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マーケティングの6Rとは?勘や思い込みに頼らない、客観的な市場選定

2025.8.5
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マーケティングの6Rとは?勘や思い込みに頼らない、客観的な市場選定

マーケティング戦略の成否は市場選定で大きく左右されます。しかし、勘や経験だけに頼った選定は危険です。本記事では、客観的なデータに基づき有望な市場を見極めるフレームワーク「6R」を、各要素から具体的な活用ステップまで徹底解説します。この記事を読めば、自社が狙うべき市場をデータに基づいて判断し、マーケティング施策の成功確率を最大化する方法が分かります。

マーケティングの6Rとは?なぜ今、客観的な市場選定が求められるのか

マーケティングの「6R」とは、市場の魅力を多角的に評価し、自社が参入すべきターゲット市場を客観的に選定するためのフレームワークです。これは、Realistic Scale(有効な市場規模)、Rate of Growth(成長率)、Rival(競合状況)、Rank(優先順位)、Reach(到達可能性)、Response(反応の測定可能性)という6つの「R」から始まる指標で構成されています。

現代のビジネス環境において、なぜこの6Rを用いた客観的な市場選定が、これほどまでに重要視されるのでしょうか。その背景には、市場の成熟化と顧客ニーズの劇的な変化があります。かつてのように画一的な製品を大量生産・大量販売するマスマーケティングが通用した時代は終わりを告げました。消費者の価値観は多様化し、市場は無数の小さなセグメントに細分化されています。このような状況下で、自社の強みを最大限に活かせる、最も収益性の高い市場はどこなのかを見極めることが、企業の持続的な成長に不可欠となったのです。

また、デジタル技術の進化は、データに基づいた意思決定を可能にしました。顧客の行動データや市場のトレンドを詳細に分析できるようになったことで、もはや勘や経験、思い込みだけに頼った市場選定は、大きなリスクを伴う時代遅れの手法と言えます。限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をどこに集中投下すべきか。その戦略的な意思決定の精度こそが、厳しい競争環境を勝ち抜くための鍵を握っているのです。

勘や思い込みに頼らない市場選定の重要性

「この市場は今後伸びそうだ」「若者にはこれが受けるはずだ」といった経営者や担当者の直感は、時にビジネスを大きく飛躍させるきっかけとなり得ます。しかし、その直感が客観的な根拠を欠いた「思い込み」であった場合、結果は悲惨なものになりかねません。

勘や思い込みに依存した市場選定は、以下のような深刻なリスクを内包しています。

  • リソースの浪費:成長が見込めない市場や、競合がひしめく「レッドオーシャン」に貴重なリソースを投下し、疲弊してしまう。
  • 機会損失:データを見れば有望だとわかるニッチな市場や、自社の強みと完全に合致する市場を見逃してしまう。
  • 戦略の迷走:一貫した基準がないため、市場環境の些細な変化や短期的な売上の増減に一喜一憂し、マーケティング戦略がブレてしまう。
  • 社内の不協和音:客観的な根拠がないため、なぜその市場を狙うのかを論理的に説明できず、チームや関係部署の納得感を得られない。

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これらのリスクを回避し、マーケティング活動の成功確率を飛躍的に高めるために、6Rのような客観的なフレームワークが不可欠です。6Rは、市場を評価するための「共通言語」として機能し、データに基づいた論理的な意思決定を促すことで、組織全体の力を正しい方向に導きます。

以下の表は、「勘や思い込みによる選定」と「6Rによる客観的な選定」の違いをまとめたものです。その差は一目瞭然です。

市場選定アプローチの比較
比較項目 勘・思い込みによる選定 6Rによる客観的な選定
選定基準 担当者の経験、直感、成功体験、感覚的な「いけそう」感 市場規模、成長性、競合、優先度、到達可能性、反応測定の6つの客観的指標
意思決定の根拠 主観的・定性的(例:「最近話題だから」) 客観的・定量的(例:「市場規模は〇〇億円で、年率〇%で成長している」)
潜むリスク リソースの浪費、機会損失、戦略のブレ、再現性の欠如 分析に時間がかかる場合があるが、大きな失敗のリスクは低い
期待される成果 偶発的な成功(当たり外れが大きい) 再現性の高い、持続的な成功
組織への影響 属人的で、担当者任せになりがち。社内での合意形成が困難。 組織的な知見として蓄積される。論理的な議論で円滑な合意形成が可能。

