人事関連サービスの導入場面において、サービスの選定や要件定義を担う「人事企画」は、人事決裁者や経営層へ向けた稟議を進める「社内最大の推進役(エバンジェリスト)」です。
しかし、彼らに「最先端のHRトレンド」や「先進企業の事例集」ばかりを訴求しても響きません。なぜなら彼らは理想を追いながらも「社内調整」や「運用の形骸化」という重い現実に縛られているからです。
今回は、先行記事の「人事決裁者ペルソナ」との組織力学を交えながら、正解のない選択に悩む彼らを「社内説明の武器」で動かすマーケティング戦略を解説します。
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目次
2026年現在の人事企画を取り巻く市場実態
人的資本経営やタレントマネジメント、ジョブ型雇用といった理想論は広く知れ渡りましたが、今や市場は「企業規模や組織フェーズによる足元の二極化」という、より複雑な局面に突入しています。
BtoE・BtoBtoEマーケターがまず頭に叩き込むべきは、2026年現在の人事企画が直面している、以下のような「理想と現実のギャップ」です。まずは自社サービスのターゲットがどちらの属性なのかを見極める必要があります。
人的資本経営・開示:「活用」へシフトする大企業 vs 「可視化」に挑む中堅企業
上場・大企業においては、義務化対応としての「形式的な人的資本開示フェーズ」は一段落し、集めたデータをどう経営や組織改善に「活用・分析」するかという第2フェーズの壁にぶつかっています。
一方で、非上場の中堅企業においては、そもそも「自社の組織課題をどう定義し、何のデータをどう集めて可視化すべきか」という初期フェーズの模索が今なお続いています。
タレントマネジメント:「宝の持ち腐れ」の既導入層 vs 「これから本格検討」の未導入層
大手・先進企業を中心にタレントマネジメントシステムは導入されつつありますが、現実は「現場で定着せずデータが形骸化している」「使いこなせてはいない」という宝の持ち腐れ状態に悩まされています。
その一方で、リソース不足の中堅企業では、いまだにExcelや紙での管理から脱却できず、2026年の今まさに「これからどうシステムを選べばいいか」という最初の検討フェーズにある企業も多数派として存在しています。
ジョブ型雇用:形だけの全面移行ではなく「自社流ハイブリッド」の模索
労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎氏が「ジョブ型雇用」を提唱したのが2013年のこと。それから10年以上経つものの、「完全なジョブ型雇用への移行」を実現できている企業はごく一部です。
関連リンク:「ジョブ型雇用」と正しく付き合うために――有識者4人の切り口から「メンバーシップ型雇用」との二元論では見えてこない実像を探っていく | 人事のプロを支援するHRプ
人事の現場では、従来のメンバーシップ型の良さを残しながら、専門職などに部分導入する「自社流のハイブリッド運用」をどう設計するか、その泥臭い現実解が見つからず、今も多くの人事企画が頭を悩ませています。
人事企画のリアルなペルソナ像と3大タイプ分岐
人事企画とは、正解のない領域で「失敗できないプレッシャー」と戦いながら、決裁者に代わって稟議書を実質的に書き上げる「リアルな起案者」です。
彼らを動かすための最適な「説明の武器」を提供するには、まずその具体的な人物像と、組織規模による役割の違いを正しく見極めなければなりません。ここからは彼らのキャリア・心理の実態と、ターゲットにすべき3つのタイプを解説します。
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関連記事:新しい広告や増額の申請時に役立つ!マーケターのための「稟議書の書き方」とROIシミュレーション活用術
年齢・キャリア・心理の実態
まずは平均的な年齢とキャリア、心理状態などを見ていきましょう。
年齢・キャリア構成
