KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を設定したものの、それらの目標に向かって何をすべきなのかが分からなくなることが多くあります。また、KGIやKPI達成に思った以上に時間がかかったり、途中でボトルネックが見つかることも珍しくありません。KGIやKPIを達成するまでの道筋を明確にし、そのプロセスにおける障害を事前に予測するために、KPIツリーが非常に役に立ちます。
本記事では、KPIツリーの概要やメリット・デメリット、KPIツリーの作成方法について解説します。事業を効率よく進めるためにKPIツリーは非常に有用です。事業を効率よく進めたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
KPIツリーとは
KPIツリーとはKGIを頂点に置いて、KGI達成のために必要である要素のKPIを段階的に置いた図のことです。KGIを頂点として、その周りに様々なKPIが設定されることから、その様子が木の幹と枝葉に見立てられて、KPIツリーと呼ばれています。
詳しくは後述しますが、KGIを達成するために達成するべき中間目標のようなものがKPIです。そのKPIを達成するためにも、達成すべきKPIがあります。それらを繋げて1つの流れにした図であるKPIツリーを作ることで、KGI達成のための道筋や必要な要素が明確に確認できるのです。
KPIとは
KPIとは、「重要業績評価指標」と日本語では表現され、KGIを達成するために達成する必要がある指標のことです。KGIを達成するためには、適切なプロセスを踏む必要があり、適切なKPIの設定が非常に重要視されています。
KPIは必ず定量的なものを設定しましょう。例えば、売上に関するKPIを定める場合の指標としては、以下のものが挙げられます。
・ 契約件数
・ Webサイトからのリード獲得数
・ 訪問件数
数字で分かる指標を用いることで、達成しているか未達であるかが分かります。そのため、未達だった場合の軌道修正などがいち早く行えるのです。
KGIとは
KGIとは、「重要目標達成指標」と日本語で訳され、事業の最終目標を定量的な数値目標に落とし込んだもののことです。KGIを基点としてKPIを決定していくため、KGIは必ず定量的で明確なものでなければいけません。「いつまでに」「何を」「どれくらい」達成するのかを必ず明らかにしましょう。
例えば、「お客様に愛される企業になる」というような漠然とした目標は、KGIとして不適切です。「お客様に愛される企業」が、どのような企業であるのかを分析して下記のような定量的な目標に落とし込みましょう。
3年後の10月決算時までに、リピート率を50%にする
これならKPIも設定しやすく、「いつまでに」「何を」「どれくらい」達成するべきなのかが明確であるため、KGIとして適切と言えます。
関連記事:KPI・KGIの違い~目標達成に欠かせない2大項目の活用を考える
KPIツリーを作成するメリット
ここまでKPIツリーと、KPIツリーの構成要素であるKPIとKGIについて解説しました。KPIツリーは、事業を効率良く進めていくためには非常に大切なものです。KPIツリーを作成するメリットは下記の通りです。
・ 全体的なKPIをチェックできる
・ 目標達成までの工数が明確になる
・ ボトルネックの可視化も可能
・ PDCAを容易に回せる
それぞれ順番に解説します。
全体的なKPIをチェックできる
KPIツリーを作成することで、KGI達成の通過点として全体的に必要なKPIをチェックできます。KPIツリーを作成せずにKGI達成を目指すと、KPIが不適切だったり、必要であるはずのKPIの確認が漏れてしまったりして、KGI達成のためのロスが発生することが少なくありません。
ビジネスの世界では、目標達成に向けて効率よく時間と労力、お金を投じる必要があります。KPIツリーを作成することで、これらが可能になります。
目標達成までの工数が明確になる
KPIツリーを作成すると、達成すべきKPIがチェックできるほか、それぞれのKPI達成にかかる工数も明らかになります。事業を進めるにあたって、目標達成の途中で思わぬ遅れが発生することは珍しくありません。KPIツリーで事前に必要な工数を把握することで、想定外の遅延を防げます。
ボトルネックの可視化も可能
ボトルネックとは、KPIやKGIを達成する際に発生する障害や障壁のことです。KPIツリーを作成することで、KGIやKPIの達成へのプロセスが明確になるので、ボトルネックが事前に分かります。事前にボトルネックになるポイントが分かるので、事前に対策を行い、スムーズに事業を進められるようになります。
PDCAを容易に回せる
KGI達成までの道筋が明確になり、ボトルネックも可視化することでPDCAを回しやすくなります。思うような結果が出なかったときも、KPIツリーの下層に遡って原因を探れるため、根本的な原因究明と解決が可能になります。
関連記事:PDCAサイクルの具体例を徹底解説します!成功・失敗の要因を説明!