このように、6Rは単なる分析ツールにとどまりません。それは、不確実性の高い現代市場を航海するための羅針盤であり、企業のマーケティング活動を成功へと導くための強力な武器なのです。

6Rの基本的な考え方

マーケティングにおける6Rとは、市場の魅力を評価し、自社が参入すべき市場(ターゲット市場)を客観的に選定するためのフレームワークです。市場規模(Realistic Scale)、成長性(Rate of Growth)、競合(Rival)、優先順位(Rank)、到達可能性(Reach)、反応測定(Response)という6つの「R」から始まる指標を用いて、多角的に市場を分析します。これにより、担当者の勘や経験則といった主観的な判断に頼ることなく、データに基づいた戦略的な意思決定を可能にします。6Rは、特に後述するSTP分析のターゲティングにおいて、その真価を発揮する重要な考え方です。

6RとSTP分析

6Rは、マーケティング戦略の全体像を設計する「STP分析」と密接に関連しています。STP分析とは、市場を細分化し(Segmentation)、狙うべき市場を決定し(Targeting)、自社の立ち位置を明確にする(Positioning)という一連のプロセスです。

この中で、6Rは「Targeting(ターゲティング)」の段階で、細分化された各市場セグメントを評価・比較検討するための客観的な物差しとして活用されます。セグメンテーションによって洗い出された複数の市場候補の中から、「どの市場が自社にとって最も魅力的で、成功の可能性が高いのか」を判断する際に、6Rの各指標が具体的な評価基準となるのです。

STP分析のプロセスにおける6Rの役割は、以下の表のように整理できます。

STPの段階 概要 6Rの役割
Segmentation
(セグメンテーション)
市場全体を、顧客のニーズや属性など、共通の特性を持つ小規模なグループ(セグメント)に分類する。 この段階で分類された各セグメントが、次のターゲティングにおける評価対象となる。
Targeting
(ターゲティング)
細分化されたセグメントの中から、自社の強みや経営資源を考慮し、参入すべき最も魅力的な市場を選定する。 各セグメントの魅力度と成功可能性を、6つの指標を用いて客観的に評価し、優先順位を決定するためのフレームワークとして機能する。
Positioning
(ポジショニング)
選定したターゲット市場の顧客に対し、競合製品・サービスとの違いを明確にし、自社独自の価値を認識させる。 6Rの分析(特にRival:競合)で得られた情報を基に、効果的な差別化戦略を立案する土台となる。

このように、6RはSTP分析という大きな戦略プロセスの中で、論理的かつ客観的な市場選定を実現するための、極めて重要な分析ツールなのです。

関連記事:【初心者でも簡単】ターゲット マーケティングの始め方|3ステップで進めるSTP分析を徹底解説

6Rがもたらす戦略的なメリット

6Rをマーケティング戦略に導入することは、企業に多くの戦略的メリットをもたらします。その中でも特に重要な4つのメリットを解説します。

意思決定の客観性と精度の向上

最大のメリットは、市場選定における意思決定の質が飛躍的に向上することです。「この市場は伸びそうだ」といった曖昧な期待や、「過去に成功したから」という経験則だけに頼るのではなく、データに基づいた評価が可能になります。これにより、なぜその市場をターゲットとするのか、論理的な根拠を持って説明できるため、社内での合意形成もスムーズに進みます

経営資源の最適化

企業が持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は有限です。6Rを活用することで、市場規模や成長性、競合状況などを総合的に評価し、最もROI(投資対効果)が高いと判断される市場にリソースを集中させることができます。勝てる見込みの薄い市場への無駄な投資を避け、成功確率の高い領域で最大の成果を追求することが可能になるのです。

