BtoBマーケティングにおいて、テレマーケティングや商談といった現場で蓄積される顧客データは、単なる営業活動の副産物ではありません。商談の成否やリードの質、顧客の興味関心の傾向など、マーケティング施策を磨き上げるための“生きた情報”の宝庫です。
しかし現実には、営業現場で得られた情報がマーケティング施策に十分に還元されず、部門間の分断が生まれているケースも少なくありません。本来であれば、テレマーケティングで得られた顧客の反応など、営業現場で捕捉した様々な情報を一元的に活用することで、営業戦略全体の改善はもちろん、ターゲティングの精度向上や商談化率の改善につなげることができます。
本記事では、営業現場のデータを起点にBtoBマーケティング施策を改善し、成果を最大化する具体的な手法や事例を解説します。SNS・Webデザインの観点も交え、すぐに実務で試せるポイントを整理していきます。
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目次
現場知見の活用
テレマーケティングの現場では、単なる「アポイント獲得の可否」だけでなく、マーケティング施策に活かせる多様な情報が日々蓄積されています。
例えば、顧客がアポイントを断る理由は何なのか、想定している顧客ニーズと実際はどう異なるのか、決裁者が商談に関心を示した背景は何か、よく導入されている競合製品は何かなどは、非常に貴重なデータです。これらを単発の事象として終わらせるのではなく、体系的に集約・分析することで、マーケティング全体の精度を飛躍的に高められます。
実務的には、アポイント取得時ではコールの録音データや、何かしらアンケートを行った際はWebフォームの回答履歴、商談後であれば営業担当者が入力するCRMやSFAのメモ情報などが一次情報の主要なソースとなります。これらを分類、分析することで、リードの温度感やニーズの深さを可視化しやすくなります。
例えば「情報収集段階」「検討フェーズ」「決裁者接触済み」といったステータスを付与すれば、マーケティング部門は見込み度の高いリードに対して重点的に施策を打つことができますし、似たようなお断り理由が並べば、その理由に対する対策を考えることで施策をブラッシュアップできます。
さらに近年では、SNSやWebデザインとの連携も重要性を増しています。テレマーケティング時や商談時に先方が興味を持った点に着目し、その内容をSNSで重点的に発信することで、SNSからの反応を改善させることができます。また、同じ内容からは、LPやウェブサイトのデザイン改善やコンテンツ設計に直結するインサイトが得られます。営業とマーケ双方がデータを共通言語として扱うことで、次の施策立案がより戦略的に進められるのです。
施策改善事例
実際に営業現場のデータを活用してBtoBマーケティング施策を改善した事例を見てみましょう。
IT企業の事例
SNS広告から流入したリードの初回商談での状況を営業現場で詳細に記録し、「どの広告クリエイティブが商談化につながったのか」を分析しました。
その結果、抽象的なキャッチコピーよりも、導入事例や費用感を明確に示した広告の方が、高い商談化率につながることが判明しました。マーケティング部門は広告クリエイティブとWebランディングページを刷新し、クリック率だけでなく商談化率を大幅に改善することに成功しました。
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製造業向けソリューションを扱う企業の事例
テレマーケティングで得られた「アポイントを断った理由」をデータベース化し、WebサイトのFAQやホワイトペーパーに反映しました。具体策の一例としては、「導入コストが不明で不安」という声が多かったので、料金シミュレーターをWebページに追加し、情報不足による離脱を防ぎました。これにより、リード段階での不安が軽減され、商談化率が20%以上改善したのです。
重要なのは、営業現場の知見を単なる報告に留めず、マーケティング施策にフィードバックする仕組みを整えることです。SNSやWebデザインの改善は感覚的に行われがちですが、営業現場からの具体的な反応データを根拠にすれば、施策のPDCAが格段に回しやすくなります。これが、マーケティングと営業の双方に利益をもたらすデータ活用の本質です。
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データ活用の工夫
営業現場で得られる顧客データは、蓄積するだけでは十分に価値を発揮しません。重要なのは、このデータをどのように施策改善のPDCAサイクルに組み込むかです。
多くの企業では、データは集まっているものの「分析して終わり」になりがちで、次のアクションに直結しないケースが少なくありません。ここで鍵となるのが、営業・マーケ双方が共通の指標と可視化ツールを持ち、改善のループを回せる仕組みです。具体的には、以下のステップです。
ステップ1:営業現場で得られた情報をリアルタイムで共有できるSFAやCRMを構築
顧客の関心テーマ、商談に進んだ理由・進まなかった理由、Webサイト上の行動データなどを可能な限り一元管理することで、マーケティング部門は次のキャンペーン設計のヒントを得ることができます。
例えば、SNS広告からのリードが特定のWebページで離脱していることが分かれば、Webデザインの改善やコンテンツの追加を次のアクションとして明確化できますし、商談時に似たような質問があがるとわかれば、それに応えるコンテンツを目立つように用意するといった対応が可能になります。
ステップ2:Web解析ツール(ヒートマップやセッションリプレイなど)を組み合わせる
営業現場の「顧客の声」とWeb上の行動データをリンクさせることが可能になります。営業が拾った「興味を持ったが不安が残るポイント」をWeb改善に反映し、不安が残るポイントを事前にWeb上で解決しているかを解析ツールで効果測定。すると、PDCAサイクルが格段にスピードアップします。データを“報告のため”に集めるのではなく、“次の改善策を生むため”に活用することが重要です。
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営業・マーケ連携
営業現場の知見をマーケティング戦略に反映させるためには、単に情報を共有するだけでは不十分です。重要なのは、両部門が同じ「目標」と「指標」を共有し、データを根拠に議論できる仕組みを整えることです。
営業が拾った顧客の声や断り理由、SNSでの反応データ、Webサイトの行動ログなどをマーケティング部門がタイムリーに把握できれば、施策の精度は格段に高まります。
例えば、定例のマーケティング会議に営業部門のメンバーが参加し、マーケティング施策が実際の商談にどのように影響を与えているかフィードバックループを回せる仕組みを構築します。
営業が「どのメッセージが刺さったか」「どのWebページで顧客が離脱したか」を具体的に共有することで、マーケティング側は広告クリエイティブやLPの改善に即座に反映できます。これにより、従来は分断されがちだった営業・マーケ間の情報が一気通貫で活用され、PDCAサイクルが高速化します。
さらに最近では、SNSのチャットボットやWeb接客ツールで得られた顧客の質問履歴を営業部門に共有し、次回の商談準備に役立てる取り組みも増えています。これにより、顧客がすでに関心を示しているポイントを踏まえた提案が可能になり、商談の成功率が向上します。営業とマーケがデータを“共通言語”として扱える体制こそが、成果を最大化する鍵なのです。
まとめ
BtoBマーケティングにおいて、営業現場のデータは施策改善の出発点であり、成果を左右する最重要資産です。テレマーケティングや商談で得られる顧客の声や行動データを、SNSやWebデザイン改善の要素と組み合わせて活用することで、リード獲得率や商談化率を大幅に向上させることができます。
本記事で紹介した事例や仕組み化のポイントは、決して大企業だけが実践できるものではありません。例えば、営業現場で得られた断り理由をWebのFAQに反映したり、SNS広告の反応データを営業会議で共有したりといった小さな改善から始めるだけでも、施策の効果は着実に高まります。
重要なのは、営業とマーケが同じデータを共通言語として扱い、PDCAを素早く回す体制を整えることです。営業現場のリアルな情報を起点に、デジタル施策も含めたマーケ施策全体を連動させることで、BtoBマーケティングは次の成長ステージへ進むことができます。