプションモデルが主流であり、利用する機能やユーザー数に応じて複数のプランを用意することが一般的です。価格設定においては、顧客が製品から得られる価値(Value)を正しく見積もり、それに見合った価格を提示する「バリューベースプライシング」の考え方がLTVの最大化に繋がります。
Place 流通
流通(Place)は、顧客が製品と出会い、手に入れるまでの経路を指します。オンラインで完結するSaaSビジネスの場合、自社のウェブサイトが最も重要な販売チャネルとなります。 SEOやコンテンツマーケティングを通じて見込み客をサイトに集め、そこでトライアル登録や資料請求を促すのが王道パターンです。大手企業への導入を狙う場合は、販売代理店とのパートナーシップを構築することも有効な戦略となります。
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Promotion 販促
販促(Promotion)は、製品の価値をターゲット顧客に伝え、購買意欲を喚起するためのコミュニケーション活動全般を指します。 BtoBマーケティングでは、課題を抱える潜在顧客に役立つ情報を提供するコンテンツマーケティング(ブログ記事、ホワイトペーパー、導入事例)や、具体的な解決策を提示するウェビナーが効果的です。これらの活動を通じて獲得した見込み客に対し、インサイドセールスがアプローチし、商談へと繋げていく一連の流れを構築することが成功の鍵となります。
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People 人
人(People)は、特にBtoBのサービスにおいて顧客満足度を大きく左右する要素です。製品・サービスに関する深い知識を持つ営業担当者、導入後の活用を能動的に支援するカスタマーサクセス、技術的な問題に迅速かつ的確に対応するサポート担当者など、顧客と接点を持つすべての従業員の専門性と応対品質が、企業の信頼を構築し、長期的な関係へと繋がります。
Process プロセス
プロセス(Process)とは、顧客がサービスを認知し、検討、導入、そして利用を継続するまでの一連の体験の流れを指します。 例えば、問い合わせフォームの入力が煩雑であったり、契約手続きに時間がかかったりすると、顧客はストレスを感じて離脱してしまいます。顧客が辿る全てのステップを可視化し、無駄なくスムーズな体験を提供できるようプロセスを標準化・効率化することが、顧客満足度を高め、チャーンレート(解約率)を抑制します。
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Physical Evidence 物的証拠
物的証拠(Physical Evidence)は、形のないサービスに対する顧客の不安を払拭し、信頼性を担保するために提示される、目に見える証拠のことです。 具体的には、導入効果を具体的な数値で示した導入事例、第三者機関によるセキュリティ認証(ISMS認証など)、顧客からの推薦の声、分かりやすく整理された提案書や契約書などが挙げられます。ウェブサイトのデザインやサービスの管理画面の分かりやすさも、サービスの品質を伝える重要な物的証拠と言えるでしょう。
| 要素 | 概要 | BtoB(SaaS)における具体例 |
|---|---|---|
| Product 製品 | 顧客に提供する商品・サービスそのもの。機能、品質、デザイン、ブランド価値など。 | ソフトウェアの機能、UI/UXの使いやすさ、セキュリティレベル、データ連携の柔軟性、導入・運用サポート体制。単なる機能の提供ではなく、顧客の業務課題を解決するソリューションとしての価値が問われます。 |
| Price 価格 | 製品・サービスの価格設定。定価、割引、支払い条件、返金ポリシーなど。 | 月額・年額のサブスクリプション、利用ユーザー数や機能に応じた段階的な料金プラン、初期導入費用、無料トライアル。顧客が実感する価値とコストのバランスを最適化し、LTVを最大化する戦略が重要です。 |
| Place 流通 | 顧客に製品・サービスを届ける経路や場所。 | 自社ウェブサイト経由での直接販売が中心。その他、代理店や販売パートナー経由の提供、AWS Marketplaceのようなクラウドマーケットプレイスでの展開も含まれます。顧客が最もアクセスしやすく、検討しやすいチャネルの設計が求められます。 |
| Promotion 販促 | 製品・サービスの認知度を高め、購買を促進する活動。 | 課題解決に役立つホワイトペーパーやブログ記事といったコンテンツマーケティング、Web広告、ウェビナーの開催、展示会への出展、インサイドセールスによる能動的なアプローチ。見込み客の獲得から育成、商談化までを一気通貫で設計します。 |
| People 人 | サービス提供に関わる全ての人員。営業、カスタマーサクセス、サポート担当者など。 | ツールの知識が豊富な営業担当者、導入から活用までを伴走支援するカスタマーサクセス、技術的な問題に迅速に対応するサポートデスク。従業員の専門性と対応品質が、顧客満足度と契約継続率に直結します。 |
| Process プロセス | 顧客にサービスが提供されるまでの一連の流れや仕組み。 | 問い合わせからデモ提供、見積もり、契約、導入(オンボーディング)、そしてアフターサポートに至るまでの一連の業務フロー。各プロセスを円滑にし、顧客体験を向上させることが解約率の低下に繋がります。 |