事業リスクの低減

新規市場への参入や新商品の投入には、常に失敗のリスクが伴います。6Rは、参入前に市場のポテンシャルと課題を多角的に洗い出すプロセスです。市場の成長性は十分か、強力すぎる競合はいないか、自社の製品やサービスは顧客に届くのか、といった点を事前に厳しくチェックすることで、「参入してみたものの、全く売れない」といった事態を未然に防ぎ、事業リスクを最小限に抑えることができます。

マーケティング戦略全体の一貫性

6Rによってターゲット市場が明確に定義されると、その後の具体的なマーケティング活動(4P:製品・価格・流通・販促)の方向性も定まります。「誰に、どのような価値を提供するのか」という戦略の核がブレなくなるため、製品開発から広告宣伝、販売チャネルの選定に至るまで、一貫性のある施策を展開できるようになります。

関連記事:4Pと3Cの関係性を徹底解説!ビジネス成功のためのフレームワーク

マーケティングの6R 各要素を徹底解説

マーケティングフレームワーク「6R」は、市場を評価するための6つの重要な視点を提供します。これらはそれぞれ独立しているのではなく、相互に関連し合って機能します。ここでは、勘や経験だけに頼らない客観的な市場選定を実現するために、6つの「R」の各要素を一つひとつ掘り下げていきましょう。

Realistic Scale 市場規模の正確な把握

最初の「R」は「Realistic Scale(有効な市場規模)」です。これは、参入を検討している市場に、事業を成立させるだけの十分な大きさがあるかを見極めるための指標です。市場が小さすぎれば十分な利益を確保できず、逆に大きすぎると見えても、自社がアプローチできない層を含んでいる可能性があります。

市場規模を測る際には、単に全体の大きさを見るだけでなく、段階的に絞り込んでいく考え方が重要です。代表的な考え方として、TAM(タム)・SAM(サム)・SOM(ソム)があります。

指標 名称 内容
TAM Total Addressable Market
(獲得可能な最大市場規模)
特定の市場における総需要。自社のサービスや製品が100%のシェアを獲得した場合の売上高。
SAM Serviceable Available Market
(自社がアプローチ可能な市場規模)
TAMのうち、自社のビジネスモデルや販売戦略、地理的条件などで現実にアプローチできる範囲の市場規模。
SOM Serviceable Obtainable Market
(自社が現実的に獲得可能な市場規模)
SAMのうち、競合の存在や自社のリソースを考慮した上で、実際に獲得が見込める市場規模。事業計画の売上目標の根拠となる。

これらの市場規模を調査するには、公的機関が発表する統計データや、民間の調査会社が発行するレポートが役立ちます。例えば、経済産業省が公表している特定サービス産業動態統計調査などは、信頼性の高い情報源の一つです。重要なのは、夢物語の市場規模ではなく、自社が現実的に獲得できるシェア(SOM)まで具体的に落とし込み、事業の採算性を冷静に判断することです。

Rate of Growth 成長性の見極め方

2つ目の「R」は「Rate of Growth(成長率)」です。現在の市場規模だけでなく、その市場が将来的に拡大するのか、それとも縮小に向かうのかという将来性を評価します。いくら市場規模が大きくても、衰退傾向にある市場では価格競争が激化し、利益を確保し続けるのが難しくなります。逆に、現在は小さくても急成長している市場であれば、先行者利益を得られる可能性があります。

市場の成長性を見極めるためには、以下のような多角的な視点が必要です。

  • 過去の市場規模データの推移: 過去数年間の市場規模の推移から、CAGR(年平均成長率)を算出し、成長のトレンドを把握します。
  • 関連技術やトレンドの動向: AI、DX、SDGsといった技術革新や社会全体のトレンドが、市場にどのような影響を与えるかを予測します。
  • 法改正や規制緩和: 法律の変更や新たな規制が、市場の追い風になるか、向かい風になるかを分析します。
  • 市場のライフサイクル: 市場が「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のどの段階にあるかを分析します。成長期であれば参入のチャンスが大きく、成熟期や衰退期であれば新たな付加価値の提供が求められます。

目先の流行に飛びつくのではなく、社会構造や技術革新といったマクロな要因を分析し、その市場が中長期的に持続可能な成長を遂げるかを見極めることが、戦略的な市場選定において不可欠です。