KPIツリーを作成するデメリット
ここまでKPIツリーを作成するメリットについて解説しました。事業を進める上で、KPIツリーの作成は重要である一方、KPIツリーの作成にはデメリットもあります。KPIツリーを作成するデメリットは大きく分けて以下の2つです。
・ 新たな施策は生まれづらい
・ 不要なKPIが生まれる恐れがある
それぞれ順番に解説します。
新たな施策は生まれづらい
KPIツリーはKGI達成のために、事前に組み立てるロードマップのようなものです。KPIツリーをもとに事業を進めることは、事前に引いたレールに沿って事業を進めることを意味します。そのため、事前に設定したKPIを達成することにこだわってしまい、新たな施策が生まれにくくなります。
柔軟なアイデアを必要とする場合は、KPIツリーが足枷になる場合があります。KPIツリーを作成するときは、そのことを念頭に置いた上で作成しましょう。
不要なKPIが生まれる恐れがある
KPIツリーを作成する中で、不要なKPIが生まれる恐れもあります。事業設計などの経験が浅い人がKPIツリーを作った場合、細かくKPIを設定することに注力してしまいがちです。その中で不要なKPIが生まれ、逆に事業の効率を下げる懸念があります。
不要なKPIはKGI達成までの道筋を不明瞭にする危険性があります。KPIツリーを作成する際は、必ず設定するKPIの必要性を自問自答しながら作成しましょう。
KPIツリーを作成する際の注意点
ここまで、KPIツリーを作るメリットやデメリットについて解説しました。KPIツリーによって事業を加速させたい場合、適切にKPIツリーを作成する必要があります。ここからは、適切なKPIツリーを作成するための注意点について解説します。KPIツリー作成時に注意すべきことは、主に以下の2点です。
・ 一度作っただけでは終わらせない
・ 一人だけでは作らない
・「SMART」の法則を意識する
この3点について、それぞれ解説します。
一度作っただけでは終わらせない
KPIツリーを一度作って、満足してしまう方も多くいます。しかし、KPIツリーは何度も作り変えたり、加筆を行ったりすることが大切です。何故なら、事業を進めるにあたって、予期せぬ遅延や障害が発生することが珍しくないからです。その都度、現状を客観的に捉えてKPIの再設定を行うことで、効率よく事業を進められます。頻繁にKPIツリーを見返し、現状と照らし合わせた上で修正を行うと良いでしょう。
一人だけでは作らない
KPIツリーを作成する際には、必ず複数人で作成しましょう。一人でKPIツリーを作成すると、独りよがりなものになってしまい、実現不可能なKPIを立ててしまう可能性があります。
KGIに向けて様々な部署が動くのであれば、それぞれの部署の担当者が集まることが望ましいです。各部門に詳しい人が集まって、連携を取りながらKPIツリーを作成することで、現実的かつ効率の良いKPIの設定が可能になります。
「SMART」の法則を意識する
KPIを決めるときに大切なのは、「Specific(具体的な)・Measurable(計測可能な)・Achievable(実現可能な)・Relevant(適切な関連性を持つ)・Timeーbounded(時間制限のある)」の各単語の頭文字を組み合わせた「SMART」という考え方です。
・Specific(具体的な)
KPIは明瞭で、誰もが理解できるものでなければなりません。不明瞭な指標を採用すると、目的が不明確になり、結果として従業員の意欲を削ぐ可能性があるので注意が求められます。具体的なものであれば、チーム内での共有が容易となり、共通の目的に向かって効果的な行動を起こしやすくなります。
・Measurable(計測可能な)