| Physical Evidence 物的証拠 | サービスの品質や信頼性を可視化し、顧客に安心感を与える証拠。 | 洗練されたウェブサイト、具体的な数値データを用いた導入事例、顧客からの推薦コメント、分かりやすい資料や契約書、プライバシーマークやISMSといった第三者認証の取得。無形のサービスだからこそ、信頼性を補強する物的証拠が不可欠です。 |
9Pマーケティングの全体像と追加要素
7Pマーケティングが企業内部でコントロール可能な要素を中心に分析するのに対し、9Pマーケティングはよりマクロな視点を取り入れ、外部環境への働きかけまでをスコープに含めたフレームワークです。従来の7Pに「Public Relations(広報)」と「Political Power(政治力)」という2つの要素が加わり、企業を取り巻く社会全体との関係構築を重視する点に大きな特徴があります。
まずは9Pマーケティングを構成する9つの要素を一覧で確認しましょう。
| 分類 | 要素(P) | 日本語 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 4P(伝統的マーケティングミックス) | Product | 製品 | 顧客に提供する製品・サービス |
| Price | 価格 | 製品・サービスの価格設定 | |
| Place | 流通 | 顧客への提供経路・場所 | |
| Promotion | 販促 | 顧客とのコミュニケーション活動 | |
| 7P(サービスマーケティングミックス) | People | 人 | サービス提供に関わる全ての人材 |
| Process | プロセス | サービス提供の過程・手順 | |
| Physical Evidence | 物的証拠 | サービスを可視化する物理的な要素 | |
| 9P(現代的マーケティングミックス) | Public Relations | 広報 | 社会やステークホルダーとの良好な関係構築 |
| Political Power | 政治力 | 政策や法規制への戦略的な働きかけ |
Public Relations 広報
Public Relations(広報)は、企業やそのサービスに対する社会的な評価や信頼を構築し、維持していくための戦略的なコミュニケーション活動を指します。広告などの販促(Promotion)が直接的な販売促進を目的とするのに対し、広報はメディアや地域社会、株主といった多様なステークホルダーとの良好な関係構築を目指す、より長期的かつ間接的なアプローチです。
BtoBマーケティングにおいては、業界専門誌での技術紹介、調査レポートの発表、導入事例のプレスリリース配信、代表のカンファレンス登壇などが具体的な活動として挙げられます。これらの活動を通じて企業の専門性や信頼性を高めることが、結果として顧客からの信頼獲得や商談化率の向上に繋がります。
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Political Power 政治力
Political Power(政治力)は、政府の政策、法律、規制などが自社の事業に与える影響を考慮し、ロビー活動などを通じて自社や業界にとって有利な事業環境を形成するための働きかけを意味します。特に、法規制が厳しい業界や、新しいテクノロジー(例えばSaaSやAIなど)に関連するルールが整備されていない領域でビジネスを展開する企業にとって、無視できない要素です。
具体的な活動としては、業界団体に加盟して国や自治体へ政策提言を行ったり、規制緩和を働きかけたりすることが含まれます。例えば、新しいITツールの導入を公共機関に促すための働きかけや、データ活用に関する法整備への関与などが考えられます。スタートアップにとっては馴染みが薄いかもしれませんが、事業規模が拡大し社会的な影響力が大きくなるにつれて、その重要性は増していきます。
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7Pと9Pマーケティングの決定的な違い
この章では、4Pから発展した7Pマーケティングと、さらに広い視野を持つ9Pマーケティングの決定的な違いを解説します。どちらのフレームワークが優れているというわけではなく、それぞれに異なる焦点と有効な活用シーンが存在します。両者の本質的な違いを理解し、自社の状況に合わせて的確に使い分けることが、マーケティング成果を最大化する鍵となります。
分析対象の範囲 内部環境か外部環境か
7Pと9Pの最も大きな違いは、分析の対象となる範囲、すなわち視点が「内部環境」中心か、「外部環境」まで及ぶかにあります。7Pが企業内部でコントロール可能な要素に焦点を当てるのに対し、9Pは自社だけではコントロールが難しい社会や政治といった外部の要素まで分析対象に含める点が、決定的な相違点です。
7Pマーケティングは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)という従来の4Pに、人(People)、プロセス(Process)、物的証拠(Physical Evidence)の3つを加えたものです。 これらはすべて、企業努力である程度コントロールできる「内部環境」に分類されます。 例えば、スタッフの教育(People)や、顧客への提供プロセス(Process)の改善は、自社の裁量で実行可能です。