Rival 競合分析と自社の立ち位置

3つ目の「R」は「Rival(競合)」です。市場の魅力は、競合の存在によって大きく左右されます。どのような競合が、どれくらい存在するのか、そしてその競合はどれほど強いのかを徹底的に分析します。

競合分析では、以下の項目を明らかにすることが重要です。

  • 競合の特定: 同じ製品やサービスを提供する「直接競合」だけでなく、顧客の同じ課題を別の方法で解決する「間接競合」や「代替品」も洗い出します。
  • 市場シェアと競合の数: 特定の企業が市場を支配する「寡占市場」なのか、多数のプレイヤーがひしめく「競争市場」なのかを把握します。
  • 競合の強みと弱み: 製品の品質、価格、ブランド力、技術力、販売チャネルなど、競合のビジネスを多角的に分析します。
  • 競合のマーケティング戦略: どのような広告を打ち、どのチャネルで顧客と接点を持っているかを調査します。

これらの分析を通じて、自社の相対的な立ち位置を明確にします。競合が提供できていない価値は何か、自社のどの強みを活かせば競争優位性を築けるのか(KFS:Key Factor for Success)を定義します。競合を単に脅威と捉えるのではなく、市場の構造を理解し、自社が輝ける独自のポジションを見つけ出すための重要なプロセスと捉えましょう。

関連記事:KBF(重要購買決定要因)とは!KSFとの関係もあわせて解説!

Rank 優先順位付けの基準

4つ目の「R」は「Rank(優先順位)」です。ここまでの分析で、複数の有望な市場セグメントが見つかることがよくあります。しかし、企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は有限です。そのため、すべての市場を同時に狙うのではなく、どの市場から優先的にアプローチすべきかを決定する必要があります。

優先順位付けは、客観的な基準に基づいて行うべきです。例えば、以下のような評価項目を設定し、各市場セグメントをスコアリングする方法が有効です。

評価項目 重み付け セグメントA評価 セグメントB評価 セグメントC評価
市場規模 (Realistic Scale) 30% 5点 3点 4点
成長性 (Rate of Growth) 30% 4点 5点 2点
競合優位性 (Rival) 20% 3点 2点 5点
自社戦略との整合性 20% 5点 4点 3点
合計スコア 100% 4.3点 3.6点 3.5点

上記の表は一例ですが、このように評価項目と重み付けを事前に定義することで、感覚的な判断を避け、論理的な意思決定が可能になります。重要なのは、自社のビジョンや経営戦略と照らし合わせ、なぜその市場を優先するのかという明確な根拠を持って意思決定を行うことです。これにより、社内のコンセンサス形成もスムーズに進みます。

関連記事:ABC分析とは?メリット、手順、活用シーン、注意点まで徹底解説

Reach 顧客への到達可能性

5つ目の「R」は「Reach(到達可能性)」です。どんなに魅力的で、優先順位が高い市場であっても、その市場にいるターゲット顧客に自社の製品や情報を届けられなければ、絵に描いた餅に終わってしまいます。

到達可能性は、物理的な側面と情報的な側面の両方から検討する必要があります。

  • 物理的な到達可能性:
    • 販売チャネル: ターゲット顧客が利用する店舗、ECサイト、代理店などの販売網を確保できるか。
    • 物流: 製品を効率的かつ確実に顧客の手元に届けられる物流網は存在するか。
    • 営業体制: ターゲットエリアをカバーできる営業担当者を配置できるか。
  • 情報的な到達可能性:
    • マーケティングチャネル: ターゲット顧客が頻繁に接触するメディア(SNS、Webメディア、テレビ、雑誌など)を通じて、効果的にメッセージを伝えられるか。
    • ブランド認知度: そもそも自社のブランドや製品が、その市場で認知されているか。

自社の既存の販売網やマーケティング能力、営業リソースで、費用対効果高くアプローチできるかという現実的な視点が極めて重要です。必要であれば、新たなチャネル開拓やパートナーシップも視野に入れて戦略を練る必要があります。