35歳〜45歳の中堅マネージャークラスが中心です。キャリアは「生え抜きの人事(多数派)」か「事業部からの異動(増加傾向)」が多く、30代前半の「抜擢型(データ分析・HRBP系)」から、40代後半の「制度・ガバナンス構築型(堅実派)」まで多様化しています。
最大の心理的課題(正解がない不安)
決定的な正解がない領域を扱うため、「失敗できない恐怖心」を強く抱いています。「他社はどうやっているか」を気にするのは、社内を説得するための防衛策であり、ツールそのものよりも「導入後に自社に伴走してくれるか(実行知)」を厳しく見ています。
会社規模・カルチャーによる3大タイプ分岐
ターゲットとする企業規模や組織のフェーズに合わせて、以下の3つのどのタイプにアプローチしているかを明確に区別する必要があります。彼らは目指すゴールや合意形成のハードルも全く異なります。
1.攻めの変革リーダー(先進大企業・新興IT/変革者志向)
- 組織規模:
従業員1,000名以上の先進大企業、またはメガベンチャー。経営直下の特命組織や人的資本・タレマネ推進室などに所属。 - キャリア志向:
「人事起点で経営を動かすHRBP」として市場価値を高め、将来的にはCHRO(最高人事責任者)の座を目指す変革者。 - 社内の強敵:
「人事が現場のリアルを知らずに理想論(システム)を押し付けてきた」と冷ややかに反発する、現場の強力な事業部長。
2.守りのルール番人(伝統的大企業〜中堅/防衛・堅実志向)
- 組織規模:
従業員1,000名以上の伝統的な大企業、または老舗の中堅企業。人事部の中核メンバーとして、制度改定や等級見直しの「現実解」を回す。 - キャリア志向:
不平不満や労働トラブルを一切起こさず、全社に新制度を「一人の落第者もなく着地させること」を最重要視するリスク回避・安泰志向。 - 社内の強敵:
「セキュリティ基準を満たしていない」「既存システムとのデータ連携ができない」とNOを突きつけてくる情報システム部門(情シス)、重箱の隅を突いてくる人事決裁者(上司)。
3.兼務・リソース不足の何でも屋(従業員300〜1,000人帯の中堅企業/サバイバル志向)
- 組織規模:
従業員300〜1,000人帯の中堅企業。人事企画の専任ではなく、採用、労務、時には総務のプレイング実務も兼務している。 - キャリア志向:
高度な戦略への憧れはあるものの、現実は「とにかく今月の給与計算や目先の採用枠を破綻させずに回し切ること(生存戦略)」が最優先。 - 社内の強敵:
ノンコア業務や突発的なトラブル対応を次々と降らせてくる他部門のマネージャー、および「リソースをくれないのに理想だけ高い」経営層。
人事企画の主な役割と関心ごと・ミッション
人事企画のミッションは、経営陣の抽象的な指示を制度に落とし込み、「導入後に形骸化させない運用体制を築くこと」です。彼らが日々どのような「現実の壁」にぶつかり、何に対して最も強い危機感を抱いているのか、具体的な役割と関心ごとの中身を紐解いていきましょう。
抽象的な経営戦略の具現化
経営陣からの「人的資本経営の推進」といった抽象度の高い大号令を、具体的な評価制度、人員配置、採用計画に落とし込むことが人事企画の主な役割です。
チェンジマネジメント(全社浸透)の主導
システムや制度を導入して終わりにせず、現場の反発を抑え、社内に定着させるための運用体制・マニュアルを構築することもミッションの一つです。
散落する組織データの統合
採用管理システム、勤怠データ、評価シートなど、社内に分断・点在しているデータを統合し、経営陣へ戦略的な人材配置案(提言)を創出できる基盤を作ることも求められています。
関心ごと
サービスやシステムを導入した後の「社内浸透の手間」や「運用体制の構築」に最も強い関心があり、「導入後に形骸化しないか」を常に気にしています。
「人事企画の検討タイムライン」とHR事業者の連動サイクル
人事企画は、決裁者が10月に予算を申請するための「比較表・稟議書」を、夏の間(7〜9月)に裏で作成しています。