一方、9Pマーケティングは7Pの要素に、広報(Public Relations)と政治力(Political Power)という2つの「外部環境」要素を加えます。 これらは、世論の動向や法規制、国際関係といった、一企業の努力だけではコントロールが困難なマクロな要因です。 この視点の違いが、両フレームワークの性格を大きく分けています。
| 項目 | 7Pマーケティング | 9Pマーケティング |
|---|---|---|
| 主な分析対象 | 内部環境(自社でコントロール可能な要素) | 内部環境 + 外部環境(自社でコントロール困難な要素) |
| 構成要素 | Product, Price, Place, Promotion, People, Process, Physical Evidence | 7Pの要素 + Public Relations, Political Power |
| 視点 | ミクロ(企業視点) | ミクロ(企業視点) + マクロ(社会・市場視点) |
フレームワークの有効な業界
分析対象の範囲が異なるため、7Pと9Pはそれぞれ有効に機能する業界や事業フェーズが異なります。
7Pマーケティングは、顧客との接点が多く、サービスの品質が直接的に顧客満足度に影響を与える業界で特に有効です。 例えば、ホテル業界、飲食業、金融機関、そしてSaaSをはじめとするBtoBのサービス業などが挙げられます。 これらの業界では、スタッフの対応(People)やサービスの提供プロセス(Process)が、競合との差別化を図る上で極めて重要な要素となるためです。
対して9Pマーケティングは、事業活動が政府の政策、法規制、国際情勢、あるいは社会的なコンセンサスに大きく左右される業界で考慮すべきフレームワークです。具体的には、電力・ガスなどのインフラ事業、製薬会社、通信事業、そしてグローバルに事業を展開する大企業などが該当します。これらの企業は、ロビー活動(Political Power)や企業としての社会的な評判形成(Public Relations)が、事業の継続性そのものに直結する場合があるためです。
結論として、どちらか一方のフレームワークに固執するのではなく、自社の事業フェーズや業界の特性に合わせて、最適なフレームワークを選択・活用することが成功への鍵となります。
状況別 7Pと9Pマーケティングの使い分けガイド
この章では、7Pと9P、二つのマーケティングフレームワークをどのような状況で使い分けるべきか、企業の状況に応じた具体的な選び方から活用法までを解説していきます。自社の事業フェーズや規模に最適なフレームワークを見極め、マーケティング成果を最大化するための指針としてご活用ください。
自社に合った7P 9Pマーケティングフレームワークの選び方
7Pと9Pのどちらを選択すべきか、その判断は企業の「事業フェーズ」「規模」「業界特性」によって変わります。それぞれのフレームワークが持つ特性を理解し、自社の置かれた状況と照らし合わせることが重要です。BtoB、特にSaaSビジネスにおいては、まず顧客との直接的な接点を最適化し、サービス品質を高めることが事業成長の基盤となります。そのため、まずは7Pで顧客接点とサービス提供プロセスを盤石にすることが、商談化率やLTV(顧客生涯価値)向上の鍵となります。
以下の表は、両フレームワークの選択基準をまとめたものです。自社の状況を当てはめ、どちらの視点がより重要かを見極めましょう。
| フレームワーク | 主な対象 | 特徴と有効な状況 |
|---|---|---|
| 7Pマーケティング | スタートアップ・中小企業 サービス業全般 |
自社でコントロール可能な内部環境の最適化に重点を置きます。特に、顧客と直接関わる「人(People)」「プロセス(Process)」「物的証拠(Physical Evidence)」を改善することで、顧客満足度とロイヤルティ向上を目指す場合に有効です。 |
| 9Pマーケティング | 大企業・グローバル企業 市場影響力の大きい企業 |
内部環境に加え、自社では直接コントロールが難しい外部環境への働きかけも視野に入れます。「広報(Public Relations)」による世論形成や、「政治力(Political Power)」による業界ルールへの関与など、よりマクロな視点で市場での優位性を築く際に活用されます。 |
スタートアップ企業がまず取り組むべき7Pマーケティング
リソースが限られるスタートアップや中小企業にとって、まず優先すべきは自社で管理できる範囲の要素を磨き上げることです。7Pフレームワークは、そのための具体的な指針を与えてくれます。
特にBtoBのSaaSビジネスにおいては、顧客との長期的な関係構築がLTV(顧客生涯価値)を最大化する上で不可欠です。 7Pの追加要素である「People(人的要素)」、「Process(プロセス管理)」、「Physical Evidence(物的証拠)」は、まさに顧客体験の質に直結します。
- People:専門知識が豊富な営業担当や、迅速で丁寧なカスタマーサポートは、顧客の信頼を獲得し、契約継続を後押しします。