Response 反応測定と効果検証

最後の「R」は「Response(反応測定)」です。これは、実際に市場にアプローチした結果、どのような反応が得られたかを測定・分析し、戦略を改善していくための評価軸です。市場選定は一度決めたら終わりではなく、仮説検証を繰り返す継続的なプロセスです。

計画(6Rによる市場選定)を実行に移した後は、必ずその結果を評価しなければなりません。そのために、事前に測定可能な重要業績評価指標(KPI)を設定しておくことが不可欠です。

KPIの例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • Webサイト: クリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR)、顧客獲得単価(CPA
  • 営業活動: リード獲得数、商談化率、受注率
  • 製品・サービス: 顧客満足度、リピート購入率、解約率(チャーンレート)

これらのデータを、アクセス解析ツールやCRM/SFAツール、アンケート調査などを活用して定期的に収集・分析します。そして、当初の仮説と実際の結果との間にギャップがあれば、その原因を突き止め、戦略を修正していきます。「やりっぱなし」にせず、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回す仕組みを構築し、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応していくことが、持続的な成功の鍵を握ります。

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6Rを活用した市場選定の具体的なステップ

6Rの各要素を理解したところで、次はその知識を実践に移す方法を見ていきましょう。ここでは、6Rフレームワークを用いて、勘や経験則だけに頼らない客観的な市場選定を行うための具体的な3つのステップを解説します。このプロセスを踏むことで、自社のリソースを最も効果的に投下できる市場を見極めることが可能になります。

ステップ1 市場全体のセグメンテーション

市場選定の第一歩は、巨大で不均一な市場全体を、同じようなニーズや性質を持つ小規模な顧客グループ(セグメント)に分割することから始まります。これを市場セグメンテーション(市場細分化)と呼びます。市場を細分化することで、各グループの特性を深く理解し、より的確なアプローチを検討できるようになります。

セグメンテーションには、主に以下の4つの変数が用いられます。これらを単独で使うのではなく、複数組み合わせることで、より具体的でリアルな顧客像を描き出すことが重要です。

  • 地理的変数(ジオグラフィック)
    国、地域、都市の規模、人口密度、気候といった地理的な要素で市場を分割します。例えば、「首都圏在住」「西日本エリア」「人口50万人以上の都市」といった切り口です。
  • 人口動態変数(デモグラフィック)
    年齢、性別、所得、職業、学歴、家族構成など、客観的なデータで測定しやすい要素です。「20代・女性・未婚」「年収800万円以上・4人家族の世帯主」のように、ターゲット像を明確化する際に基本となります。
  • 心理的変数(サイコグラフィック)
    ライフスタイル、価値観、性格、興味・関心、購買動機といった個人の内面的な要素で分割します。「環境問題への意識が高い層」「健康志向でオーガニック製品を好む層」「ステータスやブランドを重視する層」などが該当します。
  • 行動変数(ビヘイビアル)
    製品・サービスに対する顧客の知識、態度、使用状況、反応といった行動パターンに基づきます。「週に3回以上利用するヘビーユーザー」「新製品をいち早く試すイノベーター層」「価格の安さを最優先する層」など、購買行動に直結する分類です。

関連記事:セグメンテーションとは?ターゲティングとの違いや分類する方法、具体例

ステップ2 各セグメントの6R評価と優先順位付け

セグメンテーションによって市場を細分化したら、次はその一つひとつのセグメントを「6R」の視点から客観的に評価します。この評価を通じて、自社にとってどのセグメントが最も魅力的で、参入すべき価値があるのかを判断し、優先順位を付けていきます。