3月決算・4月新年度スタートの標準的な企業において、人事企画は決裁者(上司)の動きの「裏方」として、以下のような時間軸で動いています。
併せてHRサービス提供側のアクションも記載していますので参考にしてください。
※ここでは日本企業に最も多い3月決算(4月期初・10月予算申請)をベースに解説しますが、ターゲット企業の決算期に合わせてタイムラインをスライドして応用してください。9月決算企業(10月期初)であれば半年後ろ倒し、12月決算企業(1月期初)であれば3か月前倒し、6月決算企業(7月期初)であれば3か月後ろ倒しとなります。
5月〜7月:潜在的課題の深掘り期
新年度のバタバタが落ち着き、経営陣から「今年のテーマ」や現場の課題を受け、自発的に検索エンジンや専門メディアで密かに下調べ(情報収集)を開始する時期です。
<HR事業者(マーケ)のアクション:最重要の仕込み・種まき期>
7月以降に訪れる「問い合わせ大繁忙シーズン」に向けて、SEO記事の拡充や、最新トレンドを絡めたホワイトペーパーを大量に仕込む時期です。ここで網を張っておかないと、夏以降の選定土台に残りません。
また、ハウスリストに対して日常的なお役立ちメルマガを配信し、第一想起のベースを築く「根回しの土壌」を作るのもこの時期です。
7月〜9月:ベンダー選定・決裁者への根回し期
10月の予算申請に向けて複数のベンダーに問い合わせ、デモ画面を比較し、決裁者に「今度こういうのを検討しようと思うのですが…」と内密に壁打ち(根回し)を行います。
<HR事業者(マーケ→IS・営業)のアクション:問い合わせ爆発・即応&パス期>
春に仕込んだ種が芽吹き、Webサイトからの資料請求や問い合わせが急増する大繁忙期です。
マーケターの役割は、獲得したリードをインサイドセールスや営業へ迅速にパスすること。そして、フロントに立つ営業担当者が人事企画へ手渡すための「客観的な競合比較表(カオスマップ)」や「導入スケジュール」といった、根回しを有利に進める実戦的な営業用コンテンツをタイムリーに供給・支援することです。
10月:稟議書の作成(裏方)期
決裁者が経営会議やCFOに提出するための「競合比較表」や「ROI試算シート」を、決裁者に代わって必死に起案し稟議書を作成する時期です。
<HR事業者(営業)のアクション:稟議突破の伴走期>
「そのまま役員会に出せる提案スライド(PowerPoint形式)」や「財務責任者向けの投資回収ロジック」などの武器を人事企画に届け、参謀として先方社内の調整を伴走支援することが成約の鍵となります。ここでいかに顧客の懐に入り込むかが勝負です。
11月〜3月:導入・チェンジマネジメント期
予算が承認され、4月の稼働に向けてデータの移行、現場向けマニュアルの作成、説明会の実施など、彼らにとって最も実務工数(運用の地獄)がかかる時期を迎えます。
<HR事業者(CS主導+マーケ)のアクション:定着支援と事例回収期>
導入初期のバタバタをカスタマーサクセスがケアし、現場への定着を全力で支援します。
一方のマーケティング部門は、ここでカスタマーサクセス部門と連携し、「現場の巻き込みに成功した泥臭いストーリー」を、翌年の課題深掘り期に発信する「他社事例コンテンツ(次の種)」として回収するサイクルを回します。
関連資料:人事の年間スケジュールがわかる!人事カレンダー2026年版
意思決定基準における「重み」の違い
HRサービスの導入において、人事企画が最も重視するのは、「現場での運用が成立するか(実現性)」と、上層部から突きつけられる「ROI(投資対効果)の証明」の2点です。
人事決裁者や現場の担当者と関心を持つテーマは重なりますが、「どこに一番重きを置いているか」の評価軸は異なります。
近年は人事企画層(課長・係長クラス)であっても、単なる実務の推進だけでなく、経営陣や上司から「で、その投資でいくら利益に貢献する(総人件費が下がる)のか?」というシビアなROI向上を直接のKGIとして背負わされるケースが急増しています。
関連記事:KPIツリーの具体的なつくり方をKGIの設定含めて解説!