- Process:スムーズな導入プロセスや直感的に操作できるUI/UXは、顧客満足度を高め、解約率(チャーンレート)の低下に貢献します。
- Physical Evidence:分かりやすいサービス資料、導入事例、顧客の声(レビュー)などは、目に見えないサービスへの信頼性を補完し、購買決定を後押しする重要な証拠となります。
これらの要素を7Pの枠組みで整理・改善していくことが、事業の土台を固め、持続的な成長を実現する第一歩となります。
大企業やグローバル企業が考慮すべき9Pマーケティング
事業が拡大し、市場や社会に対する影響力が大きくなった大企業やグローバル企業は、7Pに加えて9Pの視点を持つことが極めて重要になります。これは、自社の活動が単なる一企業の経済活動にとどまらず、社会的な出来事として認識される段階に入ったことを意味します。
追加される二つの「P」は、外部環境への戦略的な働きかけを意味します。
- Public Relations(広報):企業のビジョンや社会貢献活動などを積極的に発信し、良好なパブリックイメージを形成します。これにより、ブランドへの信頼を高め、優秀な人材の獲得や、顧客ロイヤルティの向上にも繋がります。
- Political Power(政治力):業界団体への参加やロビー活動などを通じて、自社や業界にとって有利な事業環境やルール形成に働きかけます。特に、新しいテクノロジーに関わる法規制や、国際的な事業展開における各国の政策などに対応する際に不可欠な視点です。
このように、市場のルール形成に関与したり、社会的な合意形成を主導したりする段階において、9Pの視点は強力な武器となります。自社の利益追求だけでなく、業界全体の発展や社会課題の解決に貢献する姿勢を示すことが、企業の持続的な成長を支えるのです。
7P・9Pマーケティングの注意点と限界
この章では、7P・9Pマーケティングという強力なフレームワークを扱う上での注意点と、その限界について解説します。フレームワークは思考を整理し、戦略の抜け漏れを防ぐ上で非常に有効ですが、使い方を誤るとかえって成果を遠ざけてしまう可能性も秘めています。特に、BtoBマーケティングのように顧客との長期的な関係構築が求められる領域では、これから解説するポイントを常に意識することが重要です。
フレームワークへの固執は危険
7Pや9Pの各項目を埋めることに集中しすぎると、本来の目的である「顧客への価値提供」や「事業成果の向上」を見失ってしまうことがあります。これは「手段の目的化」と呼ばれる典型的な失敗パターンです。 市場環境や顧客ニーズは絶えず変化するため、一度完成させたフレームワークが永続的に有効であるとは限りません。 フレームワークはあくまで思考を整理するためのツールであり、絶対的な正解ではないことを理解しておく必要があります。
| 固執による弊害 | 推奨される対策 |
|---|---|
| 思考停止に陥り、新たなアイデアが生まれにくくなる。 | 各要素について「なぜそう言えるのか?」を常に問い続ける。 |
| 市場や顧客の変化に対応できず、戦略が陳腐化する。 | 四半期に一度など、定期的にフレームワークの内容を見直し、更新する。 |
| 社内向けの資料作成が目的となり、実行が伴わない。 | 分析結果から具体的なアクションプランに落とし込み、実行と評価をセットで考える。 |
常に顧客視点を忘れない
7Pや9Pといったマーケティングミックスのフレームワークは、企業側の視点で戦略を構築する性質上、顧客視点が抜け落ちやすくなるという弱点があります。 企業が「良い製品(Product)」や「適切な価格(Price)」と考えていても、それが顧客にとっての「価値(Customer Value)」や「納得できるコスト(Cost)」と一致していなければ、購買にはつながりません。
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特に、BtoBのSaaSビジネスなどで見られる「リードは獲得できるが商談化率が低い」といった課題は、企業が伝えたい価値と、顧客が本当に解決したい課題との間にズレが生じている可能性を示唆しています。このズレを解消するためには、フレームワークの各要素を検討する際に、常に顧客の立場に立って考えることが不可欠です。
具体的には、顧客インタビューや満足度調査(NPSなど)を通じて顧客の生の声に耳を傾けたり、顧客が製品やサービスを認知し、購入に至るまでのプロセスを描く「カスタマージャーニーマップ」を作成したりすることが有効です。こうした活動を通じて得られた顧客インサイトを基にフレームワークを再評価することで、より実効性の高いマーケティング戦略を構築できるでしょう。
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まとめ
本記事では、マーケティングミックスの進化形である7Pと9Pについて、各要素の解説から具体的な使い分けまでをガイドしてきました。7Pが主に自社の内部環境を分析するフレームワークであるのに対し、9Pは外部環境までを視野に入れる点で大きく異なります。自社の事業フェーズや市場環境に応じて最適なフレームワークを選択し、顧客視点を中心に戦略を組み立てていくことが、成果を最大化する鍵であると結論付けられます。