評価を客観的に行うために、各項目を5段階でスコアリングするなど、定量的な基準を設けることをお勧めします。以下の表は、各Rの評価視点と具体的な評価方法の例です。

6R評価シートの例
6Rの要素 評価の視点 具体的な評価方法・指標の例
Realistic Scale
(市場規模)
事業として成立するだけの十分な顧客数や売上が見込めるか?
  • 政府統計(例: 経済産業省の各種統計調査)
  • 業界団体のレポート、民間調査会社の市場データ
  • 潜在顧客数 × 想定購入単価 × 購入頻度
Rate of Growth
(成長性)
その市場は今後拡大していくか、あるいは縮小していくか?
  • 過去数年間の市場規模の推移データ
  • 関連技術や法改正、社会トレンド(例: DX化、SDGs)
  • 将来の市場予測レポート
Rival
(競合)
競合はどれくらい強いか?自社が優位性を築ける余地はあるか?
  • 競合企業の数、市場シェア、財務状況
  • 競合製品・サービスの機能、価格、品質の比較分析
  • 顧客による競合の評価(レビュー、口コミ)
Rank
(優先順位)
自社のビジョンや強みと、その市場のニーズは合致しているか?
  • 自社の経営理念やブランドイメージとの整合性
  • 自社の技術、ノウハウ、人材、資金などの経営資源
  • 既存事業とのシナジー効果(相乗効果)
Reach
(到達可能性)
そのセグメントの顧客に、製品・サービスや情報を届けることができるか?
  • 効果的な広告媒体(Web、SNS、雑誌など)の有無
  • 利用可能な販売チャネル(店舗、ECサイト、代理店)
  • 物理的な距離や物流コスト
Response
(反応測定)
マーケティング施策の効果を測定し、改善につなげられるか?
  • Web広告のクリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)の計測可否
  • 顧客アンケートやインタビューの実施可能性
  • テストマーケティングが行える環境か

ステップ3 ターゲット市場の決定とマーケティング戦略立案

6Rによる評価と優先順位付けが完了したら、いよいよ参入すべきターゲット市場を最終決定します。そして、その市場で成功するための具体的なマーケティング戦略を立案するフェーズに移ります。誰に(Targeting)、どのような価値を(Positioning)、どのようにして届けるのか(マーケティングミックス=4P)を明確にすることが、このステップのゴールです。

まず、評価結果に基づいて、以下のいずれかのターゲティング手法を選択します。

  • 集中型マーケティング
    最も評価の高かった特定のセグメント一つに経営資源を集中させるアプローチ。特にリソースが限られる中小企業やスタートアップに適した戦略です(ニッチ戦略)。
  • 差別型マーケティング
    魅力的なセグメントを複数選び、それぞれのニーズに合わせて異なる製品やマーケティング手法を展開するアプローチ。幅広い顧客層を獲得できますが、コストは高くなります。
  • 無差別型マーケティング
    セグメント間の違いをあえて無視し、市場全体に単一の製品・サービスでアプローチする方法。日用品など、多くの人に共通して需要があるマス製品で採用されます。

ターゲット市場を決定したら、次にその市場における自社の「ポジショニング」を定義します。これは、「競合他社と比べて、顧客の心の中でどのような独自の立ち位置を築くか」を決めることです。「高品質」「低価格」「革新的なデザイン」など、顧客に選ばれる明確な理由を打ち出します。

最後に、決定したポジショニングを実現するための具体的な戦術として、マーケティングミックス(4P)を策定します。6Rで選んだ市場の特性に合わせて、4つのPを一貫性のある形で組み合わせることが成功の鍵となります。

  • 製品(Product): ターゲットの課題を解決する機能、デザイン、品質は何か。
  • 価格(Price): ターゲットが納得し、かつ自社に利益がもたらされる価格はいくらか。
  • 流通(Place): ターゲットが購入しやすい場所や方法は何か(店舗、ECサイトなど)。
  • 販促(Promotion): ターゲットに製品の価値を伝えるための最適な広告や広報活動は何か。

このように、6Rは単なる市場分析ツールにとどまらず、その後の具体的な戦略・戦術立案までを見据えた、一貫性のあるマーケティング活動の羅針盤となるのです。

関連記事:4Pとは?マーケティングミックスとも呼ばれる戦略を解説

6Rを最大限に活かすための実践的ポイント

6R分析は、それ単体で完結するものではありません。他のフレームワークと組み合わせ、市場の変化に合わせて継続的に見直すことで、その真価を発揮します。ここでは、6R分析を企業の持続的な成長エンジンに変えるための、より実践的なポイントを解説します。