| ターゲット | 意思決定において「最も重視する重み」 | 検討時の懸念点・恐怖 |
|
現場担当者 (採用・研修・労務) |
操作性・機能の豊富さ (目の前の自分の実務が楽になるか) |
新しいツールを覚える手間の有無、業務の一時的なストップ |
|
人事企画 (推進者) |
運用の実現性 + ROIの証明 (現場に定着して実務KPIが向上し、かつ上層部へROIの成果を報告できるか) |
既存制度とのミスマッチ、「投資回収できていない」と上層部から詰められるリスク |
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人事決裁者 (部長・役員クラス) |
全社的ROI・リスク・経営整合性 (経営戦略に合致し、全社レベルのコストに見合うか) |
既存システムとの連携、ガバナンス、失敗時の全社責任 |
つまり人事企画に響く提案をするためには、「現場が使いやすいですよ」という視点だけでは不十分です。
「このツール(サービス)を使えば、現場の負担なくデータが集まり、あなたが上から厳しく求められているROI(例:離職防止による採用コスト〇〇万円の削減)を確実なロジックとして報告できます」という、彼らを上層部のプレッシャーから解放するストーリーラインが不可欠です。
人事企画が本当に欲しい情報
人事企画が日々求めている情報は、製品導入のための情報だけでなく、部内や個人の壁打ちに使える「高感度なビジネストレンドの一次情報」と、社内を説得するための「実戦データ」です。情報収集期と具体的選定期の2つのフェーズに分けて解説します。
5〜7月の情報収集期:日常的なビジネス・HR情報の収集
彼らは「自社の基準が世間からズレていないか」を常に気にしており、経営陣から「最近話題の〇〇について、我が社はどうする?」と急に振られても答えられる状態を理想としています。
他社の「攻めの人事」のリアルな動向
「他社が今年、初任給やベースアップをどう設定したか」「リスキリングやウェルビーイング施策にいくら予算を割いているか」といった、競合企業などのリアルなベンチマークデータを求めています。
最新の労働法改正や政府方針の「思想と他社スタンス」
労務担当者が追う「手続きや実務」ではなく、「その法改正が自社の等級や評価制度にどう影響するか」「他社は静観しているか、先手を打っているか」という一歩先の解釈を求めています。
生成AIや最新テクノロジーの「人事・組織活用トレンド」
「他社の人事企画は生成AIをどう制度設計やデータ分析に活かしているか」という、一過性のブームではないビジネステックの潮流を知りたいと思っています。
関連記事:2026年のHRテック市場:情報過多時代に埋もれない!選ばれるサービスのポイント
8〜9月の選定期:失敗を防ぎ、社内を説得するための情報
製品を検討するフェーズでは、彼らの「失敗したくない」「社内を説得したい」を満たす情報が刺さります。
泥臭い「失敗事例」と運用の落とし穴
成功ストーリーの裏にある、「現場の反発をどう乗り越えたか」「何が原因で一度頓挫しかけたか」という生々しい教訓や、導入後の「運用工数・体制」の現実的なシミュレーションが刺さります。
客観的かつフラットな「市場のベンダー比較表」
自ら各社のウェブサイトを巡って比較表を作る手間を省いてくれる、市場のポジショニングや各社サービスの強み・弱みをフラットにまとめた資料が適しています。
関連資料:ポジショニングマップの作り方とパワポテンプレート×5パターン【競合分析資料】
【カレンダー管理必須】人事企画が動く時期要因
当社ProFutureが昨年(2025年)実施したメール配信実績データを分析したところ、人事企画が動く動機には、年間を通じた明確なカレンダーサイクルと、クリック率が高まる特定の文脈が存在することが分かりました。
まずは、マーケターがハズしてはならない「時期要因」と「クリックの法則」から解説します。
1. 法改正・制度対応の「先回り型」トレンド
- 4月〜5月: 新年度に伴う「就業規則」「基礎実務」の再確認ニーズが最大化。
- 6月〜7月: 夏賞与や秋の法改正に向けた準備期。「業務カレンダー」など、抜け漏れを防ぐ実務資料が好まれる。
- 8月〜9月: 年末調整や下半期への準備期。「税制改正」や「103万円の壁」など、経営層から質問されやすいトピックに関心が集中。
- 12月〜1月: 次年度の法改正対応と、新卒・中途の採用計画が重なる繁忙期。
2. 採用領域の「早期化・難化」サイクル
- 新卒採用: 4月〜7月は「前年度振り返り」と「次年度の母集団形成」。10月以降は「内定フォロー」や「次年度の採用計画見直し」にテーマがシフト。
- 通年: 「AIを活用したスカウト」「スカウトの定石」という言葉が頻出。従来のナビサイト依存からの脱却を狙う企業が多い。