KPIの目標達成に向けて、進行状況を確認し、各ステップが適切に進められているかを検証することが必要です。数値で示せるなど、計測可能なKPIを選ぶことで、進行の遅延や問題が発生した際にも対策を立てやすくなります。
・Achievable(実現可能な)
現実的に達成不可能なKPIは、従業員のモチベーションを低下させるリスクがあります。過去のデータや実績を参考にして、実際に達成可能な目標を設定することが大切です。また、従業員が納得できるKPIを選ぶこともポイントとなります。
・Relevant(適切な関連性を持つ)
KPIは、他のKPIやKGIとの連携や関連性を持たせることが必要とされます。
・Timeーbounded(時間制限のある)
KPIはKGIの達成を目的として設定されます。各タスクは適切な時期に完了することが求められるため、時間制限をすることが不可欠です。
KPIツリーの作り方
KPIツリーの作成は、上記の注意点を守りつつ、正しい手順に沿って作ることが大切です。KPIツリーを作るのに必要な手順は、大きく分けて3ステップです。
1. KGIを設定する
2. 四則演算で組み立てる
3. 具体的な数値を指定する
それぞれのステップについて順番に解説します。
KGIを設定する
最初に、1つのKGIを設定しましょう。前述した通りKGIを設定する際は、「いつまでに」「何を」「どれくらい」の3つを明確にしましょう。KGIは最終的な事業のゴールとなるため、「商談数」や「新規獲得数」などを指標とするのは不適切です。必ず「売上」や「利益」などの事業のゴールとなるものを指標にしましょう。
四則演算で組み立てる
KGIを設定したら、いよいよロジックツリーを作っていきます。まずはKGIの達成に必要な要素を洗い出し、一つ下層に要素を追加しましょう。その要素のさらに下に、達成のために必要な要素を追加する、という繰り返しでKPIツリーは完成します。
(引用:コンバージョンやCVRが伸び悩んだ時こそ、基本に立ち返ろう)
この際に、四則演算で組み立てることが大切です。簡単な例は下記の通りです。
・ KGIが売上→その下にKPIは「平均顧客単価」と「顧客数」(顧客単価×顧客数)
・ KPIが「顧客数」→その下には「新規顧客数」と「リピート顧客数」(新規顧客数+リピート顧客数)
このように、それぞれのKGIやKPIの直下には、四則演算で組み立てられる要素を入れましょう。そうすることで、KGIやKPIを達成するために必要な要素を漏れなく洗い出すことが可能になります。
具体的な数値を指定する
四則演算でKGIやKPIを達成するための要素分解ができたら、それぞれの具体的な数値を指定しましょう。具体的な数値を指定することで、達成できたかできていないかが明確に分かり、PDCAサイクルを適切に回せるようになります。
具体的な数値を指定する例は下記の通りです。
KPI(顧客数:5,000人)→その下の要素「新規顧客数:3,500人」、「リピート顧客数:1,500人」
このように明確な数値を指定しておくことで、達成できなかった場合の原因究明も容易です。上記を例にすると、顧客数が5,000人に満たなかった場合、下層の新規顧客数とリピート顧客数のどちらが達成していないかを確認します。達成していない方のさらに下層を確認していくことで、根本となる未達の原因にアプローチが可能です。
まとめ
本記事では、KPIツリーの目的やメリット・デメリット、KPIツリーの作成方法まで解説しました。KPIツリーを適切に作成した上で事業を行うことで、効率よくPDCAサイクルを回して事業を進められます。また、現状に応じてKPIツリーを書き換えることで、定期的に現状把握を行い、事業プランを立て直す習慣も身に付くでしょう。
ぜひ本記事を参考にKPIツリーを作成し、事業に役立ててみてはいかがでしょうか。