他のマーケティングフレームワークとの連携

6Rは市場の「魅力度」を客観的に評価するための強力なツールですが、具体的な戦略立案までをすべてカバーするわけではありません。他のマーケティングフレームワークと連携させることで、分析の精度を高め、より実効性のある戦略へと昇華させることができます。

特に親和性の高いフレームワークとの連携方法を以下に示します。

フレームワーク名 概要 6Rとの連携ポイント
STP分析 市場を細分化(Segmentation)し、狙うべき市場を決定(Targeting)し、自社の立ち位置を明確化(Positioning)する手法。 6Rは、まさしくSTP分析におけるターゲティング(Targeting)の精度を飛躍的に高めます。セグメンテーションで細分化した各市場を6Rの指標で評価し、最も魅力的なセグメントを客観的根拠に基づいて選定できます。
3C分析 顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から市場環境を分析する手法。 3C分析で得られた情報は、6Rの各要素の評価に直接活用できます。例えば、顧客分析は「市場規模(Realistic Scale)」や「成長性(Rate of Growth)」の評価に、競合分析は「競合(Rival)」の評価に直結します。
PEST分析 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)というマクロ環境の変化が、自社に与える影響を分析する手法。 PEST分析は、特に6Rの「成長性(Rate of Growth)」を中長期的な視点で予測する際に不可欠です。法改正や技術革新、ライフスタイルの変化といった外部要因が、市場の将来性にどう影響するかを把握できます。
SWOT分析 自社の内部環境である強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)と、外部環境である機会(Opportunities)・脅威(Threats)を分析する手法。 6Rでターゲット市場を選定した後、その市場における自社のSWOTを分析します。これにより、選定した市場で自社の強みをどう活かし(機会)、弱みをどう克服するか(脅威への対策)という具体的な戦い方を策定できます。

このように、複数のフレームワークを組み合わせることで、多角的な視点から市場を捉え、戦略の解像度を格段に向上させることが可能です。

市場環境の変化に対応する6Rの定期的な見直し

一度6R分析を行ってターゲット市場を決定しても、それで終わりではありません。市場は常に変化し続ける「生き物」です。顧客のニーズ、競合の動向、技術の進化など、市場環境は刻一刻と変わっていきます。そのため、分析結果を定期的に見直し、常に最新の状態にアップデートし続けることが、競争優位性を維持する上で極めて重要です。

データ収集と再評価

見直しを行う際は、まず最新のデータを収集することから始めます。政府統計(e-Statなど)、業界団体のレポート、市場調査会社のデータ、自社の販売実績、顧客アンケート、SNS上の口コミ、競合の新製品情報やプレスリリースなど、信頼できる情報源から定量・定性の両面でデータを集めましょう。そして、その最新データに基づいて、改めて6Rの各項目(市場規模、成長性、競合、優先順位、到達可能性、反応測定)を再評価します。

優先順位(Rank)の再検討

市場環境の変化によって、以前は魅力的だった市場の成長が鈍化したり、逆にノーマークだった市場が急成長したりすることがあります。再評価の結果、各セグメントの魅力度が変化している可能性があるため、優先順位(Rank)を再検討する必要があります。場合によっては、ターゲット市場そのものを見直す、あるいは撤退するという大胆な意思決定も必要になるでしょう。

戦略の修正と実行

6Rの再評価と優先順位の再検討が完了したら、それに基づいて既存のマーケティング戦略(製品、価格、流通、プロモーションなど)を修正します。例えば、競合の値下げ攻勢が激化しているなら価格戦略の見直しが、新しい顧客層へのアプローチが必要ならプロモーション戦略の変更が求められます。6Rの見直しは、単なる分析作業ではなく、具体的なアクションに繋げるためのPDCAサイクルの一環と捉え、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)を回し続けることが成功の鍵です。

まとめ

マーケティングの6Rは、勘や経験だけに頼らず、客観的なデータに基づいて市場を選定するための強力なフレームワークです。市場規模、成長性、競合、優先順位、到達可能性、反応測定という6つの視点から多角的に分析することで、事業の成功確率を高めます。変化の激しい市場において、限られたリソースを最も有望な市場へ集中投下するために、6Rの活用は不可欠と言えるでしょう。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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