3. 組織・人材開発の「悩み」の継続性
- 1on1・エンゲージメント: 年間を通じて高関心。「形骸化」「離職防止」「上司のスキル不足」といった現場のネガティブな課題を代弁するタイトルが強い。
- 階層別研修: 4月(新入社員)、10月(下期)、3月(次年度準備)と、組織の入れ替わり時期に合わせて「育成のポイント」「オンボーディング」が伸長。
このように人事のタスクは時期ごとに決まっています。では、このカレンダーの裏で、彼らは一体どのような心理(動機)でメールをクリックしているのでしょうか。データから見えた「3つの法則」を解説します。
関連資料:人事の年間スケジュールがわかる!人事カレンダー2026年版
マーケターへの提言:人事企画が「クリックする瞬間」
前述の配信実績データ(大企業の事例、有識者の知見、実務の型)のクリック数上位層をさらに深く分析すると、人事企画が飛びつく要素は以下の3つの文脈に抽象化されることが判明しました。
クリック率が高まる3つの文脈
- 「義務と期限」の可視化(逃れられない義務):
「〇〇年法改正」「完全ガイド」「やることリスト」といった、担当者自身のミスやリスクを未然に防ぐ安心感。 - 「有識者による権威付け」(社内説得の盾):
「大手製造業の事例」「著名有識者の提言」といった、上層部や決裁者を納得させるための理論武装。 - 「現場のリアル」への共感(明日使える実務ツール):
「形骸化」「スキルマップ」「1on1」など、人事の胃の痛みを代弁し、明日からそのまま現場で使える具体的な手順・型。
「時期」と「クリックの法則」が頭に入ったら、残るのは実践です。このデータ傾向を3つのターゲット(ペルソナ)の心理へ個別に落とし込んだ、具体的なメッセージ・資料名の実例を見ていきましょう。
人事企画に刺さるメッセージ・資料の実例
これまでに導き出した「クリックの法則」とペルソナ分析をブレンドし、中身のベネフィットが1秒で察せられる「25〜35文字前後」の資料名・メッセージ案を考案しました。自社サービスのターゲット属性に合わせてご活用ください。
1.攻めの「変革リーダー」向け(先進大企業・新興IT)
人気傾向: 他社事例、有識者、戦略フレームワーク。上層部や現場への「理論武装の盾」となる資料がクリックされやすい傾向にあります。
- 【○○(大手IT・製造)の事例公開】現場が冷めない「人的資本データ活用」
- ○○氏(著名有識者)が語る、経営戦略に直結する「人事制度構築フレームワーク」
- 反発する事業部長を味方につけて役員会を通す「組織変革・ROI試算パワポ」
2.守りの「ルール番人」向け(伝統大企業〜中堅)
人気傾向: 法改正、内部トラブル予防、実務エラー防止。法律だけでなく、「社内の実務リスクを徹底的に潰す」ツールにクリックが集中します。
- 【改正対応】人事労務の法改正スケジュールと市場スタンスを徹底比較
- 【社労士が解説】よくある労働トラブルを未然に防ぐ「就業規則見直しルール」
- 情シスのNOを防ぐ!人事システム導入のためのセキュリティ要件確認表
- 【新任管理職向け】担当者任せにしない!現場でおさえるべき必須労務知識
3.必死の「何でも屋」向け(中堅〜中小企業)
人気傾向: 短ステップ、テンプレート、時事キーワード。時間がないため、明日から現場でそのまま使える「型」が安定した高数値を維持します。
- 【テンプレつき】職場の「できる仕事」を一覧化!スキルマップ作成シート
- 他社はどう決めてる?兼任人事のための採用・定着「KPI・KGI」目安表
- 増加傾向の「リベンジ退職」を防ぐ!現場フォローマニュアル
- 【そのまま使える質問集】形骸化を防ぐ!管理職のための「1on1」ガイド
人事企画に響きにくいNG訴求と改善策
「機能・効率化だけ」の訴求や、日常的な学びにつながらない「単なる手続き解説」は、検討の土台から外されるため要注意です。良かれと思ってアピールしがちながら実はスルーされてしまう「NG訴求」とその改善策を紹介します。
NG1:単なる法改正やトレンドの「条文・仕組みの解説」
「〇〇法がこう変わります」という表面的な解説は労務担当者には響くかもしれませんが、事実だけの情報提供だと人事企画クラスにはスルーされやすく、メール開封率などもあまり伸びません。
人事企画が欲しいのは「その変化が自社の評価制度にどう影響するか」「他社はどう動くか」という一歩先の解釈やスタンスです。
NG2:「入力作業が月10時間減る」といった部分的な効率化訴求
「戦略価値やROIに接続されていない単なる効率化」は、上層部からシビアな投資対効果の証明を求められている人事企画には響きません。
「データ統合で工数を削減し、浮いた時間とデータを活用して、離職防止(=採用コスト〇〇万円の削減)につながる戦略的な人材配置案を創出できる」といった、経営層が求める数値や指標向上に翻訳して伝える必要があります。
接点創出の推奨チャネル
人事企画と接点を持つには、製品検討時だけでなく「日常的な情報収集のインフラ」として彼らの生活導線に入り込むチャネル設計が有効です。
多忙な彼らが日常のヒントを探すために自ら訪れ、営業トーク抜きで信頼している場所はどこなのか。検討の初期段階から自然に接触をはかるための5つの推奨チャネルを紹介します。
自社オウンドメディア(SEO):課題の「検索・深掘り」段階をキャッチする
人事企画は「ジョブ型雇用 移行 手順」「タレントマネジメント 活用できない」など、正解のない課題に対して自ら熱心に検索をかけます。
自社オウンドメディアを単なる「製品PR」ではなく「組織変革の知のインフラ」として位置づけ、こうした検索意図に応える専門性の高い記事を配置しておくことで、5~7月の情報収集初期段階から自然に接触をはかることができます。
ハウスリスト向けのメルマガ:日常的な「知のアップデート」を支援する
一度ホワイトペーパーやウェビナーで獲得したリード(ハウスリスト)に対し、日常のアップデート情報を定期配信します。
「売り込み」ではなく「役立つビジネス情報の提供」を続けることで、彼らが本気で制度刷新やツール導入を検討し始めるニーズ顕在化のタイミング(8~9月)で第一想起される関係性を維持できます。
関連記事:【図解つき】潜在顧客とは?課題発生時に“第一想起”されるマーケ支援会社直伝のリード枯渇を防ぐ開拓手法
HR専門メディア(HRプロ等)での「トレンド・他社動向」の定期発信
「HRプロ」などの信頼できる専門メディアにおいて、今現在のビジネストレンド(生成AIの組織活用、ハイブリッドジョブ型の実態など)を他社人事の対談や一次データを用いて解説。
日常的に企画のヒントを探しに来る場所で「信頼できる情報元」としてのポジションを築きます。
資料掲載メディアを活用した企画推進ツールの提供
人事企画が日常的に訪れる「HRプロ」などの資料ダウンロード機能を活用し、彼らが「社内を動かす(経営・現場を納得させる)」ための武器となる、「そのまま役員会に提出できる『人的資本データ報告書』フォーマット」といった実戦的な企画推進ツールを掲載します。
これにより、課題意識の高い人事企画層との高確度な接点を効率的に創出できます。
口コミ・横のつながり(人事限定コミュニティ・勉強会・事例ウェビナー)
人事企画は、ベンダーの営業トークが入らない「人事同士のリアルな情報交換」を強く信頼します。
役員向けのエグゼクティブ会議ではなく、現場の泥臭い運用課題を共有し合う「実務・マネージャー層向けの勉強会」や「他社事例ウェビナー(HRサミット等のイベント協賛含む)」への参画が有効です。
「他社の人事がどうやって現場の反発を乗り越えたか」というテーマを設定することで、課題意識の高い企画推進層と売込感を排除した深い接点を構築できます。
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資料請求はこちら 「HRプロ」は、人事担当者に役立つさまざまな情報配信から、課題解決に導くサービス、ダウンロード資料、各種セミナー・体験会情報を掲載する日本最大級の人事向けポータル…
監修者・森塚のまとめ
人事企画へのマーケティングは、「製品の売り込み」ではなく「日常的な知のアップデートとつながり」から始まります。
人事企画は「製品を買う時だけ現れる人」ではありません。正解がない領域で、経営陣や現場、情シスなど、社内の強敵と板挟みになりながら、常に組織をアップデートするための「実行知」を探し続けている人たちです。
だからこそ、単に目先の「今すぐ案件」だけを狙い、スマートな機能やスペック、ありきたりな事例を並べても、彼らの心には残りません。
重要なのは、たとえ今すぐの受注には遠くても、「このソリューションがあれば、将来的に必ずこの会社の現場を変えられる」と信じ、来期以降の変革を見据えて今から関係性を耕し続ける「フィールドマーケティング」(編注:顧客の生々しい社内現場に深く寄り添うマーケティング手法)の視点です。
常識の枠に収まる表面的なデジタルマーケティングに終始するのか。それとも、トレンドの逆張りだとしても、顧客の現場理解にどこまでも深みを出す「フィールドマーケティング」へ踏み出すのか。ビジネスの真の勝機は、この選択の先にしかありません。
人事企画の心を動かすのは、いつの時代も、彼ら以上にその会社の現場を変えたいと願う「圧倒的なパッション」だけなのです。
次回予告:人事ペルソナシリーズの次回は、日々の母集団形成や数字(歩留まり)と格闘する「採用担当者」のペルソナを徹底解剖します。





